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第177話 大臣ルカと女貴族達
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「皆お疲れ様~、揃ってるね? じゃあ、やろっか~」
北へ旅立つまで後1週間程となり、今日はマリの最後の執務だった。 大臣や女貴族達との引き継ぎの会議をするのだ。
「マリ様、概ねの人選はこちらに」
「ありがとうルカ。 えっと~……ん?? 税務官をお願いする貴族は……コレ誰かな」
マリが席に座り、羊皮紙を捲りながら問うと一人の男が立ち上がった。
「はっ! ゴルメディア帝国にて、過去に税務官の一人を務めておりました者です! 不正を暴いた罪で下級民の村に居ましたが、マリ様の温情でエントン王国に亡命させて頂けました。 御恩に報いるべく、ルカ様に志願したのです!」
その男は真面目で誠実そうに見えた。 だからこそ、腐敗したゴルメディア帝国では不必要と烙印を押されたのだろう。
「ルカの推薦ね。 ん、なら問題無いよ。 他にも何人か男性を入れてくれてるね。 男爵からスタートさせるんだよね? ルカ」
「はい、王国の支配者が国王となりましたからこの機会に色々と試行錯誤してみようと思います」
「信じてるよ、ルカ。 じゃあ、ヨハネに引き継ぎさせるからよろしくね。 後は、商業エリアだね~メル伯爵。 貿易はどう?」
メル伯爵が立ち上がり、報告を始める。
「そうですね、概ね順調かと思いますよ。 ルカはんに渡してる羊皮紙に経過を書かせて頂いておりますので、そちらを見ながらお願いします。 先ずはウルフ王国との貿易ーーーー
◆◇◆
貿易関連のすり合わせも終わり、メル伯爵が席に戻る。
「ありがとう、メル伯爵。 これからも、エントン王国への変わらない忠誠を期待します。 次にイサミ伯爵お願い。 依頼した荷物の準備はどうかな」
「はっ! 予定通り、1週間後には全ての荷が準備出来ます。 ただ、復興祭での屋台に出した料理の人気が根強く需要がかなり上がっております。 荒れた土地でも栽培可能な野菜ですから、農地を広げて増量する事を提案します」
「うんうん、相変わらず完璧な仕事振りね。 準備ありがとう、それと農地を広げる件はルカと相談して王国付きのドワーフ族にお願いして」
「ありがとうございます!」
イサミ伯爵はマリに深々と頭を下げてから席に戻る。
「よし、次に各方面の防衛状況を確認します。 ルニア侯爵、お願いします」
「はっ!! 最重要拠点での新大砦の防衛網は今までのレベルとは比べ物にならない基準まで押し上がっています。 正直……私でも突破は不可能ですね」
赤い死神お墨付きをもらい、女貴族達から驚きの声が上がる。 最強と名高いルニア侯爵で突破が不可能と云うことは、それはまさに最強の防衛網と云えるだろう。
「そっかぁ~、アテス達が作ってくれた防衛兵器も使えるなら王国はかなり安全になったね。 黒騎士団の皆はどう?」
「エントン王国に亡命する前と比べるとかなり強くなりました。 元々が騎士団としても精鋭でしたからね。 今なら例の人形とも殺り合えるでしょう」
弟子を自慢する様なルニアの口振りに思わずマリは笑う。
「あはは、分かったよ。 ありがとうルニアさん。 これで以上かな? これで、私の最後の執務は終わります。 皆、この1年近くの間お世話になりました。 どうか、ルーデウスをお願いします」
マリが立ち上がり、頭を下げるとその場の女貴族達も全員立ち上がり同じ様に深々と頭を下げる。
「今のエントン王国が在るのは、マリ様のおかげです! 本当にありがとうございました!!」 「「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」」
会議室の全員に惜しまれながら、マリの最後の執務は終わりを告げた。
皆が退出し、マリも自室に帰ろうとしているとルカが話し掛けてきた。
