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第二百八話 ギルド支部訪問 3 マーチとノーチ、ナッシュ
しおりを挟む翌朝。
飯は美味かった。米もよく研いだようだ。
味噌汁も丁寧に作られている。
ヒモノと漬物だけのおかずだが、ひものの表面のほこりなどはきれいに払われてる味。丁寧にそれがなされていないと埃やカビ臭さが残ってたりする。
漬物は糠の一夜漬け。
適度に水で洗われており、味は薄くもなく塩辛くもない。
給仕を手招きして言う。
「この丁寧さを毎回行えたら、この食堂は第一級だ。近いうちにまた来る。」ドーラ
そしてドーラは昨日のギルドの者に、この食堂を気にかけてやってくれと念話で伝えた。
ーー
またも同じようなデッドエンドの村。同じように魔物が出る森の近く。同じような閉鎖的な村人。
そして、ドラゴニア(ダンジョン側の街)から来た冒険者2名。
ドーラとユータがその村の冒険者ギルドの看板を揚げた家に行ってみた。
あったことの無い者達だったが、彼等はドーラとユータのことは知っていた。
そして歓迎してくれた。
ドーラとユータが僻地ギルドを見て回っているのだろうと彼等はすぐわかり、他の土地はどうだと訊いてきた。
まだ回り始めたばかりだがと前置きして、前回の村のことを話して聞かせた。
それを訊いた彼等。
「俺らは幸運だ。なにせ2人だ。多分村人のそういうところはここでも似たようなもんだろう。が、俺らは全く気にせずに勝手にやってきた。俺らのペースでやって、奴等は俺らのペースに入り込まなければ困ったことになる、しかし俺らのペースにはまれば良くなるとわかったらしく、勝手に寄ってきて、俺らの流れの中に加わった。
俺らは、俺らのやるべきことをやっていただけなのに。」
「すごいね?」ユータ
「おう。・・やっぱ2人だと、そう行けるのか?それともお前たちが特別なのか?」ドーラ
「「どうだろう?」」
より詳しく訊いた。
北の森の街に1年弱前に入った。勿論ゲスザンスから入った。向こうとは天と地の差だった。
2人はもともとこっちら辺の生まれで、子供の頃から仲が良かった。
なので北の森の街で2人が平和に暮らしていたときに、ゲスザンスにギルドを作ると聞いたときには「なにやってんだ、あいつらには過ぎたモノだ」と思った。
他にもゲスザンスから来た者達は北の森にも多く居た。そいつらの多くも似たような考えだった。
けど、初期にゲスザンスから来た冒険者達は違った。
「放置していいものではないだろうとは思っていた。放置しておけば、いつか必ずこちら側によくないことをしでかす」
それを聞いたとき、なるほど、と俺達皆納得した。俺らの代ではなくとも、子供の代に、その子供の代かもしれない。けど、必ず、ザンス王家があった時のようになるに決まっていると俺らは判っていたのだ。
で、みすみす人の良いこっちの冒険者達に、あんな腐ったのの相手をさせる苦労をさせるのも忍びない。下手したら騙されて殺られちまうかもしれない。
「そんじゃ、俺らの出番だな。短い生活だったが、ドラゴニア・ゴンザールの生活は楽しかった。」
と、俺らは志願した。
勿論ギルド側は最初は拒否した。せっかくこっちに来たのにまた戻る必要はない、と。
が、
「それは俺らの仕事なんだよ、悪いな。俺達によこしな」
と、俺達ゲスザンス出身者達に僻地をあてがわせた。
「だから、俺らはこいつらの相手の仕方を知っている。無視して俺はやることやってりゃ、必ず靡(なびい)て来ると判ってた。」
「・・・悪かったな。俺らが至らないせいで、お前らに苦労をさせてしまっている。」ドーラ
ドーラ達もチームなのだ。なので無意識に”俺ら”と言った。それを2人はわかった。何かよいことを行ったときも”俺ら”という意識を持っているのだろうと。仲間を大切にしているのだろうな、と。
そういうのは北の森の街しかしらないが、毎日のように見てきたから。
「宿に関して、ドラゴニアから人手を回すか?」ドーラ
「いや、俺らでやるわ。そこそこのことは出来る。できればここの奴等を少数派にしたくない。」
ここの奴等が自分たちで何かを為し、人に認められるということを知る、ということをさせたいのだろう。
こんな小さな村を乗っ取るのは容易い。でもそれではゲスザンスを消滅させたほうがよかったことになる。
「廃品利用?」ユータ、あいかわらす・・・
「「はっはっはっは!!そのものだなー」」2人。
2人の名は、マーチとノーチ。
「この村に名前はない。殆どの僻地の村は同じだ、名は無い。それがゲスザンス仕様なんだよ。」
「じゃ、お前らが”ドラゴニア・ゴンザール冒険者ギルド**村支部”と名付けてくれ。それでこの村に名が付く」
「「わかった」」
2人は転位はできないが、飛べるんで何かあったら飛んで戻ると言った。
「んじゃ、ひとつだけ俺の要望聞いてくれるか?」ドーラ
「ドラゴニアから一人ここに送る、お前達の魔法の教官だ。その教官がよしと言うまで、魔法を習ってくれ」ドーラ
「ありがたい。受けよう」と、2人は快く了承してくれた。
ドーラは念話でテイナに連絡を入れると、マキの防衛軍の方から一人回してもらうと請け負った。
ーー
マーチとノーチの2人と別れ、次の僻地の村に転移したドーラとユータ。
「おっす!どう?」ユータ
「・・・・目の前にいきなりですね、びっくらですけど、あなた達かジョニーさんならそんなもんだし、、」
と、元中間の森の街から北の森の街が出来た時に応援に行ってそのまま北の森の街に住み着いてげゲスザンスの問題にも助っ人で関わっていてくれ、ドーラもユータもよく顔を見ていた冒険者ナッシュ。
もう名前のネタが尽きはじめたのか?とか思っては逝けない。決して!!
