パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~

一条おかゆ

文字の大きさ
8 / 45

8話 もはやマイナスからのスタート

しおりを挟む
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
「ありがとう、ございますぅ……うわああああぁぁぁっん!」

 傷だらけで縛られていた男女。
 彼等を解放し、《ヒール》をかけると、ものすごく感謝された。

 男性のほうは、もげるんじゃなかってくらい頭を下げ、
 女性のほうは、ベガの胸元で泣きじゃくっている。

 聞くところによると、この二人は帝国貴族だそうだ。
 その家名には、僕も聞き覚えがある。

 そんな冒険中の二人を奇襲し、捕獲。家に身代金を要求……。
 というのが、そこで縛られている五人組の魂胆だったらしい。

「チッ、中衛二人組に負けるとは……」
「おい、隙を見て逃げ出すぞ」
「馬鹿、聞こえるだろうが。静かにしとけ」
「覚えてとけよ。仲間に伝えて、絶対に復讐してやる……」

 ベガと僕の活躍で、その計画もご破算となった。
 いやぁ、本当に良かった。



 助けた二人を加えた、僕達四人は捕縛した五人組を連れてダンジョンを出た。
 一度だけ、あのファイターが縄を抜けようと試みていたが、ベガの「いいの? 素っ裸で置いていくけど?」という一言で諦めた。
 それ以外に大した問題もなく、彼等の身柄は帝国騎士団に渡された。

 助けた二人とも別れ、今日の仕事は完了。
 僕とベガは、夜の帝都を並んで歩いていた。

「なんだか、人生で一番濃厚な一日だった気がするよ……」

 昨日も、かなり衝撃的な一日だったけど、今日のほうが濃かったかな。
 家から追放され、ベガに拾われ……初めて人を斬った……。

 ランベルク侯爵家は名門貴族だ。
 名門の例に漏れず、軍の将軍や帝国騎士団も、数多く輩出している。
 もしもの時のため、僕としても、それなりの覚悟はあったつもりなんだけど……。

 戦闘の興奮が抜けたせいか、手が震えている。

 と、そこへ。
 ぽつ、ぽつ……。
 小雨が降り出した。

 ベガは手にしている傘を開き、差した。
 僕とベガ、二人の上へ。
 相合傘だ。

「イオ、なんとなく分かった? 私がクランを立ち上げて、何をしようとしているか?」
「帝国騎士団の目の届かない場所──ダンジョンで悪さをする人の退治……かな?」
「正解、さすが主席卒業。ご褒美のハグは?」
「い、いいよ別にっ」
「あら残念」

 肩を竦め、ベガは話を続ける。

「ま、説明不足のまま、あぁして生身の人間と戦わせたわけだけど……どう? やっていけそう?」
「う、うん。"元"とは言え、僕だってランベルクの男なんだ。これくらいでビビッてちゃ、姉上に笑われちゃうよ。それに、ベガのやろうとしてることは立派だと思う」

 ダンジョンはモンスターの巣窟だ。
 帝国騎士団でさえ、おいそれとは行けない。
 というより、人的な損害を気にして、ほとんど"行かない"。

 だから、無法地帯なのだ。

 そこにベガは、秩序をもたらそうとしている。
 もちろん、難しいことだと思うし、危険な行為だと思う。
 だけど、立派な目的であることは間違いない。

 ベガは嬉しげに微笑した。

「なら良かった。一番の懸念は、イオが嫌がってしまうことだからね」
「でも……本当に僕なんかで良かったの、誘う相手?」
「イオ"なんか"じゃなくて、イオ"が"良かったんだよ。前にも言っただろ?」

 彼女は指先で、くるん、と僕の髪をいじると、語り始めた。

「片手剣の武技だけでなく、下級までの攻撃魔術も修め、しかもほぼ全ての属性ときた。さらにさらに、支援魔術も卒なく行使し、生活魔術に関しては最高クラス。この時点で中衛としての能力は……」
「ま、待って! 分かった、分かったから!」

 は、恥ずかしい……っ!
 そんなに一気に褒めないでよっ!

「んーっ? 赤くなっちゃって、可愛いなぁ」
「か、可愛くなんてないからっ! いじらないでよっ!」
「あはは、ごめんごめん。でも、一番心を惹かれたのは……知識量と判断能力かな」

 知識量には自信があるし、判断能力もあるほうだとは思うけど……。

「人間を相手にするなら、武技と魔術に関しての膨大な知識が無いと、初見殺しでジエンドまっしぐらだからね。だけど、イオにはそれが十分ある。いや、十分すぎると言っていい。
 そこに、判断能力からくる対処能力と機転が相まって──対人のエキスパートになってるんだよ」

 僕が、対人のエキスパート……?
 信じられないけど、ベガの説明を聞く限りでは信じられる。

 人を倒すのに、ドラゴンを殺せる大剣は要らない。
 人を倒すのに、グリフォンを堕とせる大魔術は要らない。
 人を倒すのに、英雄的な勇敢さも、聖女のような慈愛も要らない。

 ただ、片手用の剣と短い杖があればいい。

 大事なのは、知識量と判断能力。
 他の全てがなくとも、僕にはそれが備わっている──

「これで分かったよね、私がイオを誘った理由。あと、最後に一つ聞いていい?」
「う、うん、いいけど」
「これからの目的は?」
「目的?」
「あぁ。人間、夢や目標が無いと全力で走れないだろ? だから聞いたんだよ」

 夢、目標か……。
 正直、聞かれる前から決まっていたかもしれない。
 あれ以外に考えらないな。

 パーティーを追放され、婚約者を寝取られ、家を勘当された僕は、

「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる。……なんて、夢物語かも知れないけど」
「いいや、イオなら成し遂げられるさ」

 ……ありがとう、ベガ。
 僕、夢に向かって走ってみるよ。
 みんなを、見返してやる!

 ぴょん。
 と、僕は水たまりを跳び越えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

処理中です...