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ただじゃおかない
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「…………鳥がいるな」
「いますね」
「ああ」
「「…………」」
困り果てて黙り込むラカーシェとトワイ。
そんな二人を焦ったく見守るルルーシェ。
(あれはどういう鳥で~、とか続ければいいのに!トワイも尋ねればいいのに!もう!焦ったい!!)
無関心を装いつつも、心の中では思いっきり声を荒げていた。
「……風が心地いいな」
「…………。……無風です」
「…………。そうか」
「「………………」」
困り果てて黙り込むラカーシェとトワイ。
そんな二人を焦ったく見守るルルーシェ。
(何度目!?)
溜息を吐きたくなるが、二人の邪魔をしないためにぐっと堪える。
(お父様、私とは会話続くでしょう!何故それがトワイに発揮されないの!?トワイ、もう少し会話を続けようと努力なさい!)
ルルーシェは呆れ果ててしまった。
しかし尿意は自然現象なのでやってくる。
「お父様、トワイ。小屋に行ってくるわ」
「気をつけてね」
「はーい」
ルルーシェはわざと少し冷たく言う。
許してませんよアピールだ。
小屋が湖の側からはちょうど木々で隠れる位置に建っている。
湖は屋敷からそんなに離れていないため、寝泊まりする用ではない。
簡易な作業小屋だ。
しかしトイレも浴槽も付いており、必要最低限は守られている。
垂れ流すことにはならないということだ。
初めて湖の存在を知り、小屋のことを聞いて時一番最初に感じたのは安堵だった。
ルルーシェはトイレ完備な小屋に感謝しながら扉を開ける。
すっきりしたルルーシェは再び湖へと向かう。
ルルーシェが木の間から出た場所は二人からは離れていて、そこに行くのに湖の側を歩いて行く。
ーードン。
脚を押される感覚。
目の前に迫る水面。
ルルーシェは呆然とし、なされるがままに湖へと身を落とす。
人間、完全に予想外な出来事には咄嗟の反応さえできないのだと、ルルーシェは己の身で思い知る。
(苦しい、苦しい、苦しい苦しい苦しい)
我慢できなくなって、ルルーシェはガポリと泡を吐き出す。
それをぼんやりと眺めて、手を伸ばす。
その手は何も掴まない。
手は行き場を失って、それでも縋るように伸ばしたまま。
(なんにも、気配なんて感じなかったのに)
自分が鈍いと言われればそこまでなのだが、ルルーシェは己を気配に聡い方だと思っていたからショックだ。
ゴポリ、とまた空気を吐き出す。
その泡の向かう先、光が遠のいていくことに恐怖して、とうとうぎゅっと目を瞑る。
(お父様!)
力強く手を握られる。
と思ったらぐんぐんと引っ張られ、水面まであっという間に到着した。
陸に引き上げ横たえられる。
「がはッ、……ゲホ、ゲホッ!ゴホッ、はぁ…………ごほっ」
ルルーシェは必死に呼吸を繰り返す。
苦しくて苦しくて、涙が出て、視界がぼやける。
しかし優しく触れる手が二つあると感触でわかる。
ラカーシェだけでなくトワイも側にいてくれている、そんなことがルルーシェにはとても嬉しい。
「落ち着いた?」
「ーーうん」
「二人ともありがとう」
「ああ」
「……僕は何も」
「側に居てくれただけで嬉しかったのよ」
「…………、はい」
少し不可解そうにしながらも素直に返事をする様子に微笑みながら、ルルーシェは自分が落ちたであろう場所を振り返る。
誰もいない。
何かがいた形跡さえない。
二人もルルーシェにつられてそちらを見遣る。
三人は顔を見合わせ、言葉を探す。
「ルルーシェ、何があったんだい?」
「なにかに脚を押されたのよ」
「ルルーシェが?」
「うん」
ラカーシェはルルーシェが気配に聡いことを知っているので、驚いた表情になる。
「ルルーシェが落ちる音で直ぐに向いたが、何もいなかった」
「でも、押されて落ちたのよ!ぜったい!」
「ああ。私はルルーシェが嘘を吐かないと知っているからね」
落ち着けるように頭を撫でられる。
ルルーシェは心地よさに目を細める。
しかし、不安が胸の内を渦巻くので完全に味わうことができない。
(誰が私を押したの?何故?どうやって?)
次第にルルーシェはカタカタと震え始める。
(怖い)
ようやく死という恐怖がやってきたのだ。
それに加え、誰が押したのかわからないという奇妙な事実が不安となって襲ってくる。
そうしたら直ぐに抱きしめられた。
ラカーシェだ。
それにトワイも、ルルーシェの手を握ってくれていた。
「お父様、濡れちゃうわ」
「安心してくれ。ルルーシェを引き上げた時には濡れていたから」
「…………、確かにそうね」
ごめんなさいと小さく呟くと、気にするなと言うように額にキスされる。
「トワイ、握ってくれてありがとう」
「はい」
今度は一瞬で返事が返ってきた。
(そうよ、二人が一緒に居てくれるんだから大丈夫)
ルルーシェは心の中でそう言い聞かせ、二人をそのままに、自分が押された場所を睨め付ける。
「誰か知らないけれど。次何かしたらただじゃおかないわ!見つけ出してお仕置きしてあげる」
はしたないが大声でそう宣言する。
強がりなんかではない。
ルルーシェは心の底から本気である。
「ルルーシェ、素敵だよ」
「本当!?」
一瞬で作った空気は台無しになったが、ラカーシェに褒められてルルーシェはとても嬉しいのでいいのだ。
ルルーシェは、自分の「気配に聡い」がどれほどのものなのかわかっていない。
ルルーシェは魂の匂いを感じて、それと気配とを結びつけているのだ。
つまり、ルルーシェが気配を察知できなかったということは。
ルルーシェはラカーシェに褒められた喜びに浸っているので気づいていないが、後ろではラカーシェとトワイが深刻そうに眉を寄せていた。
「いますね」
「ああ」
「「…………」」
困り果てて黙り込むラカーシェとトワイ。
そんな二人を焦ったく見守るルルーシェ。
(あれはどういう鳥で~、とか続ければいいのに!トワイも尋ねればいいのに!もう!焦ったい!!)
無関心を装いつつも、心の中では思いっきり声を荒げていた。
「……風が心地いいな」
「…………。……無風です」
「…………。そうか」
「「………………」」
困り果てて黙り込むラカーシェとトワイ。
そんな二人を焦ったく見守るルルーシェ。
(何度目!?)
溜息を吐きたくなるが、二人の邪魔をしないためにぐっと堪える。
(お父様、私とは会話続くでしょう!何故それがトワイに発揮されないの!?トワイ、もう少し会話を続けようと努力なさい!)
ルルーシェは呆れ果ててしまった。
しかし尿意は自然現象なのでやってくる。
「お父様、トワイ。小屋に行ってくるわ」
「気をつけてね」
「はーい」
ルルーシェはわざと少し冷たく言う。
許してませんよアピールだ。
小屋が湖の側からはちょうど木々で隠れる位置に建っている。
湖は屋敷からそんなに離れていないため、寝泊まりする用ではない。
簡易な作業小屋だ。
しかしトイレも浴槽も付いており、必要最低限は守られている。
垂れ流すことにはならないということだ。
初めて湖の存在を知り、小屋のことを聞いて時一番最初に感じたのは安堵だった。
ルルーシェはトイレ完備な小屋に感謝しながら扉を開ける。
すっきりしたルルーシェは再び湖へと向かう。
ルルーシェが木の間から出た場所は二人からは離れていて、そこに行くのに湖の側を歩いて行く。
ーードン。
脚を押される感覚。
目の前に迫る水面。
ルルーシェは呆然とし、なされるがままに湖へと身を落とす。
人間、完全に予想外な出来事には咄嗟の反応さえできないのだと、ルルーシェは己の身で思い知る。
(苦しい、苦しい、苦しい苦しい苦しい)
我慢できなくなって、ルルーシェはガポリと泡を吐き出す。
それをぼんやりと眺めて、手を伸ばす。
その手は何も掴まない。
手は行き場を失って、それでも縋るように伸ばしたまま。
(なんにも、気配なんて感じなかったのに)
自分が鈍いと言われればそこまでなのだが、ルルーシェは己を気配に聡い方だと思っていたからショックだ。
ゴポリ、とまた空気を吐き出す。
その泡の向かう先、光が遠のいていくことに恐怖して、とうとうぎゅっと目を瞑る。
(お父様!)
