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本編
4月 その2 邂逅
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三回目の魔術講義。前の講義が長引いたせいで、僕は開始時間ギリギリに教室に駆け込んだ。
教室の中を見渡す。チェリーの隣が空いているのを確認して、迷わずそこに座った。
チェリーは、前の講義の時と同じように、窓の外を頬杖ついて眺めている。でも、僕が隣に座った音にビクッとしてこっちを向くと、僕の顔をまじまじと見て、それからぽつりと呟いた。
「…………こども?」
何でそんな事を言われたのか、僕は理解できなかった。ポカンとする僕に、チェリーは眉間に皺を寄せて、それから子供に言い聞かせるような口調でこう言った。
「ダメでしょこどもがこんなとこに来たら。ここはあんたみたいなこどもが来るような場所じゃないの?分かる?」
(子供扱いされてる……子供に)
僕は驚きで瞬きも忘れてしまう。
(……まさか僕のこと、知らない?)
僕がチェリーの事を知っているように、当然彼女も僕の事を知っていると思い込んでいた。でもどうやら、そうではなかったようだ。
慌てて僕は説明しようとするが、チェリーは苛立った様子で勢いよく椅子から立ち上がる。そして元気よく手を上げ、言った。
「せんせー!なんかちっちゃい子がいるんだけど!」
その瞬間、生徒、そして先生……教室全ての視線がこちらを向いた。
先生は、驚いた顔をして、それからすぐ苦笑いをした。
「チェリー。その子も君と同じ、飛び級で入学した生徒なんだよ。これからは飛び級同士、仲良くしてあげてほしいな」
チェリーは先生と僕を交互に見て、そうして何度目かでようやく、僕の顔を見て止まった。
「……ほんとに?」
僕は無言で頷く。
「こんなこどもなのに!?」
「君だって子供だろ!?」
僕はたまらず反論する。その途端、教室の中は笑い声に包まれ、チェリーは顔を真っ赤にする。彼女は乱暴に椅子に座ると、僕の方なんて絶対に見ないというように、体の正面を完全に窓側に向けてしまった。
そんなチェリーの様子に、僕と先生は顔を見合わせて、苦笑いする。
「さて、誤解も解けたようだし……早速授業を始めようか!」
先生のその一言で、一気に教室内の空気が引き締まった。
――
「なんだそれ。あっちはお前の事知らなかったのかよ!?……ぶっ!!あははは!!」
今日も食堂で僕の隣に座るティティ。僕は彼に午前中の魔術講義での出来事を話すと、彼は大げさなくらいに驚き、そして笑い出した。
「何がそんなにおかしいの」
「だ……だってよ……!ぎゃははは!ははは!」
ティティはひとしきり笑って、しばらくしてヒィヒィと苦しそうに呼吸している。そんなティティに呆れながら僕は言った。
「でも僕だって、チェリーの事を噂で聞いただけで、正式に説明されてたわけじゃないもの。彼女が僕の事を誰からも聞いてなかったとしてもおかしくないよ」
「たしかにあのチビ、いまだに友達がいないって話だからな」
「……そうなの?」
まあ僕も似たようなものか、と思いつつも、驚きを隠せない。
「ああ。どうやら、ちゃんと出てるのは魔術講義だけ。それ以外は専属の教師がついてるって話だ」
てっきり、他の生徒と同じように学んでいると思っていた。でも、そこまで特別扱いされているとは。
「それって……普通の事なの?」
「んなわけねえよ。飛び級のお前だって、他の生徒と同じように講義受けてるだろ」
「うん……」
謎に包まれた同級生、チェリー。僕はそんな彼女に、ますます興味を持った。
教室の中を見渡す。チェリーの隣が空いているのを確認して、迷わずそこに座った。
チェリーは、前の講義の時と同じように、窓の外を頬杖ついて眺めている。でも、僕が隣に座った音にビクッとしてこっちを向くと、僕の顔をまじまじと見て、それからぽつりと呟いた。
「…………こども?」
何でそんな事を言われたのか、僕は理解できなかった。ポカンとする僕に、チェリーは眉間に皺を寄せて、それから子供に言い聞かせるような口調でこう言った。
「ダメでしょこどもがこんなとこに来たら。ここはあんたみたいなこどもが来るような場所じゃないの?分かる?」
(子供扱いされてる……子供に)
僕は驚きで瞬きも忘れてしまう。
(……まさか僕のこと、知らない?)
僕がチェリーの事を知っているように、当然彼女も僕の事を知っていると思い込んでいた。でもどうやら、そうではなかったようだ。
慌てて僕は説明しようとするが、チェリーは苛立った様子で勢いよく椅子から立ち上がる。そして元気よく手を上げ、言った。
「せんせー!なんかちっちゃい子がいるんだけど!」
その瞬間、生徒、そして先生……教室全ての視線がこちらを向いた。
先生は、驚いた顔をして、それからすぐ苦笑いをした。
「チェリー。その子も君と同じ、飛び級で入学した生徒なんだよ。これからは飛び級同士、仲良くしてあげてほしいな」
チェリーは先生と僕を交互に見て、そうして何度目かでようやく、僕の顔を見て止まった。
「……ほんとに?」
僕は無言で頷く。
「こんなこどもなのに!?」
「君だって子供だろ!?」
僕はたまらず反論する。その途端、教室の中は笑い声に包まれ、チェリーは顔を真っ赤にする。彼女は乱暴に椅子に座ると、僕の方なんて絶対に見ないというように、体の正面を完全に窓側に向けてしまった。
そんなチェリーの様子に、僕と先生は顔を見合わせて、苦笑いする。
「さて、誤解も解けたようだし……早速授業を始めようか!」
先生のその一言で、一気に教室内の空気が引き締まった。
――
「なんだそれ。あっちはお前の事知らなかったのかよ!?……ぶっ!!あははは!!」
今日も食堂で僕の隣に座るティティ。僕は彼に午前中の魔術講義での出来事を話すと、彼は大げさなくらいに驚き、そして笑い出した。
「何がそんなにおかしいの」
「だ……だってよ……!ぎゃははは!ははは!」
ティティはひとしきり笑って、しばらくしてヒィヒィと苦しそうに呼吸している。そんなティティに呆れながら僕は言った。
「でも僕だって、チェリーの事を噂で聞いただけで、正式に説明されてたわけじゃないもの。彼女が僕の事を誰からも聞いてなかったとしてもおかしくないよ」
「たしかにあのチビ、いまだに友達がいないって話だからな」
「……そうなの?」
まあ僕も似たようなものか、と思いつつも、驚きを隠せない。
「ああ。どうやら、ちゃんと出てるのは魔術講義だけ。それ以外は専属の教師がついてるって話だ」
てっきり、他の生徒と同じように学んでいると思っていた。でも、そこまで特別扱いされているとは。
「それって……普通の事なの?」
「んなわけねえよ。飛び級のお前だって、他の生徒と同じように講義受けてるだろ」
「うん……」
謎に包まれた同級生、チェリー。僕はそんな彼女に、ますます興味を持った。
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