五人目のご令嬢

じぇいそんむらた

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あの日々をもう一度 中編

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 僕の誕生日を明日に控えたその日。僕らは、美しい庭園の東屋でふたりきり向かい合って座っていた。

 ふたりの間には、先程僕がいれた紅茶と美味しそうな焼き菓子が並んで、僕らを誘惑している。

「ねえ……本当に、こんな事でよかったの?」
「ええ、いいんですよ。お嬢様」

 何度目か分からない妻の問いかけに、同じく何度目か分からない答えを返す僕。お互いに顔を見合わせて、どちらからともなく、笑い出してしまう。

「こうしてあなたの希望を叶えている今も、不思議な気持ちでいっぱいだわ。まさか誕生日にやりたい事が、執事見習いに戻りたいだなんて」

 誕生日の祝いに僕が望んだ事。それは、執事見習いとしての日々に戻りたいというものだった。

 無茶な望みだとは分かっていた。でも、無理だと断られる覚悟と共に、そんな無茶を言ってみたくなったのは、いつも心に素直に従う妻の姿に憧れのようなものがあったからなのかもしれない。
 だが、そんな僕の望みを、意外にも妻は「そんな事でいいの?」とどこか物足りなさそうな顔をして、それでいいと答えた僕に、苦笑しながら分かったと頷いてくれたのだった。

 そして今、そんな妻……ご令嬢(今は執事見習いとして接しているから、そう呼ぶ事にしよう)は頬杖をつき、楽しそうな顔で僕を眺め、そしてしみじみと言った。

「あなたって……やっぱり変わり者」
「変わり者、そうですか。はは、仕方ありませんよ。毎日一緒に過ごしていれば、似てくるのも当然です」

 僕は大袈裟に肩をすくめて答えると、彼女はすぐに笑い声を上げた。

「まあ!もしかして、わたくしのせいだって言いたいの?」
「さあ、どうでしょうね?」

 そんな風に、僕らはまるで子犬がじゃれ合うように会話を楽しみながら、紅茶と焼き菓子に舌鼓を打つ。

 でも、これはあくまで仕事の合間の休憩時間。飲み干した紅茶のカップを置いて、ご令嬢は残念そうに呟く。

「……まだ仕事が残ってるのに、いつまでも引き止めたら駄目よね」
「惜しんでいただけて嬉しいですよ。でも、いくらお嬢様の頼みを聞いていたと言っても、仕事を放り出したままでは怒られてしまいますからね」
「そうね。メイド長に怒られると寿命が縮んでしまうもの、怒らせないように気をつけないといけないわ」

 きっと何度も怒られたのだろうご令嬢の真剣な表情に、僕は思わず吹き出してしまう。

「お嬢様。そんな事を言ったと知られたら、余計に怒られてしまいますよ?」
「あら、告げ口でもするつもり?」
「いいえ、そんな。ですが、お嬢様がお転婆をやめて下さらない時には、切り札として使いましょうか」
「まあ怖い!ふふ、じゃあ、今日だけは大人しくしておくわ」

 そして、久しぶりの秘密の茶会は、笑い声と共にお開きになった。
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