47 / 231
第45話 ドナドナされるマリ
しおりを挟む
エントン王国に残した皆の無事を祈りながら、マリはメリーと共に馬車で揺られていた。 馬車の周囲はゴルメディア帝国最強の黒騎士団が護衛している。
「ねぇ、メリーさん。 ゴルメディア帝国まで後どれぐらいかかるの?」
何やら羊皮紙に書き込み続けるマリは、ふと顔を上げてメリーに問う。
「そうでございますね。 既に3日経過しましたので……そろそろゴルメディア帝国の大砦に着く筈です」
メリーがメイド服の裾からスルリと取り出した書類を捲りながら応える。
「……あ~、彼処か」
マリは渋い顔をしながらも、ひたすら羊皮紙に書き続ける。
「陛下が何故……大砦の事を?」
メリーの問いにマリは冷や汗をかく。当然、マリがゴルメディア帝国にある大砦を知っているのは乙女小説に出てくるからだ。
小説の中では魔族が亜人達や小国群等を滅ぼしながら攻め寄せた際、最初の大きな戦いの舞台となるのがゴルメディア帝国大砦なのだ。
兵士数万を軽く収容でき、小説の正史では逃げ延びた亜人達や人間達を受け入れた非常に重要な砦なのである。
物語はその大砦から始まったと言っても過言では無いと長年乙女小説を愛して止まないマリは考えていた。
「え? んー……本で読んだから?」
明らかに嘘だと分かるマリの様子に、メリーはため息を吐く。
「ふぅ……左様ですか。 ゴルメディア帝国の重要拠点である大砦を書いた書物が有るとは……女皇帝に見つかれば即死刑でしょうね」
「あはは……怖いね~」
マリが苦笑いをしていると、馬車が止まる。
「着いた様ですね。 陛下、何があってもお守り致しますので御安心下さいませ」
「ありがとう、メリーさん。 でも、此処が目的地なの?」
マリの問いに応えたのはメリーでは無く馬車の扉を不躾に開けた立派な髭を生やした老人だ。
「ふむ、此処が終着点では無いぞ。 小国の女王よ」
オールバックにした白髪で立派な髭と裏腹に痩せ細った老人はギロリと猛禽類の様な瞳でマリを睨む。
メリーがマリを隠すようにし、殺気からマリを守った。
「王族調停に向かう王国の女王に対し無礼ではありませんか!下がりなさい!」
「ふん……メイドごときが、私をゴルメディア帝国宰相のガバムント フォル ブラックと知っての狼藉か?! 許せぬ……ん? お前は……いや、あり得ぬか」
メリーを見つめた宰相ブラックは怒りを他所にブツブツと呟き、大砦の中へと入って行った。
「マリ女王陛下! 宰相が申し訳ない……私が到着の報告をしに行った隙に無礼をしたようで」
黒騎士団団長のデランが大砦より駆け付けて、2人に頭を下げた。
初対面の時の圧は既に無く、この3日間の旅路でマリはデランと打ち解けていた。主に、夜営時での酔ったマリの手柄だが。
「大丈夫だよデランさん。 ありがとう」
「寛大なお言葉感謝します。 では、今日は大砦の客室で休んで頂き明日より2日掛けて帝都に入ります」
デランにエスコートされ、マリは書きかけの羊皮紙をメリーに預けて付いていく。
「……陛下、ちなみにずっと書かれているコレは何ですか? 見たことありませんが……」
「んー? あぁ、私にしか出来ない秘策ってヤツかな~。 まぁ、まだ完成じゃないから」
2人が雑談をしながら大砦の廊下を進んでいると、突如としてデランを含む3人を重装備の兵士達に囲まれた。
「貴様等、私やお連れのお二人が誰か知っての狼藉か?」
ゴルメディア帝国最強の騎士に凄まれ、囲んだ兵士達は一瞬怯むが、隊長とおぼしき兵が進み出て口を開いた。
「黒騎士団デラン団長、および敵国の女王とメイドを牢に入れろとのご命令です!」
「ふざけるな! 貴様等は王族調停がどれだけ重いものか人間族なら知っているだろ! 誰だ、その様な命令を出した愚か者は!」
隊長にデランは殺気を放ち、怒鳴り散らす。 その姿はまるで鬼のようだ。
「私だよ。 デラン殿」
後方より進み出た黒髪の青年を見て、デランとマリは言葉を失った。
「何故……貴方様が? ゴルメディア フォル アバン様!」
「……え?」
マリ達を牢に入れる様指示したのは……乙女小説で主人公と共にゴルメディア帝国の腐敗を打ち砕き初の男の皇帝となる筈のアバンだった。
