護衛騎士は聖女の教育係(男性不信)を一途に愛する

鳥花風星

文字の大きさ
3 / 10

3 狙われた聖女

しおりを挟む
「怪文書が届いた?」

 聖女リリアの部屋に入ったフィオナとヴィアは、部屋の中にいたリリアとこの国の第一王子デミルの不安そうな顔を見て眉を顰める。どうやら、リリア宛にデミルとの結婚を取りやめろ、さもなくば命を狙うと書かれた怪文書が届いたようなのだ。しかも、封筒の中には刃こぼれが入っており、気づかずに開けた側近が怪我をしたらしい。

「俺とリリアの結婚は国で決まっていることだ。リリアを守るために結婚をやめたくてもやめることはできない。犯人が捕まるまで、どうかリリアを守ってほしい」

 神妙な面持ちで言うデミルのそばには、不安そうな顔のリリアがいる。二人を見て、フィオナは胸が苦しくなった。犯人は一体誰なのだろう、どんな目的でこんな怪文書を送ってきたのだろうか。

「リリア様のことは全力でお守りします。今後、リリア様の元に届けられたものは全て私が開封して中身を確認します」

 これ以上リリアを守る大事な側近たちから怪我人を出してはいけない。誰かが犠牲になるならまずは自分からだ。そうフィオナが思っていると、ヴィアが険しい顔で口を開く。

「それはダメだ。フィオナは教育係であって護衛でも側近でもない。そこまでする必要はない」
「どうして?リリア様の教育係だけれど、それ以前に、私はリリア様をお守りするために一番近くにいるのよ」
「危ないだろう。教育係のフィオナに何かあれば、その後誰がリリア様の教育を行うんだ」
「それは……」

 フィオナとヴィアが押し問答していると、デミルが二人の間に割って入る。

「落ち着け、二人とも。リリアのことを思ってくれるのはありがたいが、二人とも大切な護衛であり教育係だ。ここで仲違いされては困る」

 デミルの言葉に、フィオナもヴィアも困惑し、口を閉ざした。

「「申し訳ありません」」
「わかればいいんだ。とにかく、一番狙われるとすれば今度開かれる結婚のお披露目パーティーだろう」

 国民に知らせるための国を上げての結婚祝いではなく、その前に開かれる王族や貴族を中心としたお披露目パーティーがある。デミルとリリアの結婚が確定している以上、そこでリリアが狙われる可能性が高い。

「騎士団で護衛を厳重にするようにします」
「頼むよ。限られた人間しか参加できないとはいえ、どこから不審者が紛れ込むかわからないからね」

 そう言ってからデミルはリリアのそばに行き、リリアの両手を取る。

「リリア、不安だろうけれどヴィアたちが守ってくれる。俺も君のそばから絶対に離れない。だからどうか安心してほしい」
「デミル様……」

 リリアは潤んだ瞳でデミルを見つめ、デミルはリリアの両手を力強く握った。

(お二人の幸せな未来のためにも、リリア様を全力でお守りしないと)

 そう強く思いながら横にいるヴィアを見上げると、フィオナの視線に気がついたヴィアは真剣な顔でうなづく。ヴィアもフィオナと同じ気持ちなのだろう。

(ヴィアが護衛騎士で本当によかった)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

モブな令嬢は第二皇子の溺愛から逃れたい

エヌ
恋愛
王子様、どうか私に興味は持たないでくださいね!

処理中です...