27 / 34
Bonus track
あの日々をもう一度 前編
しおりを挟む
いつも僕の帰りを嬉しそうに迎えてくれる妻が、珍しく思い詰めたような顔をして、こんな事を言った。
「ねえあなた。わたくし……とても困ってるの」
「え……な、何かあったの!?」
僕は慌ててガシッと妻の両肩に手を置く。そんな僕に驚いた顔をしつつも、妻が打ち明けた悩みは予想外の内容だった。
「あなたの誕生日まで、あともう少しでしょう?わたくしも、あなたがしてくれたみたいに、驚かせて、とても喜ばせられる物を用意するつもりだったわ。それなのに、あなたの事をいくら観察しても、何がいいのか全然分からないの……ねえあなたが欲しいものって一体……何?」
「なんだ……そんな事だったのか」
僕は途端に脱力感に襲われ、妻を抱き寄せ、その肩に頭を載せる。
「そんな事って……わたくしには、何よりも重要な事なのに」
「ご、ごめんよ。てっきり何か、嫌な事でもあったのかと思って」
「ある意味、嫌な事よ。だって、こっそりおじに聞いても全然教えてくれないし、あなたの誕生日はどんどん迫ってくるし……こうして直接聞くしかなくて……そんな自分が情けなし悔しいし……もう……泣けてくるわ……」
そう言うと妻は、僕の胸に顔を埋める。本当に泣き出しそうな彼女の頭を、僕は撫でて慰めるしかない。
「ねえ、お願いだから、僕の事で泣かないで。僕に聞かないで探ってくれようとしただけでも嬉しいよ。それに、僕があまり欲がない男だって、君も知ってるだろう?」
「……知ってるわ。でももしかしたら、ちょっとくらい何かあるかもしれないじゃない」
そう言って唇を少し尖らせる妻。僕はそれがおかしくて仕方ない。目の前に、こんな魅力的な存在がいるのに、他のものを欲しいと思える訳がないのだから。
「僕が欲深くなるのは、君の事ばっかりなんだよ?こうして側にいると、君の事しか頭になくなる。たくさん甘やかしてやりたい、笑った顔を見たい、抱きしめたい……そしてこんな事もしたい」
僕はそう言うと、素早く妻の唇を奪う。彼女は途端に顔を赤くして、僕から目を逸らしてしまう。
「……もう……あなたの事なのに……わたくしまで喜ばせてどうするのよ」
「そんな君を見るのが僕の喜びなんだから、仕方ないだろう?」
「もう……もう……」
言葉に詰まって悔しそうな妻に、僕は謎の達成感に満たされる。
でも、それも束の間のものでしかなかった。妻が放った言葉に、一気に僕は形成不利となった。
「……決めたわ。わたくし、あなたの誕生日まで実家に帰る」
「……え?」
「だって、あなたのいちばん欲しいものがわたくしなら、そうするのが一番喜ばれるでしょう?」
僕は大いに焦る。それは困る。大いに困る。一枚上手な妻に僕は慌てて、逃しはしないという意志で彼女の体を強く抱きしめる。
「そんなのだめだ!君に毎日会えないと死んでしまう!待って、い……今すぐに考えるから!」
「……ふふっ!ええ、頑張って考えてちょうだい?」
焦る僕に、楽しそうに笑う妻。僕は焦る頭で必死に考え、そしてようやく思いついた希望を妻に伝えたのだった。
「ねえあなた。わたくし……とても困ってるの」
「え……な、何かあったの!?」
僕は慌ててガシッと妻の両肩に手を置く。そんな僕に驚いた顔をしつつも、妻が打ち明けた悩みは予想外の内容だった。
「あなたの誕生日まで、あともう少しでしょう?わたくしも、あなたがしてくれたみたいに、驚かせて、とても喜ばせられる物を用意するつもりだったわ。それなのに、あなたの事をいくら観察しても、何がいいのか全然分からないの……ねえあなたが欲しいものって一体……何?」
「なんだ……そんな事だったのか」
僕は途端に脱力感に襲われ、妻を抱き寄せ、その肩に頭を載せる。
「そんな事って……わたくしには、何よりも重要な事なのに」
「ご、ごめんよ。てっきり何か、嫌な事でもあったのかと思って」
「ある意味、嫌な事よ。だって、こっそりおじに聞いても全然教えてくれないし、あなたの誕生日はどんどん迫ってくるし……こうして直接聞くしかなくて……そんな自分が情けなし悔しいし……もう……泣けてくるわ……」
そう言うと妻は、僕の胸に顔を埋める。本当に泣き出しそうな彼女の頭を、僕は撫でて慰めるしかない。
「ねえ、お願いだから、僕の事で泣かないで。僕に聞かないで探ってくれようとしただけでも嬉しいよ。それに、僕があまり欲がない男だって、君も知ってるだろう?」
「……知ってるわ。でももしかしたら、ちょっとくらい何かあるかもしれないじゃない」
そう言って唇を少し尖らせる妻。僕はそれがおかしくて仕方ない。目の前に、こんな魅力的な存在がいるのに、他のものを欲しいと思える訳がないのだから。
「僕が欲深くなるのは、君の事ばっかりなんだよ?こうして側にいると、君の事しか頭になくなる。たくさん甘やかしてやりたい、笑った顔を見たい、抱きしめたい……そしてこんな事もしたい」
僕はそう言うと、素早く妻の唇を奪う。彼女は途端に顔を赤くして、僕から目を逸らしてしまう。
「……もう……あなたの事なのに……わたくしまで喜ばせてどうするのよ」
「そんな君を見るのが僕の喜びなんだから、仕方ないだろう?」
「もう……もう……」
言葉に詰まって悔しそうな妻に、僕は謎の達成感に満たされる。
でも、それも束の間のものでしかなかった。妻が放った言葉に、一気に僕は形成不利となった。
「……決めたわ。わたくし、あなたの誕生日まで実家に帰る」
「……え?」
「だって、あなたのいちばん欲しいものがわたくしなら、そうするのが一番喜ばれるでしょう?」
僕は大いに焦る。それは困る。大いに困る。一枚上手な妻に僕は慌てて、逃しはしないという意志で彼女の体を強く抱きしめる。
「そんなのだめだ!君に毎日会えないと死んでしまう!待って、い……今すぐに考えるから!」
「……ふふっ!ええ、頑張って考えてちょうだい?」
焦る僕に、楽しそうに笑う妻。僕は焦る頭で必死に考え、そしてようやく思いついた希望を妻に伝えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
公爵令嬢のひとりごと
鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。
どんなあなたでも愛してる。
piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー
騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。
どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか?
※全四話+後日談一話。
※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。
※なろうにも投稿しています。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる