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第19話 ダンス

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 すっかりパーティーの準備が終わり、エリック達はカレン達が来るのを待っていた。すると先にスタナがやってくる。

「お待たせ。さあ、今日の主役が登場するわよ」

 と楽しそうな顔で言った。すると

 真ん中のテリーと両側に淡いブルーのドレスを着たカレンとソーニャが手を繋いだ入ってきた。

 音楽隊の曲が部屋に流れ、皆が拍手を送る。
 テリーは誇らしそうにテーブルまで歩いていき、真ん中の席に座る。

 その間、皆はテリーに注目していたが、エリックは着飾ったカレンに見惚れていた。

 カレンは席に座ったテリーの手を離してエリックの隣に座ると、テリーの誕生日パーティーが始まった。

 大きなケーキが運ばれて来て、テリーがろうそくを吹き消すと拍手が沸き起こる。そして、大きなプレゼントの箱を貰うとテリーはジャンプして喜んだ。
 そして、皆で食事をしながら歓談が始まると、ニコラー伯爵がテリーに聞いた。

「テリー、誕生日パーティーは楽しいか?」

「うん!とっても!!でも、エリック王子は僕の誕生日パーティーなのにさっきからカレン様ばかり見てるんだよ?今日の主役は僕なのに!!」

 と言って頬を膨らませた。

 それにはみんなが大笑いし、エリックは照れくさそうにカレンを見た。
 そんなエリックにカレンもなんと言っていいのか分からず、顔を赤くして俯いた。

「テリー、今日のカレン様はとっても美しいから、エリックが見惚れるのは仕方がないよ」

 とシダンはテリーに言い聞かせる。

「そっか!お父様。僕もカレン様の事、すっごく綺麗だって思ったよ!将来、僕のお嫁さんになってくれるかな?」

「え?ハハハッ。カレン様はもうエリックと結婚しているからなぁ」

 と困ったようにシダンが答える。

「そうか!エリックはカレン様が大好きだから結婚したんだね?」

 と純粋な眼差しで見られたエリックは

「そうだな」

 と返した。

 テリーに合わせて言ってるだけなのは分かってるけど、無駄にドキドキさせられるわ

 嘘だと分かっているのにカレンは赤くなった顔をしばらく上げる事が出来なかった。



 食事が終わると音楽隊のハーモニーに耳を傾けたり、歓談を楽しんだりと皆が自由に過ごし始める。

 カレンはテリーとすっかり仲良くなり、二人で音楽隊の曲に合わせてダンスをしていた。小さな紳士相手のダンスは大変そうだが、楽しそうなカレンをエリックは微笑ましく見つめていた。

「そんなにカレン様ばかり見てると、またテリーに怒られるぞ」

 カレンを見つめるエリックをからかったのたはデヴォンであった。

「うるさい。自分の妻に見惚れて何が悪いんだよ?」

 と言ったエリックにデヴォンは一瞬、少し驚いた顔をした。

「あのドレス、母さんが若い頃に着ていたものらしい」

「ああ、聞いたよ。良かったのか?」

「あんなに似合っているのに駄目なわけ無いだろ……」

 エリックは嬉しそうに微笑んで言うと、踊り終わったカレンの所に向かってダンスに誘った。

「え、私ダンスなんて踊れないですよ」

「今、テリーと踊っていただろう?」

「あれは子供との真似事で……、本格的なのは分からないわ」

 そうこう言っているうちに始まった音楽に合わせてエリックは、カレンをリードしてダンスをし始める。
 焦るカレンをクルクル回してエリックは踊らせる。

「え!?わ!?」

 と戸惑いながらも、カレンもエリックのリードに合わせてステップを踏み始めた。

「フフッ、なんだか楽しくなってきたわ」

 と分からないなりに踊りを楽しみ始めるカレンにエリックも嬉しそうにする。
 二人が踊り終わると、それを見ていたニコラー家の人々から拍手が沸き起こった。

 二人は目を見合わせて驚きながら、舞踏会さながらにお辞儀をして部屋を出るとテラスに移動した。

「よく分からなかったけど、楽しかったわ」

 カレン充実した顔で言った。

「なかなかよく踊れていたよ。才能があるんじゃないか?」

 とエリックが褒めると

「本当!?」

 とカレンは嬉しそうに言った。

「ああ、あれなら、王宮の舞踏会でも十分踊れるぞ」

「そうなんだ。楽しみ、あ……」「あ……」

 二人の表情が固まった。魔王を倒した後、離縁する二人が王宮の舞踏会で一緒に踊る事などないのだと悟ったからだ。

 少し気まずい空気の後、エリックが話し出した。

「そのドレス、よく似合っているな」

「あ、これおエリック王子の母様のドレスだって聞いて……、私が着て良かったんですか?」

「ああ……。綺麗で見惚れたよ」

 そんな事をエリックに面と向かって言うと思わず、カレンは赤くなって焦ってしまう。

「え?な、何言ってるんですか」

 焦るカレンにエリックは優しく笑うと、カレンを抱きしめた。

「エ、リック王子?」

「少しだけ……こうさせてくれ……」

「え?は、はい……」

 月明かりに照らされた二人は、しばらくそのまま動く事はなかった。

「悪い。母の事を思い出して、少し感傷的になったんだ」

 そう言って、カレンを離したエリックは泣きそうな顔で笑っていて、カレンは胸を締め付けられた――

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