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第二百十九話 マッハとセレーネと 3
しおりを挟むそのまま海の近くの小さな街に宿を見つけて泊まる。
この海のものを食べたいと思ったから。
宿は海で獲れたものを夕食に出してくれるというのでそこに決めた。
食堂に座って待っていると宿の人が配膳してくれる。
昼間に海で泳いだことを言うと、あまり泳ぐ者はいないという。
「ここは釣りに来る人が多い」とのこと。
皆納得した。遊ぶ海、居る海ではなく、狩場なのだと。
そして食事を始めると更に納得。
「魚の味が違う。」セレーネ
「おう、うまいな!」マッハ
「うん、これは向こうでは無い感じの美味しさ」ユータ
「泥臭くない川魚とかいたらこんな感じのもいそう」ドーラ
あーそうだねー、とユータとマッハ。
うまくあたれば結構釣れるらしい。
ここらのは変に味付けるより素直に焼くだけのが一番美味いという。
身がうまいということだなー。
いろいろ話しが弾み、結論は
「俺らの海があそこでよかったなー」
であった。
海の獲物はこちらのほうが少し美味しいかも知れない。でも狩場だけというのはあまりにももったいなさ過ぎる。
ドラゴニアと人魚王国では快適に住んでいるのだから。
その環境がある俺らの海は幸運だな!ということであった。
ここの海を知らなかったら比較できなかった。自分達の海がとてもよいものだと気付くことは難しかったろう。
翌日は北の上り、ゴーミとの国境まで一気に行く。国境の谷間を見てから王都に戻る。
ゴンザールの王都は歴史があるようなので、ドラゴニアよりは古い建物が多い。また、古いのに5階建てとかもある。昔から技術を持っているのだろう。
王都も城塞で囲まれている。
その城塞は幾重にもなっていて、王都がどんどん広がってきたことがわかる。
城塞を広げるには周囲の森も開拓していったはずだ。魔物、魔獣もいる森。大変だったことだろう。
今はこちらの冒険者たちも技量をあげている。ドラゴニアから指導教官が来ているから。特に魔法は上手くなっているだろう。
ゴンザール王都に泊まることにする。
王都の城門をくぐる時に衛兵に訊いた、どこの宿が良い?と。
衛兵は、一番古い中央市場の近くならまず間違いないと教えてくれた。
一番古い中央市場は一番内側の城壁の中にある。
歩くと結構あるが、見物がてら歩くことにした。
内側の城壁の門は開け放している。
それを見たドーラ。
(・・・・・・・・・)
それから少し歩いて、そこらの美味い飯屋を訊いて行く。
ドーラは先に食事を食べ終え、「ちょっと用事してくる。ここに居てもいいし、近くの喫茶店とか行ってお茶しててもいいぜ」と出ていった。
んじゃケーキ屋さん見つけに行こうか、とユータ提案。
皆賛成。
ドーラは食堂の外に出てからゴンザール王に念話を送る。
(今王都にいるんだけど、内側の城壁っていらないんじゃないの?無い方が行き来しやすいよな?もし、いらないなら、今すぐけしてやるけど?)
王は是非お願いしたいとドーラに頼む。
今のドーラの魔力ではこの程度容易にできるのだ。
ドーラは空に浮かび上がり、城壁の上に人がいたら全て下に転移させ、城壁を消した。
その消えた城壁の周囲に居た者達はびっくりしたが、まぁ、こういうこともあるもんだ、と納得した者も少なくなかった。それがドラゴニアと同盟を組んでかなり経つゴンザールの者達だった。
「あ、ドーラがなんかやった」
ケーキを食べていたユータ。
「そうね、なんかでっかいの」セレーネ。
「うん、おれは少ししか感じなかったけど、でかいからわかった」マッハ
ドラゴニアの子達は見えを張らない。よそから来た大人たちがたまにそういうことするが、皆理解できないでいる。
だからマッハも正直にそのままのことを言う。
周囲の者は、それを理解し、魔法に関してはバックアップするなり、伸ばすようなことを応援するなりしていくのだ。
見栄なんか張ったら、誰もそういうことしてくれないだろう?事実を言わないので信用も落とすし。
シュン!
「ただいま!ケーキうまそーだな?」ドーラ
「うん、美味いよ!何してきたの?」ユータ
「城壁消してきた。邪魔だからいらないって。」
「そうだよねー、内側のはいらないよねー」
通り抜ける門はそう多くないので面倒そうだった。まだ一つだけしか通り抜けていないけど。
城壁が無くなってそこがぽっかり開いた空間になった。人がもう普通に通り抜けている。
そのうち朝市の場所ならなんやらになるだろう。
ユータ達も好きなところを通り、どんどん中央に向かった。
夕方ころにやっと中央市場付近に到着。
特に休憩を多く入れたわけではない。王都が広いし、裏通りが結構面白かったので見ていたらそうなっただけ。
3軒ほど宿を見た。皆ほぼ満員。3軒目にやっと2部屋ある宿があったのでそこに決めた。
帳場の横はもう食堂。客も多い。見てみると飯もうまそうだ。
銭湯は近くにあるという。先に行く。
さほど混んでいなかったので、中で他の客に訊いたら
「ここらだけでもこんな感じの銭湯が3軒あるからな。」とのこと。
なんでもドラゴニアと同盟結んでから出来たこの銭湯もだけど、王様がどんどんいろんなことを始めて、かなり暮らしやすく成ったり、なんかいろいろ良くなったそうだ。
あの王様がうちの国に来て見たものなどどんどん取り入れてるだな。やるなぁ!!
ドーラ達3人が銭湯の外の売店の前で串団子食べながら待ってているとセレーネが見知らぬオバさん達と出てきた。出口で別れてた。
「知り合ったの?」マッハ
「うん、世話好きみたい。この街はいい街みたいだね」セレーネ
すぐ側の宿に帰って皆で夕食を食べた。
魔獣の肉がメインの食事。野菜は少なめ。
それでも今はドラゴニアの方でも野菜を作ってるので「多くなったんだよこれでも」と言われた。
以前はかなり苦労していたようだ。
食事が終わったあと
「俺達、かなり恵まれているんだな。よくわかった。」マッハ
「そうね、ウチもお気軽だったんだなぁ、ってわかったわ。」セレーネ
「まぁいんじゃね?環境ってのはそこのものだから。だから温かい海に住むのはそこを探し出したからだし。俺らもあのドラゴニアの土地は一応探して決めた場所だし。そこでも皆が働き者だから沢山獲れる。だから暮らしも良くなっている。」ドーラ
「うん、こっちのゴンザールだって、多くの農民がダンジョン側の街に来て頑張って農業やってるからここの野菜も増えたんだし。北の森からの獲物もかなりこっちに送られているのは、ゴンザールが気に入って来た冒険者が凄く多かったからだし。その成果が今のこのよくなった状態だからね」ユータ
「そう。歴史のある国は昔の仲間たちが頑張ってくれて、今も頑張っているからよくなる。新しい国は今の仲間で頑張っているから良くなっている。皆が好き勝手やってたら、こうはいかなかった」ドーラ
「だよなー」
「そうよね。うちも皆好き勝手だけど、それでも宿ができてからは少し変わったしね」
「ガンバってて面白けりゃ、みな余計頑張れるだろ。おもしろいんだから。」
「うん、ボクらもおもしろくなかったら何もしていないとおもうよ?」言い切るユータw
そんなんでいいのか?とか思ったマッハとセレーネだが、国を作った2人がそうなんだから、そうなんだろう、と思った。
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