五人目のご令嬢

じぇいそんむらた

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後日譚

9 最後まで

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 抱きしめて、何度もキスをした。それだけでも幸せが溢れて止められないのに、その先まで許されてるなんて、これは現実なのだろうか。夢ではないのか。

 でも、ご令嬢の肌に触れ、この手に感じる熱が、夢ではない事を僕に教えてくれる。

 言葉を交わす事もなく、互いの吐息だけが耳に響く。時折混じる、小さく美しい嬌声に、僕の理性が少しずつ溶けて、流れていく。

 触れるだけだったキスも、少しずつ深くなる。僕は、唇のわずかな隙間から、その更に奥へ触れる。瞬間、震えるご令嬢。その反応に、僕は慌てて彼女の顔を覗き込む。でも、その表情は、どこか不満げだった。

「……どうして、止めるの?」
「震えていたから」
「少し、驚いただけよ」

 確かに、震えはあの一瞬で、今は何でもないといった様子に見える。

「本当に?怖がらせていない?」
「怖くなかったと言えば嘘になるけれど……もう大丈夫だから、やめないでちょうだい」
「怖いのに?」
「だって、初めてだもの。何だって、最初の一歩を踏み出す瞬間は怖いでしょう?」
「確かに」
「でもね、わたくし、好奇心が勝ってしまう。恐れながら踏み出したその一歩が、素敵な二歩目へと変わる事に賭けるの」
「じゃあ今は……賭けてみようと思っている?」

 そう問いかけた僕の目に映るのは、好奇心を宿した美しい瞳。

「ええ。だから、その先も見せて。お願い、わたくしを、最後まで連れて行って」

 僕でさえ知らない僕まで暴かれてしまいそうな、底なしの好奇心。でも、ご令嬢になら、全て曝け出しても構わない。僕は素直にそう思った。

「……分かった」

 そう答えた瞬間、僕の中から、僕を必死で押し留めていたものが消えてなくなる。

 ――

 服の上からでさえ触れた事のない場所に、僕は直接触れていく。汗でしっとりとした肌は薄い赤色に染まって、情熱が透けて見えるようだった。

 触れていないところなどなくしてしまいたい。僕はその一心で、手のひらや唇でご令嬢に触れていく。いつしか、触れ合う肌の境界さえも曖昧で、熱に浮かされたような感覚になる。

 そして僕は、性急になりそうな自分を残り滓のような理性で抑えながら、ゆっくりと、柔らかく熱く潤う、秘められた場所に指を沈めていく。
 それと同時に、しがみつくように、僕の両腕が強く掴まれる。

「辛く、ないですか?」
「わか……らない……こんな感覚も……気持ちも……初めてだから……」

 より一層掴まれる僕の腕。

「でも……もっと欲しいの……」

 その瞬間、僕の指に絡みつくように、中がうねるのを感じる。僕の理性は弾け飛び、埋める指の数を増やし、耳に響く甘い嬌声で、下腹部が痛いくらいに熱くなっていく。

 引き抜いた濡れた三本の指を、自身のものに添える。それだけで、残っていた理性の滓もとうとう消えてしまう。僕の指を受け入れた事さえないように、小さく閉ざされたそこに、僕は、張り詰めた欲望をあてがった。

「……痛かったら、言って、下さい」

 そんな言葉を吐くくせに、僕には言われて止められる自信など少しもなかった。僕は、少しずつ、その狭く熱い場所を引き裂くように、僕のもので埋めていく。
 でも、僕を奥まで受け入れたご令嬢の苦しそうな表情は、それでも僕を安心させるように優しく微笑んでいて。それを見た瞬間、快楽と、喜びと、傷つけて痛みを与えてしまった罪悪感とが混ざり合い、僕の中を暴れ回る。

「すまない……僕ばかり……」

 そんな僕の頬を、ご令嬢の両手がそっと包む。痛みで辛く苦しいはずなのに、弱々しく、どこか嬉しそうに笑いかけてくれる。

「あなたのそんな顔……初めて見たわ」
「どんな顔、ですか」
「いつも涼しい顔してるあなたの……感情が剥き出しの顔」
「そんなに、嬉しいですか?」
「だって、あなたをそうさせているのは、わたくしなのでしょう?」
「そうだよ。君だけが僕をそうさせる」
「ふふ……わたくし、嬉しくて泣いてしまいそう」

 その言葉と同時に、頬を涙が流れていく。

「あなたのそんな顔が見れるのなら、この苦しさも悪くないわ」

 僕は、涙流れる頬や、目尻、そして唇にキスをする。

「こんなに自分を曝け出すのは、君の前だけだ……だから……目を離さないで……見ていて」

 そして僕は、少しずつ、深く、そして激しく求める。苦しそうな表情が、声が、少しずつ変わっていき、まるで硬く閉ざされた蕾が花開いていくように、色鮮やかに変化していく。
 その変化をもっと見たいという欲望が、もっと、もっとと僕を急かし続ける。

「もう……だめ……」
「僕も……もう……っ」

 その瞬間。激しい快感が身体を駆け抜け、貫くよりもさらに奥へと熱が迸る。快感の強さに、重ねていた手を強く握りしめる。

 全ての熱をぶつけて、僕は、ご令嬢を抱きしめる。

「愛してる……」
「ええ……わたくしも……愛してる……」

 その愛の言葉は、重なる唇の中に溶けていった。
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