彼もゲスザンスからドラゴニアに入った者だ。初期に入ってきた。ジョニーと同じルート、ゲスザンス→ゴーミ→ゴンザール→中間の街。
そして、ドーラがザンス王家とゴーミ王家を潰し、その軍を消滅させた後の、それらの国から逃げてくる冒険者達と向こうの凶悪ギルドとの闘いなどに助っ人で参加していた。
あの時期は、向こうからドラゴニア・ゴンザールに入ってきていた者ほぼ全てが参加してくれたのだ。
一人でも多くこちらに逃がせられれば、自分達側の戦力は増え、奴等に泡をふかせられるた、ということだ。
でもたまに、こちらに向かって逃げてきていた者が殺られた、という報告を聞くとやるせなかった。まだあったことも無かったが、それまでこっちに逃れられら者達と同じ仲間だともう思っていたから。その見た事も無い者がこっちに渡ってきたときの笑顔を見ることができず、悔しくて悔しくて仕方なかった。
ナッシュは中間の街に長く居たので魔法はもうベテランだ。
なのでバラックだった村に5階建てのビルを魔法で建てた。
一階をギルド事務所にした。
表に出した看板は、
”ドラゴニア・ゴンザール冒険者ギルド、僻地村(仮称)支所および交易所”
物々交換、交易の相談承る、と張り紙も。
で、すぐに狩りを行い、ストレージに十分に美味い魔獣を溜め込んだ。
毎日ギルド事務所の前のちいさな庭の端で、燻製肉を作った。
当然毎日うまそうな匂いが周囲に立ち込める。
当初は無視していた村人達も、夕方になると野菜などを持って交換に訪れるようになった。
そのうち顔見知りになるといろいろ雑談もするようになる。
多くの者は家屋の問題を気にしていた。冬にはかなり寒くなるのだ。
なので、顔見知りになった者達の家を魔法で立て直してやった。
そこからはもう話しが急激になった。
そのうち長老も耐えきれずにナッシュの元に訪れるようになった。
そこまで一ヶ月ほど。
「やっぱ元ゲスザンスの者はすげーや」
と、ドーラとユータは感心した。
このギルド支所進出話がでたとき、ゲスザンス出身者達が思ったことは正しかったと思い知った。
「俺は転位できるので、たまに戻ってますよ?4-5日に一度はあっちの飯食わないと。自炊じゃーたかがしれてますからねぇ、、」ナッシュ
中間の街にも、北の森の街にも、ドラゴニア厨房班卒業生達が宿屋に入ったり、食堂に入ったりしている。そこの者に料理を教え、美味い飯を作れるようになるまで居るのだ。
中には自分で店を持つ者もいるが、大半は教える方を選んでいる。人が成長していく様を見るのが好きな者達が多いのだ。
「ここの森はどうなの?」ユータ
「はい、支所程度ならいいくらい?冒険者10-20人くらいは養えるんじゃないですかね?」
「んじゃ、ここで料理人見習い雇えば、ドラゴニアから教える者送るよ?」
「そうっすね、冒険者を受け入れるように宿作ります。お願いできますか?」
ドーラがニヤに念話で頼んだ。2名送ると請け負ってくれた。が、
「最初はニヤが行って確認するニャ!」と。
ニヤはどっかに行くのが好きなのだ。
あと、この村で冒険者を募集していることを北の森の街のギルドに張り紙しておく、とユータは請け負った。
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