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51話リリーの話③
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「街の外がおかしいみたいだけど、リリーはここにいて良いの?」
「え?私が来たときは普通だったわよ」
「とりあえず、腹ごしらえもしたいし外に行こう。ルピ、喉がカラカラ。お水貰える?」
ルピからお水を貰い、リリーに着替えるからと部屋の外に出て貰った。僕は新しい街で奴隷買って、戻るだけの予定だったんだけどな…。
『ハヤト、お外行くの?』
「ロッソが騒がしいって教えてくれたからね。それに僕お腹減ったよ。ルピとロッソもお腹減ったでしょ」
『おじさんにご飯貰ったけど、美味しくなかったから美味しいもの食べたい』
美味しくなかったのか。ロッソも、あれは口に合わないわとさらっと伝えてくる。すごい食べたって聞いた気がするんですけど…。簡単な物しか用意できないとは言ってたし仕方ないのかもね。
「外に出て美味しいものあればいいんだけど、食べに行くついでに様子を見に行こう」
『そうするー!』
リリーにお待たせと伝えると、宿の出入り口に向かう。亭主がこちらを見て「ひぃぃぃ…。もううちの材料は限界だぞ…」と言ってきた。おじさんごめんね。
ロッソに騒がしい場所への案内をお願いし向かってもらうと、街で一番大きな建物の方から叫び声や怒鳴り声が聞こえてきた。
「わかってるんだぞ!お前の娘が大量の荷物を買っているのを、外に仕事に出ていたやつが南の街で冒険者が話してるのを聞いたって話しがあるんだからな!!」
「いい加減にしやがれ!買ったものを俺達に配れ!!ギルドや俺達を見殺しにするきか!」
「水も明かりも満足になくて、どうやって暮らすつもりだい。井戸まで毎日汲みにいくのかい。乳飲み子や病人を抱えてる人だっているんだよ」
様々な怒鳴り声が耳に入ってくる。リリーを見ると顔が真っ青だ。まさか見られたとは思っていなかったんだろう。
リリーを最初に見た時は、フードが付いてる服を着ていたのでスッポリとそれで顔を隠していたのかもしれない。
「待て。ワシの娘は外には出ていない。それにワシは今後も冒険者を呼ぶつもりはない。嫌なら出て行ってくれ」
「なんだと!!俺らを見捨てるきか!!冒険者が来るからお前だって食っていけてるんだろう!亡くなった嫁に申し訳なくないのか!!」
「申し訳なくないか…。そうだ申し訳ない。冒険者が来るせいで無理をさせてしまったんだ。申し訳ない」
ダメだ。この人完全にやる気がない。きっとリリーが南の街から買ってきたという情報を聞いて、我慢の限界を迎えたんだろうな。リリーはずっと無言でうつむいていた。
「それだけの話しなら帰ってくれ。ワシはこれ以上話すつもりはない」
「待って!!待ってお父様!いけないわこのままじゃ!!」
「リリー。お前、なんで出てきて…」
「お父様が不甲斐ないのは私にも責任があります。今回南の街からわずかですが操石を仕入れてきました。まもなく街に明かりと水が戻ります。それに…それに、今回有力な方にお力添えをお願いしています。お母様以上には行きませんが、冒険者が来るよう努力をします。もうしばらくお時間を貰えないでしょうか」
有力な方って僕の事だよね…。え、僕一言も協力するなんて言ってないよ…。どこかでそんなこと言ったっけ?言ってないよなぁ…。
「街に水と明かりが戻るなら、しばらくは我慢しよう。しかし、改善の兆しがなければ領主を変更させるよう王都へ訴えるからな!!この街がラッカみたいに、できる領主がいる街ならよかったのによ!」
「そうよ!Sランクだったララノアがいなければ、ここまで街は大きくならなかった。そのララノアが選んだ相手だと我慢してたけど我慢の限界よ!」
「申し訳ありません。改善の兆しが無ければ王都に領主の変更を申し私たちは出ていき、街へは二度と近づきません」
「そこまで言うなら……半年だ。それ以上は待てないからな!」
リリーの声掛けにより、いったんは静まりそれぞれが帰っていった。街から出ていくって、勝手にそんなこと決めてよかったのかな。
ほっとしたような顔をするリリーに反し、今度は父親が真っ青な顔をしていた。
「なんでお前はそんな勝ってばかりするんだ!これでは後に引けないではないか!!」
「お父様、後に引くなんてことはする必要がありません!ギルドがあって冒険者も来るから、街は回り商売も上手くいくのです。今のお父様では生きた屍です!!」
「ワシは生きた屍でも構わない。お前まで失ったら…失ったら、ワシはどうすればいいんだ…」
「お父様、私はお母様が愛したこの街が大好きです。頑張っていたお父様を尊敬もしていました。でも、お父様は娘に生きた屍の背中を見せ育てるのですか?娘にも屍のような人生を歩めとおっしゃるのですか!?」
「そんなつもりはない…。お前はしかるべきところに、嫁に出して幸せに…」
「こんな状態で私が幸せになれるとお考えなのですか!?お父様目を覚ましてください。一緒にお母様が愛した街をもう一度活気ある状態に戻しましょう。私も協力しますから」
「でも…ワシは…」
「お父様!!しっかりなさってください!動けと言っているのよ!!いつまでもグズグズと女々しい!口が動くなら、身体を動かしなさい!」
「は…はい…」
最後はリリーがキレた。父親もその勢いに押されて返事したし、これはこれで良いのかもね。頼りない父親だけど、リリーがいれば街も活性化するかもしれない。
僕も少し役に立つなら、お手伝いしても良いかな。グイグイ来られるのは遠慮したいけどね。そこは臨機応変に対応を考えればいいか。
