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第五章 ショコラを作る手、甘味店《ショコラトリエ・アルセリア》、開店!
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団長室での“真琴と団長の遭遇事故”から翌朝。私はまだ布団の中で悶えていた。
(団長は余計なことを……ああああああ……ッ!)
団長の言葉が脳内でリピートされる。
『副団長は、毎日真琴殿のことを嬉しそうに語っている』
『真琴殿。副団長は、君の話になるとこうして取り乱す。この姿を見てわかるだろう?』
(あんなふうに真琴に暴露されて、私は死んだ方がマシなのでは……?)
そんな状態で出勤した私を、団員たちが妙な目で見ていた。
朝礼。団長が、いつものように落ち着いた声で言った。
「今日の議題は三つ。一つ目は南地区の魔獣対策。二つ目、城門の補修計画。三つ目――」
団員全員がメモを構える。
(よし、いつもの仕事だ……)
団長は、なぜかにっこり微笑んだ。
「“副団長リオン殿の恋愛情勢”だ」
「団長おおおおおお!」
私の絶叫に、広間が爆発した。
「やっぱり恋してたんですか副団長!」
「お相手は、やはりショコラトリエの――」
「最近、やたら甘い匂いがすると思ってたんだよ」
「任務帰りの顔が、妙にやわらかい理由がそれか!」
「やめろ! 全員黙れ! 団長も!」
団長は咳払いして続ける。
「なお、第三議題は王国公式ではない。しかし“団として士気に関わる事案”と私が判断した」
(――そんなの、余計な判断すぎる!)
団長が意味深な面持ちで、私を見ながら続けた。
「ではまず、真琴殿との交際状況を――」
「交際していない!」
実際のところ相思相愛で付き合っているのだが、この場でそれを披露するのはどう考えても愚策だ。
「では“交際前だが副団長の方は本気”という理解でいいね」
「違うとは……言えないが……違う……いや違わないが……」
団員たちがどよめく。
「ほら見ろ!」
「副団長がしどろもどろになるなんて、初めてだ!」
「真琴殿の前かよ~~~!」
顔が熱で焼ける私を見て団長は楽しそうに指を組み、わざとらしく言う。
「副団長。君は“真琴殿の話をするときだけ語彙が変になる”と評判だが?」
「団長……それ以上は!」
「ちなみに昨日、真琴殿は君に怒っていないと言っていたじゃないか」
(恥をかくくらいなら、いくらでも私が引き受ける。真琴が笑ってくれるなら、騎士の威厳など安いものだ)
そんなことを考えながら、胸の奥が熱くなる。しかも団長は、その様子を逃さない。
「ほう、顔が赤いね。これが“恋に落ちた最強騎士”か」
「団長! やめ……」
この場にいる団員たちは、もう大騒ぎする。
「副団長が照れた!」
「こんな希少な場面、生きてるうちに見れるなんて……」
「拝んどこ……」
「ありがとうございます団長!」
(あぁ……帰りたい)
がっくりと項垂れる私を無視して、団長は締めくくった。
「では本件、今後も定期的に進捗報告を求める。副団長が正式に真琴殿と交際を開始した際は――」
団員たちの視線が一点に集中する。
「――王国騎士団として、盛大に祝賀会を開こう」
「開くなあああああああ!」
団員たちは歓声をあげた。
「副団長と真琴殿のためなら、いくらでも金を出す!」
「団の名誉だ!」
「主役席は真琴殿と隣同士で!」
「いやもう結婚式か!」
そこに、団長が追い打ちをかける。
「真琴殿は、実に良い子だったよ。君のどこが好きなのか、今度本人に聞いておこう」
「ま、待ってください。それ、絶対に聞かないでくださいっ!」
「ふむ。“聞かれたら困る答え”なのかな?」
「団長おおおおおおお!」
今日、私は何度叫ぶのだろう。
終礼後、私は机に突っ伏した。
(――ああ、もう……だめだ)
力が抜けきり、背中を丸める私に団員がそっと声をかける。
「副団長……落ち込んでます?」
「私はもう終わりだ……」
「その……真琴殿、今日も来ると思いますよ?」
「は?」
顔が一瞬で熱くなる。
(真琴が……来る……のか?)
