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第18話 華麗な淑女
しおりを挟むカレンが連れて来られた部屋にはさっきデヴォンを坊ちゃんと言っていたお婆さんがいた。
「婆や、カレン様をお風呂に入れて差し上げて」
とスタナが言うと
「はい。奥様、かしこまりました」
そして、カレンを見ると
「私はニコラー伯爵家に40年努めております、侍女頭のポーラと申します。さあ、カレン様こちらにどうぞ」
と言って、お風呂へ案内された。
お風呂に着くと次々とカレンの服を脱がしていき、お風呂でカレンの身体を磨きあげていく。
その手慣れた手付きにカレンは恥ずかしいと思う隙もなかった。
お風呂から出て、髪を入念に拭くポーラは、嬉しそうに話し出した。
「お若いお嬢さんのお世話なんて久しぶりで本当に嬉しいですわ。エナーお嬢様を思い出します」
「エナーお嬢様?」
「ええ。エナーお嬢様は、現当主エボット様の妹でエリック王子の母君ですわ。国王様に見初められてご結婚された時は、本当に幸せそうでしたけれど、若くして亡くなられてしまって……。しかし、エリック王子があんなにもご立派に成長されて、きっとエナーお嬢様も喜んでおりますわ」
とポーラは優しく微笑むと、カレンの手を優しくとった。
「さあ、奥様と若奥様がお待ちです。こちらへどうぞ」
とカレンはまた違う部屋へ連れて行かれる。そこにはスタナとソーニャがたくさんのドレスを広げてあれこれと話していた。
「奥様、若奥様、カレン様の準備が出来ました」
そう言ってガウン姿で部屋に連れて来られたカレンをスタナとソーニャは満面の笑みで迎えた。
「さあ、カレン様。次はドレスを選びましょう!」
スタナとソーニャは次々にカレンにドレスを当てては、こっちがいいかあっちがいいかと決めかねているようだった。
「やっぱりドレスはブルーがいいわ。品の良いお顔立ちにピッタリよ」
とスタナが言うと
「お義母様、私もそう思いますわ。しかし、うちにあるドレスは濃いブルーなんです!もう少し淡いブルーの方が絶対素敵なのに!!」
とソーニャが悔しそうに言う。
「そうだわ!淡いブルーよ!!ああ、でも、今からじゃあドレスを作る時間が無いわ!なんて事なの!」
とスタナが絶望したように顔を横に振る。
その白熱したやり取りをカレンがあ然と見ていると
ポーラがコホンと咳払いした。
「それではこちらのドレスはいかがでしょうか?」
ポーラが持っていたのは淡いブルーのドレスに繊細な刺繍が施されたドレスだった。
「まあ!これよ!この淡いブルーの色合い!上品な柄!とっても素敵だわ!」
とスタナは興奮して言った。
「でも、このドレス一体誰の物ですか?私の物ではないし、お義母様のものでもありませんよね?」
「ええ、そうね。ポーラ、このドレスはどうしたの?」
スタナの疑問にポーラは咳払いをして答えた。
「これはエナーお嬢様が独身時代にお召しになったドレスです」
「まあ!そうだったの!?とっても素敵だけれど、エナー様の物を私達の一存で使うわけにはいかないわ」
とスタナは言った。するとポーラは得意気な顔になって言った。
「それなら、旦那様とエリック王子に許可を頂いておりますので、大丈夫です!」
「まあ!そうなの!?エリック王子が許可されたのなら、使わせて頂きましょう!」
そう言ってスタナは喜んで一つ手を叩くと、侍女達によってカレンは早急に華麗な淑女へと仕上げられていった。
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