かみうみ異譚

はち

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かみうみのそのあと3

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 寝台の周りに垂れた薄布が翻る。ふわりと空気が動き、艶やかな白い髪が揺れる。朝日の眩さの金色が、柔らかくマガツヒを映した。

「マガツヒ」

 美しい声が、優しく名を呼んでくれる。
 甘く澄んだ声に、胸にあった寂しさが溶けて無くなっていく。

「イザナギさま」
「あぁ、嬉しいな。きみがわたしを呼んでくれるなんて」

 イザナギは眩い金色の目を細めた。寝台の上、白い腕がマガツヒを抱き寄せる。寝台に腰掛けたイザナギの膝の上で温かな腕の中に閉じ込められる。

「髪を結ってもらったんだね」
「はい」

 髪の流れに沿って、イザナギの手のひらが頭を撫でていく。その手は優しく柔らかく、後頭部から肩、胸、腹と滑り降りていく。

「よく似合っているよ」
「イザナギさま」
「ねえマガツヒ、きみの中に、入ってもいい?」

 それがどういうことか、マガツヒはもう知っている。胎の中から快感を覚えさせられ、身体はすっかり虜になっていた。

「はい」

 身体中が期待に震え、あちこちが飢えを訴えるように疼く。胎の中が潤む感覚に、マガツヒは喉を鳴らした。

「たくさん、よくしてあげる」

 イザナギの朝焼け色の唇が、額に触れた。
 マガツヒが纏っていた薄布は取り払われて、イザナギも纏っていたものを床に落とした。
 柔らかく滑らかな寝台に寝かされ、目の前はまたイザナギの眩い白で埋め尽くされる。
 垂れたイザナギの白い髪が頬をくすぐる。
 朝焼け色の唇が夜色の唇を食む。濡れた音を立てて唇を吸われる。

「っあ、イザナギさま」

 身体は勝手に跳ね、震え、ちっともいうことを聞かない。思うようにはならないのがもどかしい。
 身体の芯が熱い。
 まだ馴染みきらない、知らない身体の変化に、マガツヒは混乱していた。
 臍の下、イザナギと同じような形の、イザナギよりも小ぶりなものが、臍の下で震えていた。

「マガツヒ、気持ちいいね」
「あ……」

 美しい指が、天を仰ぎ震えるそれを撫でる。それだけで、身体は熱くなり大袈裟に跳ねた。

「ひ、う」

 知らない感覚。まだ身体が馴染んでいないのか、少しの刺激にも大きな反応をしてしまう。
 こわい。
 こわいのに、気持ちいい。
 どうしたらいいかわからず、かちかちと奥歯が鳴った。

「イザナギさま」
「震えているね、マガツヒ。こわい?」
「っ、こわ、い……」

 マガツヒはイザナギを見上げ、縋り付く。金色の双眸は涙で濡れていた。

「これは?」

 イザナギの手が円を描くように腹を撫でる。

「あ、う」

 マガツヒはうっとりと表情を蕩けさせた。

「……きもちいい」

 触れられるのは気持ちよくて好きだった。マガツヒの平らな腹を、イザナギの指先がくすぐるように撫でる。

「いいこだね」

 つ、と根本から先端へ、白い指が滑る。

「あう」

 マガツヒの痩せた身体がぶるりと大きく震え、臍の下で震えるものから、白くとろりとしたものが飛び出した。
 黒い肌には目立つ、白く濁った粘つくそれを、マガツヒは不思議そうに震える指で掬った。

「なに、これ」
「わたしがマガツヒの胎に出したのと同じものだよ」
「イザナギさまと、おなじ……」
「そうだよ、わたしと同じ」

 黒い指先を濡らす白い粘液を、イザナギは美しい唇に含んで、優しく吸い上げた。
 マガツヒがか細く啼く。
 唇が離れ、湿った夜色の指先を、白い指先が優しく揉む。

「君の魂が、器に馴染んだ証だよ」

 あかし。その響きはひどく甘く、マガツヒの胸に染み込んでいった。

「あ、イザナギさま」

 美しい唇が、そこから覗くもっと赤い舌が、身体中に触れる。
 胸に二つ、ごく小さな窪みがあるのをイザナギが見つけた。左右に一つずつ、本来なら小さな肉粒があるはずのそこには、小さな裂け目があるばかりだった。

「あぁ、マガツヒのここは隠れてしまっているね」

 イザナギが指先で裂け目を撫でる。

「ん、あ……?」

 イザナギの白い指が左胸の小さな裂け目を優しく摘む。

「あ、ぅ」

 そのままくにくにと優しく揉まれると、くすぐったいような感覚とともに慎ましい肉粒が顔を出した。

「ふふ、出てきた。恥ずかしがりだね」

 左の次は右。片方ずつ丹念に愛撫され、小さな肉粒が震える。
 胸にふたつ生まれた小さな肉の粒を、一つずつ交互に唇に挟まれ愛でられる。柔らかな弾力の唇に優しく嬲られ、勝手に身体が撓った。

