4 / 36
4.顔合わせ
しおりを挟む「お待たせ致しました。フレミア様、どうぞ」
伯爵家の従者が丁寧に礼をする。
侍女リアーナと共に馬車に乗り込みアイロワニー伯爵家へと向かう。
車窓から外の景色を見ながら、思わずため息をついてしまう。
すると、リアーナが心配そうに私を見て、
「フレミア様…。使用人の者達は…皆、フレミア様の味方です。どうか、お気持ちを強く持ってください…」
そう言った。
「リアーナ…ありがとう。心配をかけてごめんなさいね。」
「ジュリー様も旦那様も奥様もこんなの勝手すぎます…!フレミア様をなんだと思っているのでしょうか…!」
「リアーナ、その気持ちは嬉しいわ。でも、そのような事を外で言ってはダメよ。」
小さく微笑みリアーナを見る。
「申し訳ございません…。5年前からフレミア様がどれだけあの3人に邪険に扱われていても、侯爵家の為、領民の為にと一生懸命に尽くしてこられた姿をお側で見ていたのでどうしても許せなくて…。こんな身代わりみたいな事を…!何とかラウル様とお話して円満に婚約解消はできないのでしょうか…。」
「リアーナ。侯爵家に産まれた以上、領民の為に最善を尽くす事は当たり前の事ですよ。そして、私はもしラウル様の元へ嫁ぐ事になれば、命を挺しても皇子を守る素晴らしい方との結婚を光栄に思うわ。私が憂いているのは、伯爵家やラウル様に何と詫びたら良いのか、そして私がいなくなった後の侯爵家の皆や領民がどうなってしまうのか心配なのよ…」
「フレミア様…」
そして馬車が止まり、扉が開けられた。
屋敷へ案内され客間に入る。
そこにいたのは…。
「フレミア・バラレンド侯爵令嬢。本日はわざわざお越しいただきありがとうございます。ラウル・アイロワニーです。さあ、どうぞお座りください」
窓からの光に照らされ、少し笑みを浮かべられたラウル様が、何とも心地の良い声で挨拶される。
確かに顔の半分は傷を負い、痛々しいお姿ではあるが、恐怖や嫌悪感は全く感じない。むしろ、その優しい雰囲気に胸がざわついてしまった。
見惚れそうになってしまう自分を律して、姿勢を正し挨拶をする。
「フレミア・バラレンドでございます」
カテーシーをし、目線をあげると、変わらず優しい目で私を見つめるラウル様と目が合う。
ラウル様の意図がわからない……。
侯爵家に半ば無理やり婚約を結ばれ、自分が顔に傷を負った途端婚約を解消し代わりに姉と結婚しろと言われ……
ラウル様や伯爵家が気分を害していないはずがない。
私は爵位が侯爵家の方が上であるとは言え、軽蔑の目を向けられる事を覚悟してここに来た。
しかし、そのような感情はラウル様の雰囲気や表情からは感じられない…。
挨拶をした後、2人の間にはしばしの沈黙が流れる。
その沈黙に耐えられず、ぎゅっと自分の手を握り謝罪の言葉を言おうとした時。
「申し訳ございませんでした…!」
「申し訳ありませんでしたっ…」
私とラウル様はお互いに同時に謝り合い、同時に顔を上げて目を見合わせる。
(えっ…??)
2人でキョトンとした顔で向き合うのだった。
136
あなたにおすすめの小説
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
従姉が私の元婚約者と結婚するそうですが、その日に私も結婚します。既に招待状の返事も届いているのですが、どうなっているのでしょう?
珠宮さくら
恋愛
シーグリッド・オングストレームは人生の一大イベントを目前にして、その準備におわれて忙しくしていた。
そんな時に従姉から、結婚式の招待状が届いたのだが疲れきったシーグリッドは、それを一度に理解するのが難しかった。
そんな中で、元婚約者が従姉と結婚することになったことを知って、シーグリッドだけが従姉のことを心から心配していた。
一方の従姉は、年下のシーグリッドが先に結婚するのに焦っていたようで……。
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる