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ルルーシェは、愚かではない。
ラカーシェとトワイは合わないのだろうと察してはいる。
しかしルルーシェは努力しているのだ。
少しくらい、ルルーシェの努力を報ってくれてもいいのでは、と思わずにはいられない。
ルルーシェは、アページェントの所有する敷地の広さに呆れずにはいられない。
東京ドーム何個分あるのかわからないほど広い庭は勿論隅々まで整えられ、四季関係なく目を楽しませる。
薔薇はいつも咲いていて、ルルーシェの好きな花なのでとても嬉しいなぁと眺めている。
庭のその先には広大な森が茂っている。
見える限り全てアページェントの私有だそうだ。
森の中には湖も花畑も滝もある。
普通に大きく、私有とは思えない。
ルルーシェは街に出かけると言わない代わりに、よく森に出かけると言う。
人工物よりも自然物の方が安らげるのだ。
匂いもいい香りだし。
特に様々な花が入り混じる花畑がお気に入りで、他の所に行っても最後に必ず行く。
ルルーシェは、家族仲良し大作戦をそろそろ本気始動させたいのだ。
トワイはルルーシェがこの前買ったエッセンシャルオイルとキャンドルをプレゼントした時も、当たり前に無表情。
淡々とした様子で、瞳も揺らぎさえしなかった。
三人で顔を合わせる唯一の晩餐時に会話を取り持っても、キャッチボールが一回も続かずに終わる。
流石にルルーシェは笑顔が引き攣りそうだ。
(私は頑張っているのに!なんで!こっちの気も知らないで!普通に!)
心が折れる前に、とりあえず作戦を実行しまくることにした。
家族のきゃっきゃうふふはピクニックだろうというのは決して偏見ではないはずだ。
食堂へと向かう中、今日ピクニックに誘おうと決意して拳を小さく握る。
「お父様、トワイ、いつでもいいから一緒に森にピクニックに行かない?」
「「ピクニック」」
そう呟くと、お互いをちらりと見合って黙った。
「駄目?」
「駄目なわけないよ。明日行こうか」
「トワイも行くわよね?」
「……はい」
「やった!」
返事までの間は聞かなかったことにした。
ルルーシェはもう、多少強引に行かないとこの関係は変わらないと思っている。
きゃっきゃと楽しむのではなくとも、この美しい湖を見たら目を輝かせるくらいはするだろうと思っていたルルーシェは甘かったのだろうか。
いや、トワイが強敵なだけだと信じたい。
目を輝かせるトワイの手を引っ張り、湖の端で足を止め、靴を脱ぎ、足をつけ、朗らかにとはいかなくても、会話のキャッチボールをしようと思って来た。
しかし、トワイの手を引っ張ることすらできないという現実。
翌日の朝食後、さて行くかとなった瞬間にルルーシェはラカーシェに抱えられる。
片腕でだ。
トワイは無表情でルルーシェを抱くラカーシェの横を歩いてついて来た。
この時点で既にルルーシェの計画と違う。
結局一回も降ろしてもらえなかったルルーシェは、森半ばで抵抗することを止め、甘えるに徹した。
ラカーシェのことは大好きなので、本当なら抱っこは嬉しいし、大喜びだからだ。
(何気にお父様、筋肉あるのよね。そうそう、細マッチョ、と言うのだったかしら……?)
一度も腕を持ち替えていないラカーシェの筋肉は凄いなぁと堪能する。
第二の誤算は、トワイの表情が湖を眺めても全く変わらなかったこと。
(少しくらい感動してもいいんじゃないの)
トワイが喜んでくれるんじゃないかと期待を込めて来たルルーシェとしては不満たらたらだ。
「お父様、トワイ。足を湖につけましょう?」
絵柄的には大変良かった。
銀の髪が光を弾いてラカーシェは本当にキラキラと輝いていた。
黒髪のトワイは無表情と相まって、森と湖の妖精のようだった。
そして此処に、ルルーシェも加わっているのだろう。
ルルーシェは自身を過大評価するつもりはないが、過小評価するつもりもない。
この場面を切り取り絵にしたのなら、とてもよく売れると断言する。
しかし、いかせんラカーシェとトワイの間の空気が重い。
その場に居る者の意見としては、此処から逃げ出したい、しか浮かばない。
「気持ちいいな、ルルーシェ」
「ね、お父様。トワイも気持ちいいかしら?」
「はい」
「「「…………」」」
ルルーシェまでもが黙ってしまうとそこにあるのは、葉の掠れる音、動物の鳴き声、風のよぎる音だけ。
なんと冷え切った関係か。
風が消えて凪いでいる水面のように、ルルーシェの心も凪いだらいいのに。
今のルルーシェはキレる寸前だ。
「お父様、そろそろ息子の存在に慣れたでしょう?トワイ、そろそろ私達が家族なのだと受け入れられるでしょう?」
急になんだと伺う視線を二対感じながらも、ルルーシェは気にせずゆったりと続ける。
「あら、もう会話ができるわね?」
ルルーシェは小首を傾げる。
ルルーシェは意識して片方の口角だけを持ち上げる。
「私、会話を続けられるようになるまでお喋りは必要最低限にするわ。勿論、ピクニックの間だけではないの。それ以降も、よ。二人が条件を達成するまで」
大丈夫でしょう、と口を動かす。
もう声には出さない。
これも不必要なお喋りだとルルーシェは判断したから。
ラカーシェとトワイは合わないのだろうと察してはいる。
しかしルルーシェは努力しているのだ。
少しくらい、ルルーシェの努力を報ってくれてもいいのでは、と思わずにはいられない。
ルルーシェは、アページェントの所有する敷地の広さに呆れずにはいられない。
東京ドーム何個分あるのかわからないほど広い庭は勿論隅々まで整えられ、四季関係なく目を楽しませる。
薔薇はいつも咲いていて、ルルーシェの好きな花なのでとても嬉しいなぁと眺めている。
庭のその先には広大な森が茂っている。
見える限り全てアページェントの私有だそうだ。
森の中には湖も花畑も滝もある。
普通に大きく、私有とは思えない。
ルルーシェは街に出かけると言わない代わりに、よく森に出かけると言う。
人工物よりも自然物の方が安らげるのだ。
匂いもいい香りだし。
特に様々な花が入り混じる花畑がお気に入りで、他の所に行っても最後に必ず行く。
ルルーシェは、家族仲良し大作戦をそろそろ本気始動させたいのだ。
トワイはルルーシェがこの前買ったエッセンシャルオイルとキャンドルをプレゼントした時も、当たり前に無表情。
淡々とした様子で、瞳も揺らぎさえしなかった。
三人で顔を合わせる唯一の晩餐時に会話を取り持っても、キャッチボールが一回も続かずに終わる。
流石にルルーシェは笑顔が引き攣りそうだ。
(私は頑張っているのに!なんで!こっちの気も知らないで!普通に!)
