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リオン編   転機

リオン編   転機2

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 ラフレイムはもう、すぐそこだ。
  だけど僕らはそのまま進まず、手前の町で物資補給と骨休めをすることになった。

  ただその町の建物は、前に寄ったシリウス国よりも全体的に薄汚れているように見える。
  道行く人たちの目つきも悪い。

  兄様は用心しながらも大きめの店を選び、そこで食事を取ることとなった。
  でもそこの人たちは、ラフレイムに行くのだけは止すようにと、僕たちに言った。

  理由は『危ないから』
  赤の他人なのにたいそう心配して下さって、何だか申し訳ないぐらいだ。

  しかし僕らが断ると、従業員たちは豹変した。

  こんなふうに善人が悪人に変わる瞬間を、僕は何度も見てきた。
  それなのに、今回もやはりビックリしてしまう。

  あんなに親切だったのに…………やっぱり豹変しちゃうんだ。

 「そんなことだろうと思ったわ。さ、エル、リオン、皆殺しにしちゃって?」

  アリシアが、全くダメージを受けないままの様子で明るく言う。
  むしろ楽しそうである。

  なんでこんな目に合って、しょんぼりしないんだろう?
  そのことが不思議で仕方がない。

  繊細で、気が小さくて、善良な僕とは大違いだよ。

  いつかこの女を殺すことが出来たら解体して、神経線維を調べてみたい。
  きっと普通の人間の構造とは異なるに違いないから。

  そういう高尚な学術的思考に浸りながら眺めていたら、

 「こいつらはラフレイムに行く前に、私たちを捕まえたいのよ。
  美人の私に美少年のあんたら。
  さぞかし高く売れるでしょうね~?」

  アリシアが、相も変わらず楽しそうに言う。

  ……なるほど。前と全く同じパターンか。

  さすが大悪党のアリシア。
  善良な僕には全くわからなかったが、同類の嗅覚で鋭く察したようだ。

 「わかっているなら大人しくしろ!!
  傷がつくと売値が下がる!!」

  物凄く勝手な事を叫ぶ大人たちに向かって、僕はエラジーを抜こうとした。

  どうせこいつらも獣。人間扱いなどしてやるつもりはない。
  しかし兄様は僕を止めた。

  どうやらそいつらに、情けをかけてやりたいようだった。
  でも獣どもが、素直に改心などするわけがない。

  その予想は大当たりで、奴らは『兄様の母様』を侮辱したあげく、そのまま兄様に成敗された。

  馬鹿である。本当に馬鹿である。
  おとなしく改心すれば、お優しい兄様は許して下さっただろうに。

 「あら~? 思った以上の腕ねぇ♪」

  少し後ろに下がっていたアリシアが、その場にそぐわない明るさではしゃいでいる。自分では手も下さずに、いい気なものだ。

  それだけでも腹立たしいのに、

 「こういう奴が隠してるお金の場所なんか、ワンパターンだからすぐわかるのよねっ!」

  なんて言いながら、ご機嫌で店の中を物色し始めた。

  恥ずかしい……。
  本当に恥ずかしい。

  何だか『ドロボウ』にでもなったような複雑な気分だ。

  目的のためとはいえ、こんな連れが居るなんて……僕に『善なる教育』をしてくださった清らかなクロスⅦがご覧になったら卒倒なさるだろう。

 「あら?」

  大きな戸棚を開けたアリシアが、怪訝そうに呟く。
  戸棚の中ではいかにも悪党といった、ごつい男が頭を抱えたままガタガタと震えていた。

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