お付き様のおもわく

三々 こころ

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1. 短編らしい人物紹介

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「本日はさるの刻より客人との茶会があります。そしてとりの刻からは宮廷の大臣らと治安向上に関する法制会議が開かれる予定です」

 凜とした声が響く。

「ご夕食はそれからなので、茶会で何か甘いものをつまんでおいた方が良いでしょう。…聞いていますか?」

 手にある帳簿から、壮健の高官・隼樺シュンカが顔を上げた。

「聞いてるから」

 桃雪トウセツは彼にふり返らず、一歩先を大またで歩く。
 もっとも、どれだけ歩を早めたとて、元武官という経歴と超人的な股下を誇る隼樺には意味のないことだが。

「茶会には相方にあわせ、お着替えが用意されております」

 さして苦労もせず後を追う隼樺がその日の予定を続けるが、やはり桃雪は応じない。元から愛想がないのもある。それは隼樺も言えたことではない。
 が桃雪は、いつにも増して猫背を丸め、今日は上から降ってくる隼樺の話を避けているようにも見える。


「…坊っちゃま」

 その呼称に、桃雪は足を止めた。
 隼樺も止まった。

「っ」

「着きました。桃雪さまのお部屋です」

 だが、桃雪が何か言う前に隼樺が言葉を重ねる。その通り、気づけば桃雪たちは彼の部屋の前まで来ていた。
 どうぞ、と襖を開けて進められたので、どこか不機嫌そうに桃雪はそそくさ入る――入ろうとして、進路を阻まれた。
 体の良い笑みを浮かべた隼樺が桃雪に口を寄せた。

「それから」

 隼樺の息が耳にかかる。


 桃雪は、囁かれた側の上体があわ立つような感覚に襲われ、後ろ手に隼樺を払おうとした。が、その手は容易く彼にとられてしまう。

 突然、桃雪はビクッとした。
 定規のように、何かが背中を縦になぞったからだ。


「…猫背はいけません」


 その声はどこか楽しそうで、嗜虐的な色を含んでいた。

 触るな、と思わず桃雪が身をひるがえすとしかし、隼樺はずいぶん遠くまで逃げていた。

「では、お呼びするまでゆっくりしていて下さい」


 そう言い残して、隼樺は渡り廊下を見えなくなる。
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