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3章〜マリンマリン王国水の都〜&真相の光

閑話、なるようになれ

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 あぁ、思い出した。

 そして僕達は、転生の為の準備に入ったんだった。

 まだ記憶が蘇った衝撃が抜け切らない頭で考える。


 …………何故、ナディソウルとアルティリエーヌが居なくなった世界が、今尚動き続けている?

 
 モノ達は手を貸すまでもなく進化し続けていたけど、それはナディソウル達が世界を動かしていたからこそできていた事。

 ナディソウル達は時を進める事と、力の管理を行なっていた。

 ーーーーそうしなくては、世界が動かなかったから。

 
 疑問ばかりが頭を巡る。

 そしてふと思う。世界樹なら知っているかもしれない、と。



 ……………………よし、やめよう。


 今更どんな顔をして合わせれば良いのか分からない。

 あの時は己の悲しみに支配されて周り、世界の事なんて考えていなかった。

 世界は今この時まで動いているが、危うくはなった筈。

 ……………………やっぱり無理だね。



「憶い出したなら、さっさと僕に会いに来てください父様」

 壁際から懐かしい声が聞こえた。ゆったりと其方を向く。

 銀に輝く髪。若々しい葉を思わせる緑の瞳。力強さを感じさせる茶色い肌。全て変わっていなくて、懐かしい。

「ごめんね。顔を合わせづらくて……。わざわざ来てくれてありがとう。嬉しいよ」
「なら良かったです」

 柔らかく微笑む。昔と変わらぬ笑顔に、また安堵する。

「急に来させていただいたのは、疑問に思っているであろう事に答えを差し上げようかと思ったからです」
「……もしかしなかても怒っている、かな?」
「そう見えるのならそうなんでしょうね」

 間違いなく怒っている。だけどその怒りは誰に対してなのかは読み取れない。

「とりあえずその事は置いておきましょう。まず、この世界がまだ生きているのは、己の意思で動き出したからです。以前は父様と母様が時を進めていましたが、生き続ける為に世界は自分で時を進めるようになりました」

 正直、驚いた。世界は自分で動ける。ーーけど、世界は動こうとしなかった。だからナディソウル達が時を進めていたのに。

「何故?」
「只親に甘えたかったのですよ。けれど消えてしまったので己の力で動き始めたのです。力の管理は、世界が新な神を生み出し、自分の子に任せたのです」

 でもそれは死ぬ為に生まれて来た、という事にならない?だって、負の力が無くなる事は無いのにーーーーあ。


 今気が付いた。世界樹の力が、アルティリエーヌの負の力に蝕まれていた時と同じ様に、少し不規則に漏れている事に。


「負の力だけ世界樹が受け入れている……?」
「その通りです」
「なんで、っ!」

 その後が続かない。


 ああ、ナディソウルは馬鹿だ阿呆だ。自分達の事しか見えていなかった。

 大事な子の事も、愛しんでいるモノ達の事も、何一つ考えていなくて、なのに、なのにーーーー今、自分は無力だ。力も蘇ったが、それだけ。何かを施してあげる事も出来ない。

 不甲斐なさ過ぎて、涙が溢れる。


 泣くな!泣くな泣くな泣くなっ!!


 泣いて良いのは僕では無い。世界樹だけだ。世界樹が泣いていないのに、僕が、僕だけが泣くなんて、世界樹が許しても僕が許せない。

「な、何かっ!代わりの手段は!?」
「母様が逃れられなかったのにあると思いますか?」

 僕は泣いているのに、世界樹はとても冷静で。とても、とても嬉しそうに微笑むだけで。

「何故笑っていられるの?」
「父様が、僕の事を思って泣いて下さっているからです。後、母様と会えたから。そして何よりーー今度こそ、二人を護れるのだと思うと嬉しくて」
「いやいやいや、嬉しく思わないで!?僕達を護ろうとしてくれているのは嬉しい。だけどその思いと同じくらい、僕は、リティアは世界樹に生きて欲しいと思うんだよ」

 胸が苦しい。力は持っているのに、何も出来ない自分から嫌になる。

「とりあえずリティアの元へ行こう!リティアは別の世界でも生を受けているから何か良い案がーーーーん?」
「父様どうしました?」
「…………いや、リティアの元へ行こうか」

 
 少し冷静になれた。

 リティアと僕はそこまで年が離れている訳では無いのに、リティアは前にも転生している。

 世界を超えた時、違う時空に飛んだ?それとも時間の進みの軸が違うのか。どちらにしても、世界が考慮してくれたに違いない。

 ーーモノというのは、一旦本題から離れて他の物事を考えると冷静になれるものだな。


「世界樹、行くよ!」
「え!?でも今旅のと」

 そうだった!!まあ、なるようになれ、だね。


 転生した事で図太くなった気がする。

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