五人目のご令嬢

じぇいそんむらた

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後日譚

7 別れの時間の向こう

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 式の空間は、厳かな雰囲気で僕らを迎える。最初に目に入ったのは、いつもは黙っている時間などないくらい賑やかな子供達の、貴族の子女みたいなすまし顔。その光景に思わず頬が緩む。

 屋敷の人たちは若干落ち着かない様子だったが、僕とご令嬢の姿を見ると、みな目尻を下げて、ため息のような静かな歓声を上げる。厳かな空間が、そこだけは、あの愛おしい屋敷の雰囲気に変わる。

 両親や身内は、こんな場面には慣れているから、緊張などするわけもなく、いつも通りの様子だ。だが、兄妹の影で目立つ事のなかった僕が、彼らに見守られる立場になっているのが、なんともこそばゆい気持ちだ。

 ちなみに、すっかりご令嬢の信奉者となった妹だけは、ご令嬢を見て声にならない悲鳴をあげ、呼吸を荒くしている。妹にとってもはや、ご令嬢が男装していようがいまいが関係ないらしい。僕はその様子に苦笑するしかなかった。

 そんな風に、僕らは大切な人達に見守られて、誓う。どんな困難も、幸せも、2人で分かち合うと。
 互いの薬指にはめた指輪には、小さく刻まれた二葉。二つの指輪が揃って、ようやくそれは幸福の四つ葉となるのだ。

 そして、重なる僕とご令嬢に、祝福の拍手が、いつまでも恵みの雨のように降り注いだ。

 ――

 式の後は、ささやかにだが、式の参加者、そして式に呼べなかった屋敷の人たちや子供達も加わっての宴会が開かれた。
 子供達はたくさんのご馳走に目を輝かせて、屋敷のメイド長や執事というそれはそれは恐ろしい保護者達に睨まれながら、お行儀よくお腹いっぱい料理を堪能していた。

 ご令嬢は、妹に引きずられるように、女性達の輪の中へと連れて行かれてしまった。きっと他愛もない会話をしているのだろう。
 僕の方も、お節介な男性陣に囲まれ、ご令嬢の様子を窺う事さえできない。

 途中、即席の舞踏会も始まり、妹と共に男側として踊るご令嬢の凛々しさに、思わず見惚れてしまう場面もあった。本当に、ご令嬢は男に生まれていたら、きっと色々ととんでもない事になっていただろう。

 尽きる事がないかと思うくらい、楽しい時間は続く。だが、この場にいる全員が、21時には眠りにつくご令嬢の事情を知っている。
 そのおかげで、夜を迎えるよりもだいぶ早く、宴会はお開きとなった。

 そして、僕とご令嬢にようやく、とうとう、2人きりの時間が訪れた。
 ずっと待ち焦がれていた、いつもの別れの時間を超えて、共にいられるその時が。
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