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第四十一話 招かれざる客
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――翌日。
今日は日曜日。最近働き尽くめだったので、今日はゆっくりと家でのんびり過ごしていようと思った矢先、まだ午前八時だというのに、滅多に鳴らないインターホンが鳴った。
ご近所さんが何かしらの用事で来たのかなと思いつつ扉を開けると……。
「突然の訪問すみません。あなたは同本日六様で間違いないなかったでしょうか?」
そんなことを口にする黒スーツの女性が目の前に現れた。
以前会った暮内さんとはまた違った人だ。
「は、はい。同本日六ですけど……あなたは?」
「失礼致しました。わたくしは――『異種事案対策理事会・人事部』の灯廻静音《ひまわりしずね》と申します」
「はぁ……」
やっぱり『理事会』の奴だった。
名刺も渡されたので、一応受け取る。
「それで、その『理事会』さんの人が何でウチに?」
「この度は、あなた様――同本日六様をスカウトさせて頂きに参りました」
「…………………………はい?」
おっと、一瞬思考が止まってたぜ。てか待て待て、スカウトだって!? 何でいきなり!? しかも俺を!?
するとその時、昨日イズミさんに言われたことを思い出す。
『ただすこ~し面倒なことになるかもねぇ。特に……ヒロくんは』
確かそう言っていた気がする……。
アレはこういう面倒ごとを予見してのことだったのか……。
つまりスカウトってことは、俺を『妖祓い』にしたいってこと?
てか『理事会』に所属してる連中って、全員が『妖祓い』なのか?
そう考えると、いろいろ話題には出るものの、『理事会』についてあまりよく分かっていないことを理解する。
ただどっちみち、よく知りもしない組織の一員になるつもりなんて毛頭ない。
「えと……ありがたい話ですが、お断りさせてください」
「いいえ、是非ともお受け頂きたいのです」
……えぇ……。
そこで『いいえ』ってくる普通。どんだけ必死なんだよ。
誰かに求められるのはありがたいが、あの夜の件もあって、正直良い印象を『理事会』には持ってない。
「あの、俺学生ですし、今は勉学に集中したいなぁって思ってるんですけどぉ」
「問題ございません。学生で『理事会』直属の『妖祓い』は数は少ないですが存在しています。あなた様のご友人である秋津ソラネ様もまた、学生の身分で立派に『妖祓い』を務められております」
なるほど。俺の周囲はすでにある程度調べているということか。
「それにあなたは同本の血を引きながらも、それほどの力を宿した男性です。必ずやこの業界で名を残す偉人となられるでしょう」
ん? 同本の血を引きながら……も?
彼女の言い方に何か違和感を覚えた……が、
「い、いえ、偉人とか別に興味ないんで」
「では今すぐ持って頂きたい」
うわぁ……グイグイくるなこの人。ほとんど強制だよこれじゃ。
「とにかく俺は普通の暮らしをするって決めてるんで! 『妖祓い』の仕事を否定するわけじゃないですけど、俺にはそういうの間に合ってますから!」
むしろ異世界でやり過ぎて飽きてるまであるかもしれない。
あの世界じゃ、常に死と隣り合わせだったし、リリーなんかよりも凶悪で凶暴な連中と何度も死闘を繰り広げてきた。ハッキリいってもう勘弁してほしい。
「できる限り雇用契約は、あなた様の意見を反映させてもらいます。給料もさすがにAクラス以上の待遇は難しいですが、Bクラス程度ならば融通が利くはずですから」
B級といえば、ソラネが喉から手が出るほど欲しいクラスじゃなかったっけ? そんなことになったら、俺ソラネに恨まれんじゃね?
何せ所属していきなりB級の扱いを受けるなんて、ソラネじゃなくてもこの業界で生きている連中だって納得できないだろう。
「ほ、本当にありがたい話なんですけど、お断りしますって!」
「あなたほどの霊能力者は貴重であり、この国の財産に成り得ます。ですから――」
「――さよなら!」
話の途中で扉を閉めてやった。
朝っぱらから長々とご高説聞いていられるテンションじゃねえんだよ。
ていうか俺の話を聞けっつうの。自分勝手に話を進めやがって。
――ピンポーン。
くそ、まだ諦めていやがらねえ。
――ピンポーン。
何でそんなに必死なんだよ。新聞の勧誘でも、そんなにしつこくねえぞ。もしかして怪しい宗教なの? ツボとか絵とか売っちゃうの?
そんな適当なことを考えていると、インターホンが続けて鳴らなくなった。
……おや、諦めたか?
――ピンポーン。
復活しちゃったよ。つかもう諦めてくれよな。警察……呼ぶのも面倒だわぁ。
呼んだら呼んだで、下手に目立つし迷惑だし……。
――ピンポーン。
ああもう鬱陶しいから。デコピンで吹き飛ばしてやりたい……!
――ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
「…………」
――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン。
「…………っ」
――ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポ。
「だぁぁぁっ、やっかましいわっ! つか連打すんじゃねえよこのボケナスビがぁっ!」
さすがに我慢できずに扉を勢い開けて怒鳴りつけてやった……が、
「へぇ、あんたぁ……この私相手に怒鳴るなんて、良い度胸してんじゃないのよぉ」
「…………ふぇ?」
目の前に立っていた人物は、すでに黒衣の女じゃなく、そこに立っていたのは――。
「覚悟できてんでしょうね、日六ぅ?」
――我がお姉たま、同本五那だった。
今日は日曜日。最近働き尽くめだったので、今日はゆっくりと家でのんびり過ごしていようと思った矢先、まだ午前八時だというのに、滅多に鳴らないインターホンが鳴った。
ご近所さんが何かしらの用事で来たのかなと思いつつ扉を開けると……。
「突然の訪問すみません。あなたは同本日六様で間違いないなかったでしょうか?」
そんなことを口にする黒スーツの女性が目の前に現れた。
以前会った暮内さんとはまた違った人だ。
「は、はい。同本日六ですけど……あなたは?」
「失礼致しました。わたくしは――『異種事案対策理事会・人事部』の灯廻静音《ひまわりしずね》と申します」
「はぁ……」
やっぱり『理事会』の奴だった。
名刺も渡されたので、一応受け取る。
「それで、その『理事会』さんの人が何でウチに?」
「この度は、あなた様――同本日六様をスカウトさせて頂きに参りました」
「…………………………はい?」
おっと、一瞬思考が止まってたぜ。てか待て待て、スカウトだって!? 何でいきなり!? しかも俺を!?
するとその時、昨日イズミさんに言われたことを思い出す。
『ただすこ~し面倒なことになるかもねぇ。特に……ヒロくんは』
確かそう言っていた気がする……。
アレはこういう面倒ごとを予見してのことだったのか……。
つまりスカウトってことは、俺を『妖祓い』にしたいってこと?
てか『理事会』に所属してる連中って、全員が『妖祓い』なのか?
そう考えると、いろいろ話題には出るものの、『理事会』についてあまりよく分かっていないことを理解する。
ただどっちみち、よく知りもしない組織の一員になるつもりなんて毛頭ない。
「えと……ありがたい話ですが、お断りさせてください」
「いいえ、是非ともお受け頂きたいのです」
……えぇ……。
そこで『いいえ』ってくる普通。どんだけ必死なんだよ。
誰かに求められるのはありがたいが、あの夜の件もあって、正直良い印象を『理事会』には持ってない。
「あの、俺学生ですし、今は勉学に集中したいなぁって思ってるんですけどぉ」
「問題ございません。学生で『理事会』直属の『妖祓い』は数は少ないですが存在しています。あなた様のご友人である秋津ソラネ様もまた、学生の身分で立派に『妖祓い』を務められております」
なるほど。俺の周囲はすでにある程度調べているということか。
「それにあなたは同本の血を引きながらも、それほどの力を宿した男性です。必ずやこの業界で名を残す偉人となられるでしょう」
ん? 同本の血を引きながら……も?
彼女の言い方に何か違和感を覚えた……が、
「い、いえ、偉人とか別に興味ないんで」
「では今すぐ持って頂きたい」
うわぁ……グイグイくるなこの人。ほとんど強制だよこれじゃ。
「とにかく俺は普通の暮らしをするって決めてるんで! 『妖祓い』の仕事を否定するわけじゃないですけど、俺にはそういうの間に合ってますから!」
むしろ異世界でやり過ぎて飽きてるまであるかもしれない。
あの世界じゃ、常に死と隣り合わせだったし、リリーなんかよりも凶悪で凶暴な連中と何度も死闘を繰り広げてきた。ハッキリいってもう勘弁してほしい。
「できる限り雇用契約は、あなた様の意見を反映させてもらいます。給料もさすがにAクラス以上の待遇は難しいですが、Bクラス程度ならば融通が利くはずですから」
B級といえば、ソラネが喉から手が出るほど欲しいクラスじゃなかったっけ? そんなことになったら、俺ソラネに恨まれんじゃね?
何せ所属していきなりB級の扱いを受けるなんて、ソラネじゃなくてもこの業界で生きている連中だって納得できないだろう。
「ほ、本当にありがたい話なんですけど、お断りしますって!」
「あなたほどの霊能力者は貴重であり、この国の財産に成り得ます。ですから――」
「――さよなら!」
話の途中で扉を閉めてやった。
朝っぱらから長々とご高説聞いていられるテンションじゃねえんだよ。
ていうか俺の話を聞けっつうの。自分勝手に話を進めやがって。
――ピンポーン。
くそ、まだ諦めていやがらねえ。
――ピンポーン。
何でそんなに必死なんだよ。新聞の勧誘でも、そんなにしつこくねえぞ。もしかして怪しい宗教なの? ツボとか絵とか売っちゃうの?
そんな適当なことを考えていると、インターホンが続けて鳴らなくなった。
……おや、諦めたか?
――ピンポーン。
復活しちゃったよ。つかもう諦めてくれよな。警察……呼ぶのも面倒だわぁ。
呼んだら呼んだで、下手に目立つし迷惑だし……。
――ピンポーン。
ああもう鬱陶しいから。デコピンで吹き飛ばしてやりたい……!
――ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
「…………」
――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン。
「…………っ」
――ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポ。
「だぁぁぁっ、やっかましいわっ! つか連打すんじゃねえよこのボケナスビがぁっ!」
さすがに我慢できずに扉を勢い開けて怒鳴りつけてやった……が、
「へぇ、あんたぁ……この私相手に怒鳴るなんて、良い度胸してんじゃないのよぉ」
「…………ふぇ?」
目の前に立っていた人物は、すでに黒衣の女じゃなく、そこに立っていたのは――。
「覚悟できてんでしょうね、日六ぅ?」
――我がお姉たま、同本五那だった。
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