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3章〜マリンマリン王国水の都〜&真相の光

閑話、永遠に

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「ゔっ」

 突然心臓が圧迫されたと思ったと同時に、僕の視界は常闇へと染まる。

 
◇◆◇

 私達は、ずっと二人だけの場で過ごしていた。

 だけど私達は、私達の感じている、幸せな愛というものを、私達以外にも感じて欲しい。共感して欲しいと思うようになった。


 そして

 私達二人で生命を。

 ルティは空を。

 私は地を。

 それぞれの象徴たるモノを作った。


 そして地に生きる生命達が生まれ、営み、私達が手を出す間も無く日々進化して行った。

 
 最初はただの思い付き。でも私達が作り出したモノ達を見守っている内に、とても愛しく思えて来て、

「「へんなの」」

 そう顔を合わせて笑った。



 幸せだった。いいや、幸せだよ。今も。昔も。これからもずうっと。
 
 

 ーーーー僕は、気づけなかった。今思えば、幸せが壊れる事がとても恐しく、目を背けていただけなのかもしれない……。

 
 始まりは何だったろうか。

 分からない。最初の頃は本当に些細な事だった。だから特段気にしてはいなかった。

 けれど、時が経つにつれ、ルティの不自然さは目立って行った。 


 いつからか、ルティは睡眠というモノを取るようになった。

「どうしてそんな事をするの?」
「私達の愛しいモノ達の真似をしてみようかと思って」
「そうなんだね。じゃあ私も睡眠というモノを取ってみるよ」
「じゃあ一緒ね?」
「あぁ、一緒だよ」

 そう言って、その時は只々笑い合った。

 
 気がつけば、ルティは何かを作るようになっていた。

「ルティ、何をしているの?」
「これ?力を込めているのよ」
「ルティ、それ楽しい?」
「ナディ、そんな奇特な物を見る目で見ないで!」
「はははっ!ごめんねルティ」
「否定してはくれないのね…………」

 そう言って、ルティはむくれた。そんなルティもとても愛くて、でも何か、違和感は感じていたんだ。

 

「ルティ、早くおいでよ」
「ふふっ、ちょっと待って。私は貴方の様に速く歩けないもん。あっ!」

 ルティは走っている途中、突然崩れ落ちた。

「ルティ!!」

 私は思いっきり走り、ルティの体が完全に地に着く前に腕を持ち上げて支える。

「ルティ、最近こういう事多いよ?大丈夫?」
「ナディは心配性ね。大丈夫!私、どこからどう見ても元気いっぱいでしょ?」
「そうだけど……」

 私は顔が歪むのを感じる。

 この場では何を言ってもルティは躱すだろう。

 私はこの場での追及は諦めた。


 …………だけど、何を隠しているのかは、見つける。

 
 その後私はルティの眠っている間にルティの体を全て調べた。

 そうして分かった事実。


 ルティはもう長く無い。


 という事。持って十年。だけど今この瞬間死んでもおかしくは無い状態だった。
 
 原因まで理解した。


 負の力をルティが全て背負っていたなんて知らなかった……。

 私は初めて知った事実に、只々呆然とした。


◇◆◇

「私にもその負の力を分け与えて」

 貴方を守りたい。だから、どうか。どうか、私の提案を受け入れてーーー



「ごめんなさい。無理よ」

 ルティは、とても綺麗に、美しく、それでいて愛らしく、笑みを浮かべる。

「ルティ……!」

 ルティ、どうして?私はこんなにも貴方の事を守りたいのに…………。


◇◆◇

 ルティと私の攻防はずっと続いた。ルティは私に負の力をくれないから、ルティが受け入れている負の感情を私が直接取り込もうとした。

 けれど負の感情はルティに向かっていた為、それを直接取り込む事は困難だった。


 
 そして終にルティは限界を迎える。

 「ルティ消えないでっ!!消えるくらいなら一緒に転生しよう……」

 ルティは、もう動かす事など出来ない筈なのに、笑みを浮かべる。

 私はその笑みに応える余裕など無かった。

◇◆◇

 あぁ、ルティ。

 私の狂おしい程愛しい人。

 私は貴方がいれば、それで良いのに。

 なのに、貴方は日に日に弱っていく。

 私は尊ばれるのに、私の伴侶である貴方は尊ばれない。

 私は祀られるのに、私と一緒に支えている貴方は祀られない。

 最初は尊ばれていたのに。祀られていたのに。


 ーー貴方のいない、世界はイラナイ。

 ーー貴方を蝕む、世界はイラナイ。

 そもそも、こんなに世界を、下界のモノを気にかけなければこんな事にはならなかった?

 

 貴方を蔑むモノは、全てイラナイッ!!

 貴方がいないのならば、こんな世界イラナイッ!!


 貴方が死ぬというのなら、私も死にましょう。

 そして魂に術を刻みましょう。

 絶対にまた、貴方と出会えるように。

 次の来世でなくともいい。この術で逢えることは確定したのだから。

 貴方が死ぬ時、私も死にましょう。こんな世界はイラナイから大丈夫。


 そして、また違う生で、逢いましょう。



「だからルティ、貴方に辛い思いをさせないように、記憶は全て封印させて貰うね。私も記憶を己の力で封印するよ。大丈夫、また逢えるよ。それはちゃんと組み込んであるからーーーー」

 もう目の覚める事の無い体を抱き締める。

「記憶が無くても、私は永遠にルティを愛しているよ」

 
 
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