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再会するということ
第6話
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「引越しの挨拶をしようと思って」
威圧的なまでのその態度と、エレベータを背に囲うように日葵を上から見下ろしていた壮一の意外な言葉に、日葵はあ然として壮一をみあげた。
「え?引越し?」
少し間抜けな声が出た気がして、日葵は慌てて視線を逸らす。
「ああ、お前の隣の部屋」
サラリと表情を変えずに言った壮一に、今度こそ日葵は大きな声を上げた。
「うそでしょ!ありえない!」
(そうよ、ありえない。なんで今更この人に、私の生活を乱されないといけないの?)
苛立ちとざわざわとあの8年前の気持ちがよみがえり、日葵はきつく唇を噛んだ。
「ありえないか……」
その言葉に少しだけ表情を変えた壮一に対し、日葵は小さく息を吸い込むと、壮一を睨みつけた。
「隣なんて迷惑。もう私はあの頃の私じゃないし、清水チーフがいなくてもやっていけます。だから私にもう構わないで」
一気にそれだけを言うと、日葵はするりと壮一の腕をすり抜け自分の部屋へと向かった。
「日葵」
後ろで聞こえたその声に、ドクンと胸が音を立てる。
その事を悟られないよう、日葵は振り返ることなく自分の家のドアの前で動きを止めた。
「お前あの部長と付き合ってるの?」
「あなたには関係ないでしょ?」
抑揚なく言った日葵の言葉に、壮一はすぐに返事をかえすことはなかった。
その間を無言と受け取った日葵は、鍵を開けるとするりと体をドアの中へといれた。
「関係……ないな」
そう聞こえた壮一の言葉に、驚くほど胸が痛んだことを、無理にごまかすように日葵はドアを閉めた。
関係ないと自分で言った言葉だったのに、壮一の口から発せられたその言葉がグルグルと頭を廻る。
そんな自分を叱咤しながら、パッと着替えてキッチンへ向かう。
「何があったかな……」
いろいろな事がありすぎて、なぜか落ち着かない日葵は一心不乱に野菜を切っていた。
「嫌だ……。こんなにどうするのよ。私」
まな板の上の山盛りの野菜にため息をつくと、日葵はその野菜を鍋に入れる。
(もう面倒だからスープにでもしちゃおう)
そう決めると、コンソメとトマトで簡単に味をつけて日葵はその鍋の中をジッと見つめた。
壮一さえ帰ってこなければ、こんな気持ちを味わうことなどなかったはずだ。
(どうして同じ会社に入ったのだろう?壮一なら自分の父親の会社に入ればいいはずよね)
そんな事を思っても、事実として毎日顔を会わさないといけない日々が憂鬱でしかたなかった。
よくも悪くも生まれたときから壮一は、日葵にとって影響を与え続けている。
これからもそんな風になるのは、日葵としてはもう避けたかった。
そんな時、いきなりなったインターホンに日葵は動きを止めた。
(こんな時間にだれ?)
そんなことを思いつつ、玄関のドアを開けた。
「まずは誰か確認したら?」
無機質に響いた壮一の声に、日葵は驚いてドアを閉めた。
しかし、その行為は虚しく、壮一の足によって阻まれる。
「痛った……」
呟くように聞こえた声に、日葵は慌てて扉を開ける。
「ごめん!大丈夫……?」
(しまった……)
そう思った時にはすでに遅く、壮一はもう体を中へと滑り込ませる。
「なに?」
ぶっきらぼうに言った日葵に、壮一は少し不穏な雰囲気を纏い、日葵に視線を向ける。
「その言い方ひどいな。久しぶりに会ったのに」
壮一の言葉に、今度は日葵が壮一を睨みつける。
「今更でしょ?何も言わずにいなくなったくせに」
日葵の言葉に、壮一は驚いたような表情を見せたが、どうしてそんな表情をしたのか全くわらかなかった。
威圧的なまでのその態度と、エレベータを背に囲うように日葵を上から見下ろしていた壮一の意外な言葉に、日葵はあ然として壮一をみあげた。
「え?引越し?」
少し間抜けな声が出た気がして、日葵は慌てて視線を逸らす。
「ああ、お前の隣の部屋」
サラリと表情を変えずに言った壮一に、今度こそ日葵は大きな声を上げた。
「うそでしょ!ありえない!」
(そうよ、ありえない。なんで今更この人に、私の生活を乱されないといけないの?)
苛立ちとざわざわとあの8年前の気持ちがよみがえり、日葵はきつく唇を噛んだ。
「ありえないか……」
その言葉に少しだけ表情を変えた壮一に対し、日葵は小さく息を吸い込むと、壮一を睨みつけた。
「隣なんて迷惑。もう私はあの頃の私じゃないし、清水チーフがいなくてもやっていけます。だから私にもう構わないで」
一気にそれだけを言うと、日葵はするりと壮一の腕をすり抜け自分の部屋へと向かった。
「日葵」
後ろで聞こえたその声に、ドクンと胸が音を立てる。
その事を悟られないよう、日葵は振り返ることなく自分の家のドアの前で動きを止めた。
「お前あの部長と付き合ってるの?」
「あなたには関係ないでしょ?」
抑揚なく言った日葵の言葉に、壮一はすぐに返事をかえすことはなかった。
その間を無言と受け取った日葵は、鍵を開けるとするりと体をドアの中へといれた。
「関係……ないな」
そう聞こえた壮一の言葉に、驚くほど胸が痛んだことを、無理にごまかすように日葵はドアを閉めた。
関係ないと自分で言った言葉だったのに、壮一の口から発せられたその言葉がグルグルと頭を廻る。
そんな自分を叱咤しながら、パッと着替えてキッチンへ向かう。
「何があったかな……」
いろいろな事がありすぎて、なぜか落ち着かない日葵は一心不乱に野菜を切っていた。
「嫌だ……。こんなにどうするのよ。私」
まな板の上の山盛りの野菜にため息をつくと、日葵はその野菜を鍋に入れる。
(もう面倒だからスープにでもしちゃおう)
そう決めると、コンソメとトマトで簡単に味をつけて日葵はその鍋の中をジッと見つめた。
壮一さえ帰ってこなければ、こんな気持ちを味わうことなどなかったはずだ。
(どうして同じ会社に入ったのだろう?壮一なら自分の父親の会社に入ればいいはずよね)
そんな事を思っても、事実として毎日顔を会わさないといけない日々が憂鬱でしかたなかった。
よくも悪くも生まれたときから壮一は、日葵にとって影響を与え続けている。
これからもそんな風になるのは、日葵としてはもう避けたかった。
そんな時、いきなりなったインターホンに日葵は動きを止めた。
(こんな時間にだれ?)
そんなことを思いつつ、玄関のドアを開けた。
「まずは誰か確認したら?」
無機質に響いた壮一の声に、日葵は驚いてドアを閉めた。
しかし、その行為は虚しく、壮一の足によって阻まれる。
「痛った……」
呟くように聞こえた声に、日葵は慌てて扉を開ける。
「ごめん!大丈夫……?」
(しまった……)
そう思った時にはすでに遅く、壮一はもう体を中へと滑り込ませる。
「なに?」
ぶっきらぼうに言った日葵に、壮一は少し不穏な雰囲気を纏い、日葵に視線を向ける。
「その言い方ひどいな。久しぶりに会ったのに」
壮一の言葉に、今度は日葵が壮一を睨みつける。
「今更でしょ?何も言わずにいなくなったくせに」
日葵の言葉に、壮一は驚いたような表情を見せたが、どうしてそんな表情をしたのか全くわらかなかった。
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