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番外編
番外編 軍務局、“真琴の安全管理マニュアル”を作成しはじめる
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◆アルセリア王国軍務局・会議室
「それでは、次の議題に移ります。“副団長リオン・ヴァルハートの精神的急所に関する管理体制について”」
その言葉を聞いた瞬間、軍務局員全員の背筋が別の意味で伸びた。副団長ひとりの力で、国を半壊させる能力を持つためなのだが――。
(いやその議題名、本当に扱うのか?)
(団長……マジで公式化する気か?)
ざわめく空気をよそに、局長は淡々と資料を配る。
「先日、団長からの報告書により、副団長の精神安定性に特異な要因があると判明した」
紙にでかでかと記載されている。副団長の精神的急所:清水真琴(個人名)
(名前が出てる!!)
(こんなん、個人情報どころの話じゃない!!)
局員たちは震えた。
「この“真琴”殿は、魔物でも敵国のスパイでもない。精霊が異世界から召喚した一般市民だ」
「はい、そのようです……」
「だが副団長は、この“真琴”殿の負傷・涙・不機嫌・他男性との会話・微笑み・褒め言葉などで、著しく戦闘力と判断力に変動が出ることが確認されている」
(恋じゃん)
(要するに恋じゃん)
(軍務局が恋の影響で会議してるの、頭抱えるしかない)
局長は真顔で続けた。
「これらを踏まえ、軍務局としては“真琴殿の安全管理”を強化し、副団長の精神状態を安定させる必要があると判断した」
「……つまり、“真琴殿を守れば副団長リオンも安定する”と」
「その通りだ。よって――」
局長はホワイトボードに大きく書いた。《真琴殿安全管理マニュアル(案)》
(案ってことは、これからもっと増えるの⁉)
◆こうしてマニュアル内容が議論開始された。
1.真琴殿の居場所把握
「まずはこれだ。副団長の安定のため、真琴殿の動向は可能な範囲で把握する」
「追跡じゃなくて“保護”ですよね?」
「もちろん、保護だ」
(言い方!!)
(でも副団長が暴走する前に、場所を知っておきたいのは確かだ)
2.真琴殿の負傷禁止
「真琴殿が転倒・切り傷・打撲など負傷すれば、副団長の精神安定性に深刻な損害が出る可能性がある」
「“傷を見て青ざめて戦闘不能”……前例が……」
(前例があったのか副団長……!!)
3.真琴殿と他男性の距離
「これは最重要事項だ」
「“他男性が一定距離以上近づくと、副団長の殺気が発動する”……団長の報告書に……」
(団長、何を書いてるのほんとに)
「よって必要性のある取引・会話を除き、不審な接近は事前に把握すること」
(……完全に恋の嫉妬対策だが、公文書の上では“治安維持”扱いになってる)
4.真琴殿と副団長のコミュニケーション確保
「この項目……“副団長は真琴殿に頭を撫でてもらうと精神安定化する”と書かれてますが」
「事実だ」
「事実なんですか」
(事実なんだ……)
「ゆえに、副団長が極度のストレス状態に陥った場合、真琴殿への連絡を検討する必要がある」
「家族扱いじゃん……いやもう恋人だから合ってるけど……」
5.真琴殿を危険に晒した者への罰則
「“副団長が黙って、制裁を加えに行く可能性が高い”ため、軍務局が先に処分を下し、副団長の暴走を防ぐ」
(これは確かに、必要かもしれない……)
「さて……以上を踏まえてだ」
局長は深く腕を組んだ。
「このマニュアルは、王城と騎士団の両方に配布することになる」
「騎士団に……」
(副団長……絶対……気絶する)
「もちろん、副団長本人にも確認してもらう必要がある」
(完全に死ぬ!!!)
(副団長の羞恥死が現実味を帯びてきた!!)
「団長にも意見を伺わねばな」
そこへ――バァン!! 団長本人が、勢いよく扉を開けて入ってきた。
「進んでいるかね、“真琴殿安全管理マニュアル”」
(団長ノリノリだ!!!)
「団長あの……本当にやるのですか?」
「当然だ。“副団長の精神的急所”については、国防に直結する重大案件だからな」
(恋バナが国防案件になってるの、世界でここだけだよ!!)
「では、次の項目を追加しよう」
団長は新たな文字をボードに書き足した。
6.副団長の“真琴殿への過剰反応”を想定した避難誘導
「なんですかそれ?」
「副団長が嫉妬、または過剰保護で行動不能になった場合、周囲を安全に退避させる手順だ」
(恋人を見て、団が避難誘導する世界観?)
◆後日 ―― その書類を目撃した者がいた。書類を抱えて廊下を歩く局員。角を曲がった瞬間、ばったり出会う。
「ん? それは何の書類だ?」
――リオンだった。
「っ……!! い、いや……その!!」
「軍務局の書類だな? 私が確認を……」
「だ、だだ団長から直接……! 団長から受け取ってください!!」
そう言ったのに、局員はリオンの存在に恐れをなして涙目で書類を押し付け、脱兎のごとく逃げていった。
リオンは不思議そうに表紙を見る。
《真琴殿安全管理マニュアル(第一稿)》
「……………………」
完全に固まった。
「…………団長おおおおおお!!!!」
その絶叫は、軍務局の隅々まで響き渡った。
「それでは、次の議題に移ります。“副団長リオン・ヴァルハートの精神的急所に関する管理体制について”」
その言葉を聞いた瞬間、軍務局員全員の背筋が別の意味で伸びた。副団長ひとりの力で、国を半壊させる能力を持つためなのだが――。
(いやその議題名、本当に扱うのか?)
