[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
179 / 231

第177話 大臣ルカと女貴族達

しおりを挟む
 「皆お疲れ様~、揃ってるね? じゃあ、やろっか~」

 北へ旅立つまで後1週間程となり、今日はマリの最後の執務だった。 大臣や女貴族達との引き継ぎの会議をするのだ。

 「マリ様、概ねの人選はこちらに」

 「ありがとうルカ。 えっと~……ん?? 税務官をお願いする貴族は……コレ誰かな」

 マリが席に座り、羊皮紙を捲りながら問うと一人の男が立ち上がった。

 「はっ! ゴルメディア帝国にて、過去に税務官の一人を務めておりました者です! 不正を暴いた罪で下級民の村に居ましたが、マリ様の温情でエントン王国に亡命させて頂けました。 御恩に報いるべく、ルカ様に志願したのです!」

 その男は真面目で誠実そうに見えた。 だからこそ、腐敗したゴルメディア帝国では不必要と烙印を押されたのだろう。

 「ルカの推薦ね。 ん、なら問題無いよ。 他にも何人か男性を入れてくれてるね。 男爵からスタートさせるんだよね? ルカ」

 「はい、王国の支配者が国王となりましたからこの機会に色々と試行錯誤してみようと思います」

 「信じてるよ、ルカ。 じゃあ、ヨハネに引き継ぎさせるからよろしくね。 後は、商業エリアだね~メル伯爵。 貿易はどう?」

 メル伯爵が立ち上がり、報告を始める。

 「そうですね、概ね順調かと思いますよ。 ルカはんに渡してる羊皮紙に経過を書かせて頂いておりますので、そちらを見ながらお願いします。 先ずはウルフ王国との貿易ーーーー

 ◆◇◆

 貿易関連のすり合わせも終わり、メル伯爵が席に戻る。

 「ありがとう、メル伯爵。 これからも、エントン王国への変わらない忠誠を期待します。 次にイサミ伯爵お願い。 依頼した荷物の準備はどうかな」

 「はっ! 予定通り、1週間後には全ての荷が準備出来ます。 ただ、復興祭での屋台に出した料理の人気が根強く需要がかなり上がっております。 荒れた土地でも栽培可能な野菜ですから、農地を広げて増量する事を提案します」

 「うんうん、相変わらず完璧な仕事振りね。 準備ありがとう、それと農地を広げる件はルカと相談して王国付きのドワーフ族にお願いして」

 「ありがとうございます!」

 イサミ伯爵はマリに深々と頭を下げてから席に戻る。

 「よし、次に各方面の防衛状況を確認します。 ルニア侯爵、お願いします」

 「はっ!! 最重要拠点での新大砦の防衛網は今までのレベルとは比べ物にならない基準まで押し上がっています。 正直……私でも突破は不可能ですね」

 赤い死神お墨付きをもらい、女貴族達から驚きの声が上がる。 最強と名高いルニア侯爵で突破が不可能と云うことは、それはまさに最強の防衛網と云えるだろう。

 「そっかぁ~、アテス達が作ってくれた防衛兵器も使えるなら王国はかなり安全になったね。 黒騎士団の皆はどう?」

 「エントン王国に亡命する前と比べるとかなり強くなりました。 元々が騎士団としても精鋭でしたからね。 今なら例の人形とも殺り合えるでしょう」

 弟子を自慢する様なルニアの口振りに思わずマリは笑う。

 「あはは、分かったよ。 ありがとうルニアさん。 これで以上かな? これで、私の最後の執務は終わります。 皆、この1年近くの間お世話になりました。 どうか、ルーデウスをお願いします」

 マリが立ち上がり、頭を下げるとその場の女貴族達も全員立ち上がり同じ様に深々と頭を下げる。

 「今のエントン王国が在るのは、マリ様のおかげです! 本当にありがとうございました!!」 「「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」」

 会議室の全員に惜しまれながら、マリの最後の執務は終わりを告げた。

 皆が退出し、マリも自室に帰ろうとしているとルカが話し掛けてきた。

 「マリ様、北と南の件が終わりましたら亜人の国へ?」 

 「え? うん、その予定だよ~。 私はもう王都に居ない方が良いからね。 全ての国民がルーデウスを支持している訳じゃないから」

 選挙でも分かった事だが、やはり一定数は統治する者はマリが良いと思っている者達が居るのだ。 ずっと王都にマリが住めば、良からぬ事を考える者が出るかもしれない。 その為、死なないのなら出て行くべきだと考えていた。

 「分かりました。 という事は、旧辺境伯領に住まわれるのですね? 今は、亜人共有領土ですが」   

 「ふえ? いやぁ、どうだろ。 ドワーフの国に住むだろうから、亜人の森とかじゃないのかな」

 「おや? もしや、アテス殿からお聞きしてないのですか?」

 マリは何のことか分からず、首を傾げる。

 「マリ様に教わった知識を元に、亜人共有領土は凄まじい速度で文明が進化したので亜人は全員其処に移り住むそうですよ。 何でも、早い速度で移動出来る乗り物や、食料を冷やせる箱、反対に温める箱等の素晴らしい魔道具を大量に作ってるとか。 何より凄いのは……その知識をマリ様から教わったという所ですかな」

 マリは内心で、アテスに迂闊に教えた事を後悔する。 有れば便利等と考えた愚かな自分をぶん殴ってやりたくなる。 当然だが、あのチート種族達に高度な文明の知識を与えたらとんでもない事になるに決まっていた。

 何故そんな軽はずみな事をしたか。

 真の理由は単純だ。 

 炭酸の入った酒や、キンキンに冷えた酒を飲みたかったからだ。 更に輸送速度を上げて世界中の酒を飲みまくり、何時でも熱々のつまみが食べたいだけなのだ。

 そんな理由を言える筈も無く、マリは目をキョドらせながら席を立ち上がった。

 「あっれ~? 聞いてないなぁ。 そんな事教えたっけなぁ~あはは」

 マリはとぼけながら会議室を出ようとしたが、ルカに掴まる。

 「もしかしたら……マリ様が亜人達の上に立ち、エントン王国との新たな取り引き相手になるかもと、私は考えております。 その時は、ぜひお手柔らかにお願いしますね」

 ニッコリと笑うルカの目は全く笑っていなかった。 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...