「マリ様、北と南の件が終わりましたら亜人の国へ?」
「え? うん、その予定だよ~。 私はもう王都に居ない方が良いからね。 全ての国民がルーデウスを支持している訳じゃないから」
選挙でも分かった事だが、やはり一定数は統治する者はマリが良いと思っている者達が居るのだ。 ずっと王都にマリが住めば、良からぬ事を考える者が出るかもしれない。 その為、死なないのなら出て行くべきだと考えていた。
「分かりました。 という事は、旧辺境伯領に住まわれるのですね? 今は、亜人共有領土ですが」
「ふえ? いやぁ、どうだろ。 ドワーフの国に住むだろうから、亜人の森とかじゃないのかな」
「おや? もしや、アテス殿からお聞きしてないのですか?」
マリは何のことか分からず、首を傾げる。
「マリ様に教わった知識を元に、亜人共有領土は凄まじい速度で文明が進化したので亜人は全員其処に移り住むそうですよ。 何でも、早い速度で移動出来る乗り物や、食料を冷やせる箱、反対に温める箱等の素晴らしい魔道具を大量に作ってるとか。 何より凄いのは……その知識をマリ様から教わったという所ですかな」
マリは内心で、アテスに迂闊に教えた事を後悔する。 有れば便利等と考えた愚かな自分をぶん殴ってやりたくなる。 当然だが、あのチート種族達に高度な文明の知識を与えたらとんでもない事になるに決まっていた。
何故そんな軽はずみな事をしたか。
真の理由は単純だ。
炭酸の入った酒や、キンキンに冷えた酒を飲みたかったからだ。 更に輸送速度を上げて世界中の酒を飲みまくり、何時でも熱々のつまみが食べたいだけなのだ。
そんな理由を言える筈も無く、マリは目をキョドらせながら席を立ち上がった。
「あっれ~? 聞いてないなぁ。 そんな事教えたっけなぁ~あはは」
マリはとぼけながら会議室を出ようとしたが、ルカに掴まる。
「もしかしたら……マリ様が亜人達の上に立ち、エントン王国との新たな取り引き相手になるかもと、私は考えております。 その時は、ぜひお手柔らかにお願いしますね」
ニッコリと笑うルカの目は全く笑っていなかった。
北へ旅立つまで後1週間程となり、今日はマリの最後の執務だった。 大臣や女貴族達との引き継ぎの会議をするのだ。
「マリ様、概ねの人選はこちらに」
「ありがとうルカ。 えっと~……ん?? 税務官をお願いする貴族は……コレ誰かな」
マリが席に座り、羊皮紙を捲りながら問うと一人の男が立ち上がった。
「はっ! ゴルメディア帝国にて、過去に税務官の一人を務めておりました者です! 不正を暴いた罪で下級民の村に居ましたが、マリ様の温情でエントン王国に亡命させて頂けました。 御恩に報いるべく、ルカ様に志願したのです!」
その男は真面目で誠実そうに見えた。 だからこそ、腐敗したゴルメディア帝国では不必要と烙印を押されたのだろう。
「ルカの推薦ね。 ん、なら問題無いよ。 他にも何人か男性を入れてくれてるね。 男爵からスタートさせるんだよね? ルカ」
「はい、王国の支配者が国王となりましたからこの機会に色々と試行錯誤してみようと思います」
「信じてるよ、ルカ。 じゃあ、ヨハネに引き継ぎさせるからよろしくね。 後は、商業エリアだね~メル伯爵。 貿易はどう?」
メル伯爵が立ち上がり、報告を始める。
「そうですね、概ね順調かと思いますよ。 ルカはんに渡してる羊皮紙に経過を書かせて頂いておりますので、そちらを見ながらお願いします。 先ずはウルフ王国との貿易ーーーー
◆◇◆
貿易関連のすり合わせも終わり、メル伯爵が席に戻る。
「ありがとう、メル伯爵。 これからも、エントン王国への変わらない忠誠を期待します。 次にイサミ伯爵お願い。 依頼した荷物の準備はどうかな」
「はっ! 予定通り、1週間後には全ての荷が準備出来ます。 ただ、復興祭での屋台に出した料理の人気が根強く需要がかなり上がっております。 荒れた土地でも栽培可能な野菜ですから、農地を広げて増量する事を提案します」
