僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下

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12話 ギルド

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「すいません。身分証明書の発行がしたいんですけど」

「身分証明書の発行ですね。街に住んでる人であれば雑貨ギルドで街人登録が可能ですよ?」

「僕、街の人じゃないんです。出来れば外で魔物討伐もしたいので、身分証明書の発行をお願いします」

「はぁ…それは可能ですが…。お連れの大人の方とかはいないのですか?」

「え…僕ひとりなんですが、大人が必要なんですか⁉︎」

「おい坊主!ここは遊び場じゃねーぞ‼︎そんなズボンとシャツ1枚着て鞄ぶら下げてる子供が外に出ても、魔物のエサになるだけさ!帰んな帰んな」

いきなり後ろから話しかけられ振り向くと、40代半ばくらいの男性が立っていた。

「魔物討伐が可能だから来たんですけど…」

「外でアリを殺して魔物討伐なんて言ってるガキもいるからな!アリをいくら殺しても魔石や素材は出ないんだぞ。わかって来てんのか?」

いくらなんでも頭ごなしにそれはないだろう。僕が生まれていろんな苦しみを知らずに生きていたら、きっとこれで泣いていたに違いない。違いないが僕はそうじゃない。

「魔物討伐できなくて、ここには来ないでしょう」

「魔石1つでも出してから言うんだな。ケツの青いガキは口ばかりでかくて困ったもんだ」

やれやれとばかりにわざとらしく両手を広げ、ため息をついてくる。

「言い過ぎですよ!ギルドに登録もしていない子に絡むのはやめてください!僕も気にしなくて良いからね。でも、あの人の言う通り魔物討伐は魔石や倒した魔物の討伐証明部位に素材を持って来て初めて討伐なのよ」

受付さん曰く、魔物を討伐すると討伐した魔物の身体の一部が討伐証拠として出るらしい。それとは別に魔物の毛皮や食べれる魔物なら肉が残ったりもするそうだ。中には杖などの素材に使える牙とかが取れる魔物もいると教えてくれた。

「これは魔石ではないんですか?」

鞄から赤い石を取り出し受付の人に見せる。

「…これは魔石ですね」

「んなわけあるか!見せてみろ!」

いちゃもんつけて来た男が受付の人から魔石を奪い取る。奪い取って放った言葉がありえない‼︎

「坊主!これどこから盗んだんだ⁉︎それとも親が持ってるもん勝手に持って来たのか?魔石を持ってくれば良いってもんじゃないんだぞ!討伐した魔石じゃないとな」

この人すごい支離滅裂な事言ってる気がする。魔石を持って来いと言い、持ってきたら盗んだもの⁉︎人を馬鹿にするのも良い加減にしろ!と怒鳴りそうになると、静かに僕の横で黙っていたルピがトコトコと中年男のところに行く。

「お?なんだ嬢ちゃん。魔石はちゃんと持ってる人に返せって、嬢ちゃんからも言ってやれ」

1人ぶつぶつ言っている男性にルピが手を当てて

「ピッ!」

男の体に火がつく。

「!!!?アッ!!!!熱い!あっつッ‼︎誰か消してくれ‼︎頼むから消してくれーー‼︎」

「ルピ」

「ピッ」

ザバーと降り注ぐ水に、今度は溺れそうにガバババッとなっている中年男。
周りで見ていた人は全員が固まり声が出ていない。

「これで良いですか?僕は魔物討伐は出来ませんが、僕の従魔のルピが魔物討伐をします。それでもダメなんですか?」

「えっと…あ、はい。大丈夫です。今用紙をご用意しますね」

固まっている周りを無視して、受付の人に話しかけると慌てたように用紙を持ってくる。

「1番上にお名前とその下に年齢。冒険者希望なら、剣士・斥候・魔術士など自分が得意な分野のものを書いてください。最後に身分証明書が偽造されないように両手の指の痕をつけて、ここの紋様に血を一滴落としてください」

「従魔がメインの場合はどうしたら良いですか?」

「それならテイマーで良いと思いますので、テイマーとご記入ください。その時に、従魔のお名前と同じく血液ももらいます。従魔が増えるたびにこの作業は必要なので忘れないでくださいね」

「わかりました」

必要事項を記入して、名前はクボハヤトではなくハヤトとした。

嫌がるルピにお願いして指先をほんの少し風で切ってもらい血を垂らす。ルピも恐々と自分の足の先を風で切り、踏みつけるように書類の紋様に血をつけていた。

受付の人が若干嫌な顔をしているが、僕も嫌な思いしたんだ。文句は言わせない。

出来上がった身分証明書兼ギルドカードは、運転免許証ぐらいの大きさをしていた。僕は1番下のFランクと表示されている。ランクは貢献度や強さによって上がって行くという事だった。早く上がると良いな!

「手元にある魔石を売りたいんですが、どこに行けば良いですか?」

「それなら建物の奥にある買取場所があるので、そちらにお願いします」

「わかりました」

ヒソヒソと声は聞こえるが、何かを言ってくるわけでもなく僕とルピをジロジロ見てくる冒険者の目線が気持ち悪い。僕とルピは見世物パンダじゃないと言いたくなるが、ほっといて奥に行く。
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