「ひ、ぅ」

 ピリピリと背を何かが這う。
 こわい。気持ちいい。

「イザナギさま、また」

 こわい。
 おそるおそる手を伸ばし、白い腕に触れた。

「怖くないよ、マガツヒ」

 身体を震わせるマガツヒを宥めるように、イザナギは唇と舌で夜色の肌を撫でていく。

「う……」

 意識を灼くような、真っ白く熱い快感をマガツヒは恐れていた。気持ちいいことはわかるのに、自我まで灼き尽くすようなそれが何かわからず、怖かった。

「これが、肉体で味わう快楽だよ」
「けら、く」

 もつれる舌でおそるおそる口にすると、イザナギは笑った。

「そう。もっとたくさん、君に教えてあげる」

 また美しい唇が自分に触れる。
 もう何度も触れられているのに、それだけでくらくらする。寝台に横たえられているのに、視界が揺れるようだった。
 イザナギはずっと、優しく触れて、気持ちいいことを教えてくれた。
 身体は貪欲に、もっと欲しいと喚く。

「イザナギさま」

 見上げたイザナギの金の瞳は、すっかり欲情に濡れてぎらぎらと輝いていた。

「どうしたい? マガツヒ」

 荒い興奮を隠しもしないのにイザナギの声は甘く澄んでいて、それにまたマガツヒの身体は昂り、熱を上げる。

「……ほしい」

 マガツヒはざらついた声を絞り出し、素直な胸の内を言葉にする。
 イザナギはマガツヒを映す金色の目を嬉しそうに細めた。

「いいよ。たくさん、よくなって」

 イザナギが身体を起こし、マガツヒはくったりと投げ出した脚を拡げられる。頭を擡げ震える肉茎も、尻肉の間で恥ずかしげにひくつく窄まりも、イザナギの前に晒された。

「マガツヒ、入れるよ」

 イザナギの逞しい熱の塊はひくつき、先端から透明な雫を溢している。
 マガツヒの目はそれに釘付けになる。これから胎に受け入れるイザナギの猛りを、マガツヒは期待と恐れの入り混じった顔で見つめた。

「マガツヒ」
「は、ぅ」

 後孔に先端が押し付けられる。
 窄まりには胎の中から溢れたぬめりが滲んでいて、イザナギの猛りの先端が擦れるたびに卑猥に鳴った。

「あ……」

 小さな窄まりを押し広げ、皺を伸ばして、張り出した部分が収まる。その先はずるずると潜り込み、イザナギの逞しい肉槍が、双丘の間の窄まりに深々と埋まる。
 熱い塊が胎の中に収まった。苦しさと幸福感の混ざった充足感が全身を満たしていく。

「あ、はいっ、て、ぅ」

 身体が繋がって、そこから快楽が生まれる。

「マガツヒ、動くよ」

 イザナギがゆったりと腰を引く。ずるずると抜ける直前まで引かれ、そのまま、奥へと突き入れられる。

「っあ」
「マガツヒ、君の中は気持ちがいいね」

 ゆったりとした動きは、すぐに荒い抽挿へと変わっていく。

「っ、ひ」
「マガツヒ、まだ奥があるだろう?」

 イザナギの甘い声がとろりと吹き込まれる。

「お、く?」
「そうだよ、ほら、ここ」

 臍のあたりを撫でられ、マガツヒ意識はそこに集まる。胎の奥、イザナギの先端に吸い付くその場所。捏ねられる苦しさよりも、快感が優ってくる。

「あ、ひ」

 ぐぼ、と腹の奥で濁った音がした。熱い塊が、腹の奥をこじ開ける。

「ぃ……ッ!」

 マガツヒは突然の強い快感に目を見開く。金の瞳を潤ませ、引き攣った喉で短く掠れた悲鳴を上げる。
 奥だと思っていた場所からさらに深く、イザナギの肉槍が潜り込む。
 胎が破れるのではないかと思うほど、柔い奥を突かれ、臍のあたりが歪に膨らむ。
 イザナギはその膨らみを撫で、目を細めた。

「マガツヒ、見て、君の中に、ここまで入っているよ」
「あ……う」

 甘えるように腕を伸ばせば、イザナギはそれを首へと導く。首にしがみつくマガツヒの耳元へ、甘く澄んだ声が吹き込まれる。

「マガツヒ、君の中を、私で埋め尽くしたい」

 熱のこもった吐息とともに、イザナギの甘い声が耳をくすぐる。

「っあ、ぁ、だして、イザナギさま、だして」

 胎の中に、また、灼熱が奔流となって放たれる。柔らかな内側を満たす熱いもの。イザナギの逞しい肉槍が、何度も脈打つのがわかる。

「イザナギさま」

 溢れたのは、涙と、悦びだった。
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