「ハヤト。リリー、僕の名前はハヤトだよ」
「え?私が来たときは普通だったわよ」
「とりあえず、腹ごしらえもしたいし外に行こう。ルピ、喉がカラカラ。お水貰える?」
ルピからお水を貰い、リリーに着替えるからと部屋の外に出て貰った。僕は新しい街で奴隷買って、戻るだけの予定だったんだけどな…。
『ハヤト、お外行くの?』
「ロッソが騒がしいって教えてくれたからね。それに僕お腹減ったよ。ルピとロッソもお腹減ったでしょ」
『おじさんにご飯貰ったけど、美味しくなかったから美味しいもの食べたい』
美味しくなかったのか。ロッソも、あれは口に合わないわとさらっと伝えてくる。すごい食べたって聞いた気がするんですけど…。簡単な物しか用意できないとは言ってたし仕方ないのかもね。
「外に出て美味しいものあればいいんだけど、食べに行くついでに様子を見に行こう」
『そうするー!』
リリーにお待たせと伝えると、宿の出入り口に向かう。亭主がこちらを見て「ひぃぃぃ…。もううちの材料は限界だぞ…」と言ってきた。おじさんごめんね。
ロッソに騒がしい場所への案内をお願いし向かってもらうと、街で一番大きな建物の方から叫び声や怒鳴り声が聞こえてきた。
「わかってるんだぞ!お前の娘が大量の荷物を買っているのを、外に仕事に出ていたやつが南の街で冒険者が話してるのを聞いたって話しがあるんだからな!!」
「いい加減にしやがれ!買ったものを俺達に配れ!!ギルドや俺達を見殺しにするきか!」
「水も明かりも満足になくて、どうやって暮らすつもりだい。井戸まで毎日汲みにいくのかい。乳飲み子や病人を抱えてる人だっているんだよ」
様々な怒鳴り声が耳に入ってくる。リリーを見ると顔が真っ青だ。まさか見られたとは思っていなかったんだろう。
リリーを最初に見た時は、フードが付いてる服を着ていたのでスッポリとそれで顔を隠していたのかもしれない。
「待て。ワシの娘は外には出ていない。それにワシは今後も冒険者を呼ぶつもりはない。嫌なら出て行ってくれ」
「なんだと!!俺らを見捨てるきか!!冒険者が来るからお前だって食っていけてるんだろう!亡くなった嫁に申し訳なくないのか!!」
「申し訳なくないか…。そうだ申し訳ない。冒険者が来るせいで無理をさせてしまったんだ。申し訳ない」
ダメだ。この人完全にやる気がない。きっとリリーが南の街から買ってきたという情報を聞いて、我慢の限界を迎えたんだろうな。リリーはずっと無言でうつむいていた。
「それだけの話しなら帰ってくれ。ワシはこれ以上話すつもりはない」
「待って!!待ってお父様!いけないわこのままじゃ!!」
「リリー。お前、なんで出てきて…」
「お父様が不甲斐ないのは私にも責任があります。今回南の街からわずかですが操石を仕入れてきました。まもなく街に明かりと水が戻ります。それに…それに、今回有力な方にお力添えをお願いしています。お母様以上には行きませんが、冒険者が来るよう努力をします。もうしばらくお時間を貰えないでしょうか」
有力な方って僕の事だよね…。え、僕一言も協力するなんて言ってないよ…。どこかでそんなこと言ったっけ?言ってないよなぁ…。
「街に水と明かりが戻るなら、しばらくは我慢しよう。しかし、改善の兆しがなければ領主を変更させるよう王都へ訴えるからな!!この街がラッカみたいに、できる領主がいる街ならよかったのによ!」
「そうよ!Sランクだったララノアがいなければ、ここまで街は大きくならなかった。そのララノアが選んだ相手だと我慢してたけど我慢の限界よ!」
「申し訳ありません。改善の兆しが無ければ王都に領主の変更を申し私たちは出ていき、街へは二度と近づきません」
「そこまで言うなら……半年だ。それ以上は待てないからな!」
リリーの声掛けにより、いったんは静まりそれぞれが帰っていった。街から出ていくって、勝手にそんなこと決めてよかったのかな。
ほっとしたような顔をするリリーに反し、今度は父親が真っ青な顔をしていた。
「なんでお前はそんな勝ってばかりするんだ!これでは後に引けないではないか!!」
「お父様、後に引くなんてことはする必要がありません!ギルドがあって冒険者も来るから、街は回り商売も上手くいくのです。今のお父様では生きた屍です!!」
「ワシは生きた屍でも構わない。お前まで失ったら…失ったら、ワシはどうすればいいんだ…」
「お父様、私はお母様が愛したこの街が大好きです。頑張っていたお父様を尊敬もしていました。でも、お父様は娘に生きた屍の背中を見せ育てるのですか?娘にも屍のような人生を歩めとおっしゃるのですか!?」
「そんなつもりはない…。お前はしかるべきところに、嫁に出して幸せに…」
「こんな状態で私が幸せになれるとお考えなのですか!?お父様目を覚ましてください。一緒にお母様が愛した街をもう一度活気ある状態に戻しましょう。私も協力しますから」
「でも…ワシは…」
「お父様!!しっかりなさってください!動けと言っているのよ!!いつまでもグズグズと女々しい!口が動くなら、身体を動かしなさい!」
「は…はい…」
最後はリリーがキレた。父親もその勢いに押されて返事したし、これはこれで良いのかもね。頼りない父親だけど、リリーがいれば街も活性化するかもしれない。
僕も少し役に立つなら、お手伝いしても良いかな。グイグイ来られるのは遠慮したいけどね。そこは臨機応変に対応を考えればいいか。
「ハヤト。リリー、僕の名前はハヤトだよ」
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