「うんうん、相変わらず完璧な仕事振りね。 準備ありがとう、それと農地を広げる件はルカと相談して王国付きのドワーフ族にお願いして」
「ありがとうございます!」
イサミ伯爵はマリに深々と頭を下げてから席に戻る。
「よし、次に各方面の防衛状況を確認します。 ルニア侯爵、お願いします」
「はっ!! 最重要拠点での新大砦の防衛網は今までのレベルとは比べ物にならない基準まで押し上がっています。 正直……私でも突破は不可能ですね」
赤い死神お墨付きをもらい、女貴族達から驚きの声が上がる。 最強と名高いルニア侯爵で突破が不可能と云うことは、それはまさに最強の防衛網と云えるだろう。
「そっかぁ~、アテス達が作ってくれた防衛兵器も使えるなら王国はかなり安全になったね。 黒騎士団の皆はどう?」
「エントン王国に亡命する前と比べるとかなり強くなりました。 元々が騎士団としても精鋭でしたからね。 今なら例の人形とも殺り合えるでしょう」
弟子を自慢する様なルニアの口振りに思わずマリは笑う。
「あはは、分かったよ。 ありがとうルニアさん。 これで以上かな? これで、私の最後の執務は終わります。 皆、この1年近くの間お世話になりました。 どうか、ルーデウスをお願いします」
マリが立ち上がり、頭を下げるとその場の女貴族達も全員立ち上がり同じ様に深々と頭を下げる。
「今のエントン王国が在るのは、マリ様のおかげです! 本当にありがとうございました!!」 「「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」」
会議室の全員に惜しまれながら、マリの最後の執務は終わりを告げた。
皆が退出し、マリも自室に帰ろうとしているとルカが話し掛けてきた。
「マリ様、北と南の件が終わりましたら亜人の国へ?」
「え? うん、その予定だよ~。 私はもう王都に居ない方が良いからね。 全ての国民がルーデウスを支持している訳じゃないから」
選挙でも分かった事だが、やはり一定数は統治する者はマリが良いと思っている者達が居るのだ。 ずっと王都にマリが住めば、良からぬ事を考える者が出るかもしれない。 その為、死なないのなら出て行くべきだと考えていた。
「分かりました。 という事は、旧辺境伯領に住まわれるのですね? 今は、亜人共有領土ですが」
「ふえ? いやぁ、どうだろ。 ドワーフの国に住むだろうから、亜人の森とかじゃないのかな」
「おや? もしや、アテス殿からお聞きしてないのですか?」
マリは何のことか分からず、首を傾げる。
「マリ様に教わった知識を元に、亜人共有領土は凄まじい速度で文明が進化したので亜人は全員其処に移り住むそうですよ。 何でも、早い速度で移動出来る乗り物や、食料を冷やせる箱、反対に温める箱等の素晴らしい魔道具を大量に作ってるとか。 何より凄いのは……その知識をマリ様から教わったという所ですかな」
マリは内心で、アテスに迂闊に教えた事を後悔する。 有れば便利等と考えた愚かな自分をぶん殴ってやりたくなる。 当然だが、あのチート種族達に高度な文明の知識を与えたらとんでもない事になるに決まっていた。
何故そんな軽はずみな事をしたか。
真の理由は単純だ。
炭酸の入った酒や、キンキンに冷えた酒を飲みたかったからだ。 更に輸送速度を上げて世界中の酒を飲みまくり、何時でも熱々のつまみが食べたいだけなのだ。
そんな理由を言える筈も無く、マリは目をキョドらせながら席を立ち上がった。
「あっれ~? 聞いてないなぁ。 そんな事教えたっけなぁ~あはは」
マリはとぼけながら会議室を出ようとしたが、ルカに掴まる。
「もしかしたら……マリ様が亜人達の上に立ち、エントン王国との新たな取り引き相手になるかもと、私は考えております。 その時は、ぜひお手柔らかにお願いしますね」
ニッコリと笑うルカの目は全く笑っていなかった。
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