「ねぇ、メリーさん。 ゴルメディア帝国まで後どれぐらいかかるの?」
何やら羊皮紙に書き込み続けるマリは、ふと顔を上げてメリーに問う。
「そうでございますね。 既に3日経過しましたので……そろそろゴルメディア帝国の大砦に着く筈です」
メリーがメイド服の裾からスルリと取り出した書類を捲りながら応える。
「……あ~、彼処か」
マリは渋い顔をしながらも、ひたすら羊皮紙に書き続ける。
「陛下が何故……大砦の事を?」
メリーの問いにマリは冷や汗をかく。当然、マリがゴルメディア帝国にある大砦を知っているのは乙女小説に出てくるからだ。
小説の中では魔族が亜人達や小国群等を滅ぼしながら攻め寄せた際、最初の大きな戦いの舞台となるのがゴルメディア帝国大砦なのだ。
兵士数万を軽く収容でき、小説の正史では逃げ延びた亜人達や人間達を受け入れた非常に重要な砦なのである。
物語はその大砦から始まったと言っても過言では無いと長年乙女小説を愛して止まないマリは考えていた。
「え? んー……本で読んだから?」
明らかに嘘だと分かるマリの様子に、メリーはため息を吐く。
「ふぅ……左様ですか。 ゴルメディア帝国の重要拠点である大砦を書いた書物が有るとは……女皇帝に見つかれば即死刑でしょうね」
「あはは……怖いね~」
マリが苦笑いをしていると、馬車が止まる。
「着いた様ですね。 陛下、何があってもお守り致しますので御安心下さいませ」
「ありがとう、メリーさん。 でも、此処が目的地なの?」
マリの問いに応えたのはメリーでは無く馬車の扉を不躾に開けた立派な髭を生やした老人だ。
「ふむ、此処が終着点では無いぞ。 小国の女王よ」
オールバックにした白髪で立派な髭と裏腹に痩せ細った老人はギロリと猛禽類の様な瞳でマリを睨む。
メリーがマリを隠すようにし、殺気からマリを守った。
「王族調停に向かう王国の女王に対し無礼ではありませんか!下がりなさい!」
「ふん……メイドごときが、私をゴルメディア帝国宰相のガバムント フォル ブラックと知っての狼藉か?! 許せぬ……ん? お前は……いや、あり得ぬか」
メリーを見つめた宰相ブラックは怒りを他所にブツブツと呟き、大砦の中へと入って行った。
「マリ女王陛下! 宰相が申し訳ない……私が到着の報告をしに行った隙に無礼をしたようで」
黒騎士団団長のデランが大砦より駆け付けて、2人に頭を下げた。
初対面の時の圧は既に無く、この3日間の旅路でマリはデランと打ち解けていた。主に、夜営時での酔ったマリの手柄だが。
「大丈夫だよデランさん。 ありがとう」
「寛大なお言葉感謝します。 では、今日は大砦の客室で休んで頂き明日より2日掛けて帝都に入ります」
デランにエスコートされ、マリは書きかけの羊皮紙をメリーに預けて付いていく。
「……陛下、ちなみにずっと書かれているコレは何ですか? 見たことありませんが……」
「んー? あぁ、私にしか出来ない秘策ってヤツかな~。 まぁ、まだ完成じゃないから」
2人が雑談をしながら大砦の廊下を進んでいると、突如としてデランを含む3人を重装備の兵士達に囲まれた。
「貴様等、私やお連れのお二人が誰か知っての狼藉か?」
ゴルメディア帝国最強の騎士に凄まれ、囲んだ兵士達は一瞬怯むが、隊長とおぼしき兵が進み出て口を開いた。
「黒騎士団デラン団長、および敵国の女王とメイドを牢に入れろとのご命令です!」
「ふざけるな! 貴様等は王族調停がどれだけ重いものか人間族なら知っているだろ! 誰だ、その様な命令を出した愚か者は!」
隊長にデランは殺気を放ち、怒鳴り散らす。 その姿はまるで鬼のようだ。
「私だよ。 デラン殿」
後方より進み出た黒髪の青年を見て、デランとマリは言葉を失った。
「何故……貴方様が? ゴルメディア フォル アバン様!」
「……え?」
マリ達を牢に入れる様指示したのは……乙女小説で主人公と共にゴルメディア帝国の腐敗を打ち砕き初の男の皇帝となる筈のアバンだった。
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる