R18 短編集

上島治麻

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体液を漏らす窪みを指先で埋められ、びくんと下腹部が跳ね上がってしまう。

「っ········!·····す、い·····、なに、やって··············」
「んー?イイとこでやめさせちゃって可哀想なことになってるからさ、ここ。俺が手伝ってあげるよ」
「っや·······、はな、せ··········っ·····!」
「·····ね、そんなこと言ってひくつかせてさ。本当は気持ちいいんでしょ、綾人くん」

 はだけているシャツを捲られ、つんっと上を向いている尖りを指先でくにくにとつままれると、それだけのことで反り勃った先端がびくっと揺れてしまう。
 そんな俺の反応を見る翠はもしかしてさ、と呟きながら俺の目を捉えると、にやっと口角を上げるのだ。

「俺と仁くん、顔一緒じゃん。仁くんにされてると思って、興奮してる?」
「ーーな·············っ!」

 何を言っているんだ、こいつは。確かに周りから見たらお前らは瓜二つかもしれない。
 だが、幼少期から共に過ごしている俺からすれば、翠と仁は見た目から何まで全く違う。
 ーーそう、頭では、分かっている。分かっているのに。

「っぁ········ッ、やだ········、すい········っ、ぁ··········ッ」
「いいよ、綾人くん。仁くんとヤる前の練習だと思ってさ、俺で気持ちよくなっちゃいなよ」

 もしもこういうことをするなら、俺は仁がいいと思っていたんだ。誰でもよかったわけではない。他の誰でもない、仁なら、仁だからいいと、思っていたのに。
 ーーそれなのに翠の顔が、一瞬だけ仁と重なってしまった。

「ーーぁ···、ぁぁ··········ッッ」

 曲げられる指がぐちぐちと奥底の凝りを押し上げ、胸の先を濡れた唇で甘く吸われる。すると、びくびくと揺れる先端から白濁の液が溢れ、翠の制服に弾いてしまうのだ。
 それを指で拭った翠は指先を舐めとると、俺に向かってにっこりと微笑んだ。

「ちゃんとイけたね、綾人くん。ま、今回は仁くんには黙っててあげるよ」
「ーーこれから、よろしくね」

 ーー黙ってて欲しければ俺の言うことを聞け。
 笑っている翠の表情からは、そう言っているように聞こえた。
 目の前が真っ白になった俺は、翠と目が合ったまましばらくその場を動くことができなかった。

「ーー翠、綾はいたか?」

 一階から俺達がいる二階へと呼びかける仁の声が扉の奥から部屋に響くと、肩がびくっと跳ね上がった。
 すると、翠はいきなり飛んできた仁の声に驚くこともなく、平然と返事をするのだ。

「うん、いたよ。鍵開けっぱで制服着たまま寝ちゃってたんだって。着替えてから下りるってさ」

 そんな翠に、仁は違和感を感じることもなくそうか、と返事をすると「綾」と、俺に呼びかけた。
 普段なら仁に名を呼んでもらえるだけで嬉しいのに、翠に散々体を弄られてしまった俺は、仁に対する罪悪感から上手く返事ができずに、言葉に詰まってしまった。

「·····綾、まだ眠いのか?下で待ってるから早く降りてこいよ」
「あ·····、ああ。分かった·····」

 仁への罪悪感と同時に、もしもこのまま仁が二階へ来たらどうしようかと不安だったが、一階で待つという仁の言葉に安心した俺はひとまずほっと息をついた。
 すると翠はもう、と頬を膨らませるのだ。

「仁くん、タイミング良すぎでしょ。俺もうちょっと楽しみたかったのに」

 ぶすくれながらも仕方なそうにティッシュで俺の精液が弾いた自らの制服を拭くと、
「仁くんも来ちゃったし、とりあえず今日はここまでだね」
 と、翠は立ち上がった。

 仁が来たおかげでこの状況に終わりが来たことにはほっとした。が、
 ーーーちょっと待て。"今日は"って、どういうことだ。

 動揺する俺を見下ろす翠に「綾人くん」と顎を捉えられ、顔をくいっと上に向かせられてしまう。
 「なにすんだよ」と言う前に、突然目の前が黒で覆われてしまう。リップ音がちゅっと控えめに鳴ると、翠はすっと顔を離した。

「え··········」

 突然のことで状況を理解できずにいる俺と視線が重なると、翠はまた遊ぼうねと意地悪い笑みを浮かべた。
 呆然としている俺を見下ろしながらくすっと目を細め、翠 はそのまま部屋を後にした。

 ーーキス、初めてだったのに。

 まさか唇まで奪われるなんて最悪だと思いながらも、感覚が残っている唇を指先でなぞると、胸がとくんと鳴った。その胸の鼓動に違和感を感じていると、綾人くーん!と、階段の下から呼ぶ声が部屋に響いた。

「着替えたー?早くゲームしようよ」

 まるで何事もなかったかのように一階から呼びかけてくる翠にイラつきを覚えつつも、今行くからと返事をした俺はすぐに着替え、翠と仁の待つ一階へと階段をかけ降りた。

 ーーこうして、翠の気分であらゆるところへ呼び出されては性欲のはけ口へとなる、最悪な日々が幕を開けることとなった。

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