光の果ての君へ~天使の落ちる罠

ノエル

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次の満月の夜、白銀の光が花々を静かに照らし、柔らかな影を落としていた。
庭園の石畳は月光でひんやりと光り、夜風が小さく葉を揺らしている。
遠くで聞こえる水のせせらぎが、夜の静けさを一層深めていた。

第一王子セドリックはひとり、月明かりの中を歩きながら、夜空を見上げた。
胸の奥に小さなざわめきが生まれ、それは日に日に大きくなっていた。

(……あの人は今、どこにいるのだろう……夜空に輝く月よりも、美しい人だった……)

思い浮かぶのは、あの日見た“紫に輝く天使’’、ルシファーの姿。
胸の奥に残る安心感、そして芽生えた恋心が、ゆっくりと心を満たしていく。
目を閉じれば、かすかな光の残像が浮かびあがり、まるでそよ風が肌を撫でるような錯覚に陥る。
会いたい。あの紫の瞳を見ながらお話がしたい。

──会える日まで、胸を張っていられる自分でいよう。
セドリックはそっと拳を握った。



その一方で、天界にいたルシファーは、脳裏に浮かぶ成長した王子の映像に悩まされていた。
映像は回を追うごとに長く濃厚になっていく。

射抜いてくる金色の瞳、圧倒的な存在感と甘い声、絡まって来る熱い舌。
逞しい身体が、覆いかぶさり、着ているローブを脱がそうと手をかけてきた。『ルシファー、好きだよ。あなたが欲しい』
──その感覚が、ルシファーの理性を揺さぶる。

「……くっ……また、か……」

彼は深く息を吐き、まぶたをぎゅっと閉じる。
手のひらに汗をかき、心臓が跳ねる。毎日のように自分を誘惑するこの映像はなんなのか。

胸の奥で疼く熱を押さえつけ、大きく深呼吸をした。幻覚は消え去った。
しかし、脳裏に残る残像は、まるで甘く尖った棘のように、彼の理性を揺さぶったままだった。

(これは幻覚ではない。試練だ……)

ルシファーは低く呟き、己の感覚を理性で抑え込もうとする。
未来の王子の姿に、理性を失わぬよう必死に抗う。

幼い王子は無垢で純粋な存在、守る対象。
未来の彼の幻覚がどんなに官能的でも、それに惑わされてはいけない。



セドリックは満月を見上げ、胸の奥にある淡い希望を抱きしめた。
月光の下、庭園の花々は静かに揺れ、王子の小さな願いを優しく包み込んでいる。

──ルー、いつになったら来てくれるの? 守ってくれるって言ったじゃないか。
──会える日まで、強くならなきゃ……

夜空には星々が瞬き、二人の時間をそっと隔てていた。


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