慌てて顔を上げた私に、団員は苦笑する。
「副団長。恋は羞恥に耐えた者が勝つんです」
「黙れ」
「でも、本当に幸せそうですよ」
私は返せなかった。幸せなのは、否定できなかったから。いつからだ。こんなふうに“幸せ”を基準にしてしまったのは。
団長室での“真琴と団長の遭遇事故”から翌朝。私はまだ布団の中で悶えていた。
(団長は余計なことを……ああああああ……ッ!)
団長の言葉が脳内でリピートされる。
『副団長は、毎日真琴殿のことを嬉しそうに語っている』
『真琴殿。副団長は、君の話になるとこうして取り乱す。この姿を見てわかるだろう?』
(あんなふうに真琴に暴露されて、私は死んだ方がマシなのでは……?)
そんな状態で出勤した私を、団員たちが妙な目で見ていた。
朝礼。団長が、いつものように落ち着いた声で言った。
「今日の議題は三つ。一つ目は南地区の魔獣対策。二つ目、城門の補修計画。三つ目――」
団員全員がメモを構える。
(よし、いつもの仕事だ……)
団長は、なぜかにっこり微笑んだ。
「“副団長リオン殿の恋愛情勢”だ」
「団長おおおおおお!」
私の絶叫に、広間が爆発した。
「やっぱり恋してたんですか副団長!」
「お相手は、やはりショコラトリエの――」
「最近、やたら甘い匂いがすると思ってたんだよ」
「任務帰りの顔が、妙にやわらかい理由がそれか!」
「やめろ! 全員黙れ! 団長も!」
団長は咳払いして続ける。
「なお、第三議題は王国公式ではない。しかし“団として士気に関わる事案”と私が判断した」
(――そんなの、余計な判断すぎる!)
団長が意味深な面持ちで、私を見ながら続けた。
「ではまず、真琴殿との交際状況を――」
「交際していない!」
実際のところ相思相愛で付き合っているのだが、この場でそれを披露するのはどう考えても愚策だ。
「では“交際前だが副団長の方は本気”という理解でいいね」
「違うとは……言えないが……違う……いや違わないが……」
団員たちがどよめく。
「ほら見ろ!」
「副団長がしどろもどろになるなんて、初めてだ!」
「真琴殿の前かよ~~~!」
顔が熱で焼ける私を見て団長は楽しそうに指を組み、わざとらしく言う。
「副団長。君は“真琴殿の話をするときだけ語彙が変になる”と評判だが?」
「団長……それ以上は!」
「ちなみに昨日、真琴殿は君に怒っていないと言っていたじゃないか」
(恥をかくくらいなら、いくらでも私が引き受ける。真琴が笑ってくれるなら、騎士の威厳など安いものだ)
そんなことを考えながら、胸の奥が熱くなる。しかも団長は、その様子を逃さない。
「ほう、顔が赤いね。これが“恋に落ちた最強騎士”か」
「団長! やめ……」
この場にいる団員たちは、もう大騒ぎする。
「副団長が照れた!」
「こんな希少な場面、生きてるうちに見れるなんて……」
「拝んどこ……」
「ありがとうございます団長!」
(あぁ……帰りたい)
がっくりと項垂れる私を無視して、団長は締めくくった。
「では本件、今後も定期的に進捗報告を求める。副団長が正式に真琴殿と交際を開始した際は――」
団員たちの視線が一点に集中する。
「――王国騎士団として、盛大に祝賀会を開こう」
「開くなあああああああ!」
団員たちは歓声をあげた。
「副団長と真琴殿のためなら、いくらでも金を出す!」
「団の名誉だ!」
「主役席は真琴殿と隣同士で!」
「いやもう結婚式か!」
そこに、団長が追い打ちをかける。
「真琴殿は、実に良い子だったよ。君のどこが好きなのか、今度本人に聞いておこう」
「ま、待ってください。それ、絶対に聞かないでくださいっ!」
「ふむ。“聞かれたら困る答え”なのかな?」
「団長おおおおおおお!」
今日、私は何度叫ぶのだろう。
終礼後、私は机に突っ伏した。
(――ああ、もう……だめだ)
力が抜けきり、背中を丸める私に団員がそっと声をかける。
「副団長……落ち込んでます?」
「私はもう終わりだ……」
「その……真琴殿、今日も来ると思いますよ?」
「は?」
顔が一瞬で熱くなる。
(真琴が……来る……のか?)
慌てて顔を上げた私に、団員は苦笑する。
「副団長。恋は羞恥に耐えた者が勝つんです」
「黙れ」
「でも、本当に幸せそうですよ」
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