(団長……マジで公式化する気か?)
ざわめく空気をよそに、局長は淡々と資料を配る。
「先日、団長からの報告書により、副団長の精神安定性に特異な要因があると判明した」
紙にでかでかと記載されている。副団長の精神的急所:清水真琴(個人名)
(名前が出てる!!)
(こんなん、個人情報どころの話じゃない!!)
局員たちは震えた。
「この“真琴”殿は、魔物でも敵国のスパイでもない。精霊が異世界から召喚した一般市民だ」
「はい、そのようです……」
「だが副団長は、この“真琴”殿の負傷・涙・不機嫌・他男性との会話・微笑み・褒め言葉などで、著しく戦闘力と判断力に変動が出ることが確認されている」
(恋じゃん)
(要するに恋じゃん)
(軍務局が恋の影響で会議してるの、頭抱えるしかない)
局長は真顔で続けた。
「これらを踏まえ、軍務局としては“真琴殿の安全管理”を強化し、副団長の精神状態を安定させる必要があると判断した」
「……つまり、“真琴殿を守れば副団長リオンも安定する”と」
「その通りだ。よって――」
局長はホワイトボードに大きく書いた。《真琴殿安全管理マニュアル(案)》
(案ってことは、これからもっと増えるの⁉)
◆こうしてマニュアル内容が議論開始された。
1.真琴殿の居場所把握
「まずはこれだ。副団長の安定のため、真琴殿の動向は可能な範囲で把握する」
「追跡じゃなくて“保護”ですよね?」
「もちろん、保護だ」
(言い方!!)
(でも副団長が暴走する前に、場所を知っておきたいのは確かだ)
2.真琴殿の負傷禁止
「真琴殿が転倒・切り傷・打撲など負傷すれば、副団長の精神安定性に深刻な損害が出る可能性がある」
「“傷を見て青ざめて戦闘不能”……前例が……」
(前例があったのか副団長……!!)
3.真琴殿と他男性の距離
「これは最重要事項だ」
「“他男性が一定距離以上近づくと、副団長の殺気が発動する”……団長の報告書に……」
(団長、何を書いてるのほんとに)
「よって必要性のある取引・会話を除き、不審な接近は事前に把握すること」
(……完全に恋の嫉妬対策だが、公文書の上では“治安維持”扱いになってる)
4.真琴殿と副団長のコミュニケーション確保
「この項目……“副団長は真琴殿に頭を撫でてもらうと精神安定化する”と書かれてますが」
「事実だ」
「事実なんですか」
(事実なんだ……)
「ゆえに、副団長が極度のストレス状態に陥った場合、真琴殿への連絡を検討する必要がある」
「家族扱いじゃん……いやもう恋人だから合ってるけど……」
5.真琴殿を危険に晒した者への罰則
「“副団長が黙って、制裁を加えに行く可能性が高い”ため、軍務局が先に処分を下し、副団長の暴走を防ぐ」
(これは確かに、必要かもしれない……)
「さて……以上を踏まえてだ」
局長は深く腕を組んだ。
「このマニュアルは、王城と騎士団の両方に配布することになる」
「騎士団に……」
(副団長……絶対……気絶する)
「もちろん、副団長本人にも確認してもらう必要がある」
(完全に死ぬ!!!)
(副団長の羞恥死が現実味を帯びてきた!!)
「団長にも意見を伺わねばな」
そこへ――バァン!! 団長本人が、勢いよく扉を開けて入ってきた。
「進んでいるかね、“真琴殿安全管理マニュアル”」
(団長ノリノリだ!!!)
「団長あの……本当にやるのですか?」
「当然だ。“副団長の精神的急所”については、国防に直結する重大案件だからな」
(恋バナが国防案件になってるの、世界でここだけだよ!!)
「では、次の項目を追加しよう」
団長は新たな文字をボードに書き足した。
6.副団長の“真琴殿への過剰反応”を想定した避難誘導
「なんですかそれ?」
「副団長が嫉妬、または過剰保護で行動不能になった場合、周囲を安全に退避させる手順だ」
(恋人を見て、団が避難誘導する世界観?)
◆後日 ―― その書類を目撃した者がいた。書類を抱えて廊下を歩く局員。角を曲がった瞬間、ばったり出会う。
「ん? それは何の書類だ?」
――リオンだった。
「っ……!! い、いや……その!!」
「軍務局の書類だな? 私が確認を……」
「だ、だだ団長から直接……! 団長から受け取ってください!!」
そう言ったのに、局員はリオンの存在に恐れをなして涙目で書類を押し付け、脱兎のごとく逃げていった。
リオンは不思議そうに表紙を見る。
《真琴殿安全管理マニュアル(第一稿)》
「……………………」
完全に固まった。
「…………団長おおおおおお!!!!」
その絶叫は、軍務局の隅々まで響き渡った。
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