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7.浮気発覚のその後
しおりを挟む次の日から、ゲイトはあからさまに私の機嫌を取るようになった。
「セレーナ?今日もありがとう!疲れていないか?ちょっとは休めよ?」
ありがとうなんて、この商会に入って1度も言われた事はありませんでした。
疲れていますよ、貴方が不倫なんてするから要らぬ仕事が増え、休めません。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。ゲイト様はお仕事は大丈夫ですか?」
「あ、あぁ大丈夫だ。その、手が空いたからセレーナを手伝おうと思ってな。」
知っていますよ。今まで、頼まれた仕事を私や従業員に押し付け続けたせいで、自分の仕事が無くなったのですよね。しないから分からないし、今更聞くなんて事はプライドの高いゲイトには無理でしょう。
「セレーナ様!この新商品の調整を終えたので確認をお願いします!」
「セレーナ様!この商品の在庫が例年に比べて急激に減っているので追加発注しても良いですか!?」
「セレーナ様!」
「セレーナ様!」
従業員の皆が跡取りのゲイトではなく、妻の私を頼る姿を見てゲイトは居心地が悪くなったのかそそくさと店を出て行くのだった…。
その後私は、サイラス工房へと足を運んだ。約束通り、サイラス工房への発注を増やす為だ。
「ごめんください。」
サイラス工房の扉を開く。
「いらっしゃいませー!あ!セレーナ様!いつもありがとうございます!」
「ひ、ひぃ!!」
笑顔で私を迎える店主と、悲鳴をあげるダリア。
「今日はどうされたのですか??」
「はい。こちらをお願いしようと思いまして…。」
「何々?えっ!!これはいつもの注文の5倍の量ですが…!!」
「はい…。こちら側がダリア様にご迷惑をおかけしましたし…。しかし、こんなにたくさんは厳しいでしょうか??他の商会からも注文入っていますよね…?これから毎月これだけ注文しても大丈夫ですか??厳しかったら他のお店に注文しますが…。」
「ん?ダリアが何かしましたか??
ま、毎月ですか!!勿論大丈夫です!!他の商会の仕事は断っても、ローランド商会の仕事を優先させますので!!ありがとうございます!さあ、決まったらこうしちゃいられねえ!仕事をしなければっ!」
店主は嬉しそうに作業に戻っていった。
ダリアは私と目を合わせぬようにして、ガタガタ震えている。
そんなダリアを横目に見て、工房から出て行くのだった。
ーーーーーーーーーー
ゲイトだが、浮気発覚後の2.3週間は、気まずくとも店には顔を出したり、自分にできる仕事を細々としたり、私のご機嫌取りを必死にしていたのだが…。
1ヶ月経つ頃にはお義父様が店にいる朝だけ店に出て、いつのまにか姿を消すようになった。
そして、また店のお金の収益が合わなくなったのだ。
(もう約束を破ったのかしら…?
1ヶ月だなんて…情けないわ…。)
夕方になって、酒と石鹸の香りを周囲に巻き散らかし、鼻歌を歌うゲイトに声をかける。
「ゲイト様?すいません。」
ビクッと肩を震わせるゲイト。
「おぉ、おつかれ!セレーナ!ど、どうしたんだ??」
「お店の帳簿なのですが…。先週の分の収益が合わなくて…。何かご存知では無いですか…??」
ゲイトの顔色が変わる。
「そ、それは俺を疑っているのか!?」
「そんな事を言っているのではありません。何かご存知では無いかと聞いただけです。」
「俺は何も知らん!!くそ!疑われて気分が悪い!出てくる!!」
荒々しく扉を閉め、ゲイトは出て行った。
(この僕がお金を盗みました!と言っているようなものじゃないの…。お義父様に相談したらお金の事は解決するだろうけれど…。もう少し泳がせるべきね。)
私はため息をつき、残った仕事を片付けるべく店に戻るのだった。
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