力強く手を握られる。
と思ったらぐんぐんと引っ張られ、水面まであっという間に到着した。
陸に引き上げ横たえられる。
「がはッ、……ゲホ、ゲホッ!ゴホッ、はぁ…………ごほっ」
ルルーシェは必死に呼吸を繰り返す。
苦しくて苦しくて、涙が出て、視界がぼやける。
しかし優しく触れる手が二つあると感触でわかる。
ラカーシェだけでなくトワイも側にいてくれている、そんなことがルルーシェにはとても嬉しい。
「落ち着いた?」
「ーーうん」
「二人ともありがとう」
「ああ」
「……僕は何も」
「側に居てくれただけで嬉しかったのよ」
「…………、はい」
少し不可解そうにしながらも素直に返事をする様子に微笑みながら、ルルーシェは自分が落ちたであろう場所を振り返る。
誰もいない。
何かがいた形跡さえない。
二人もルルーシェにつられてそちらを見遣る。
三人は顔を見合わせ、言葉を探す。
「ルルーシェ、何があったんだい?」
「なにかに脚を押されたのよ」
「ルルーシェが?」
「うん」
ラカーシェはルルーシェが気配に聡いことを知っているので、驚いた表情になる。
「ルルーシェが落ちる音で直ぐに向いたが、何もいなかった」
「でも、押されて落ちたのよ!ぜったい!」
「ああ。私はルルーシェが嘘を吐かないと知っているからね」
落ち着けるように頭を撫でられる。
ルルーシェは心地よさに目を細める。
しかし、不安が胸の内を渦巻くので完全に味わうことができない。
(誰が私を押したの?何故?どうやって?)
次第にルルーシェはカタカタと震え始める。
(怖い)
ようやく死という恐怖がやってきたのだ。
それに加え、誰が押したのかわからないという奇妙な事実が不安となって襲ってくる。
そうしたら直ぐに抱きしめられた。
ラカーシェだ。
それにトワイも、ルルーシェの手を握ってくれていた。
「お父様、濡れちゃうわ」
「安心してくれ。ルルーシェを引き上げた時には濡れていたから」
「…………、確かにそうね」
ごめんなさいと小さく呟くと、気にするなと言うように額にキスされる。
「トワイ、握ってくれてありがとう」
「はい」
今度は一瞬で返事が返ってきた。
(そうよ、二人が一緒に居てくれるんだから大丈夫)
ルルーシェは心の中でそう言い聞かせ、二人をそのままに、自分が押された場所を睨め付ける。
「誰か知らないけれど。次何かしたらただじゃおかないわ!見つけ出してお仕置きしてあげる」
はしたないが大声でそう宣言する。
強がりなんかではない。
ルルーシェは心の底から本気である。
「ルルーシェ、素敵だよ」
「本当!?」
一瞬で作った空気は台無しになったが、ラカーシェに褒められてルルーシェはとても嬉しいのでいいのだ。
ルルーシェは、自分の「気配に聡い」がどれほどのものなのかわかっていない。
ルルーシェは魂の匂いを感じて、それと気配とを結びつけているのだ。
つまり、ルルーシェが気配を察知できなかったということは。
ルルーシェはラカーシェに褒められた喜びに浸っているので気づいていないが、後ろではラカーシェとトワイが深刻そうに眉を寄せていた。
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