心が折れる前に、とりあえず作戦を実行しまくることにした。
家族のきゃっきゃうふふはピクニックだろうというのは決して偏見ではないはずだ。
食堂へと向かう中、今日ピクニックに誘おうと決意して拳を小さく握る。
「お父様、トワイ、いつでもいいから一緒に森にピクニックに行かない?」
「「ピクニック」」
そう呟くと、お互いをちらりと見合って黙った。
「駄目?」
「駄目なわけないよ。明日行こうか」
「トワイも行くわよね?」
「……はい」
「やった!」
返事までの間は聞かなかったことにした。
ルルーシェはもう、多少強引に行かないとこの関係は変わらないと思っている。
きゃっきゃと楽しむのではなくとも、この美しい湖を見たら目を輝かせるくらいはするだろうと思っていたルルーシェは甘かったのだろうか。
いや、トワイが強敵なだけだと信じたい。
目を輝かせるトワイの手を引っ張り、湖の端で足を止め、靴を脱ぎ、足をつけ、朗らかにとはいかなくても、会話のキャッチボールをしようと思って来た。
しかし、トワイの手を引っ張ることすらできないという現実。
翌日の朝食後、さて行くかとなった瞬間にルルーシェはラカーシェに抱えられる。
片腕でだ。
トワイは無表情でルルーシェを抱くラカーシェの横を歩いてついて来た。
この時点で既にルルーシェの計画と違う。
結局一回も降ろしてもらえなかったルルーシェは、森半ばで抵抗することを止め、甘えるに徹した。
ラカーシェのことは大好きなので、本当なら抱っこは嬉しいし、大喜びだからだ。
(何気にお父様、筋肉あるのよね。そうそう、細マッチョ、と言うのだったかしら……?)
一度も腕を持ち替えていないラカーシェの筋肉は凄いなぁと堪能する。
第二の誤算は、トワイの表情が湖を眺めても全く変わらなかったこと。
(少しくらい感動してもいいんじゃないの)
トワイが喜んでくれるんじゃないかと期待を込めて来たルルーシェとしては不満たらたらだ。
「お父様、トワイ。足を湖につけましょう?」
絵柄的には大変良かった。
銀の髪が光を弾いてラカーシェは本当にキラキラと輝いていた。
黒髪のトワイは無表情と相まって、森と湖の妖精のようだった。
そして此処に、ルルーシェも加わっているのだろう。
ルルーシェは自身を過大評価するつもりはないが、過小評価するつもりもない。
この場面を切り取り絵にしたのなら、とてもよく売れると断言する。
しかし、いかせんラカーシェとトワイの間の空気が重い。
その場に居る者の意見としては、此処から逃げ出したい、しか浮かばない。
「気持ちいいな、ルルーシェ」
「ね、お父様。トワイも気持ちいいかしら?」
「はい」
「「「…………」」」
ルルーシェまでもが黙ってしまうとそこにあるのは、葉の掠れる音、動物の鳴き声、風のよぎる音だけ。
なんと冷え切った関係か。
風が消えて凪いでいる水面のように、ルルーシェの心も凪いだらいいのに。
今のルルーシェはキレる寸前だ。
「お父様、そろそろ息子の存在に慣れたでしょう?トワイ、そろそろ私達が家族なのだと受け入れられるでしょう?」
急になんだと伺う視線を二対感じながらも、ルルーシェは気にせずゆったりと続ける。
「あら、もう会話ができるわね?」
ルルーシェは小首を傾げる。
ルルーシェは意識して片方の口角だけを持ち上げる。
「私、会話を続けられるようになるまでお喋りは必要最低限にするわ。勿論、ピクニックの間だけではないの。それ以降も、よ。二人が条件を達成するまで」
大丈夫でしょう、と口を動かす。
もう声には出さない。
これも不必要なお喋りだとルルーシェは判断したから。
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