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第22話 まだ目覚めない
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カレンは夢を見ていた――
エリックと王宮の舞踏会でダンスを踊っている夢。
それは、楽しくて、嬉しくて、幸せで……目が合うとエリック王子が微笑んで……、しかし、それは突然、真っ暗な恐ろしいモノに覆われてしまった――
カレンは怯え、さっきまで一緒に踊っていたはずのエリックは、倒れて動かない。
早く、加護を授けなきゃ!
そう思うのに、カレン自身も身体を動かす事が出来ない。
どうして、動かないの!?エリック王子を助けなきゃいけないのに!どうして!?
絶望したカレンはエリックの名を叫ぶ。
「エリック王子!エリック王子!!エリック!!――――」
◇◆◇
カレンはハッとしてゆっくりと目を覚ました――
ここどこ……?
魔界の谷間にいたはずなのに……
ベッドに寝かされていて、温かい部屋の中である事にカレンは今までの事が全て夢だったのではないかと思った。
「カレン様!」
すると、ポーラが目を覚ました事に気が付き、驚きと共に泣き出しそうに言った。
ポーラがいるという事はここは、ニコラー伯爵家……。
カレンはゆっくりと起き上がるが、全身に鈍い痛みが走り、それが魔王と戦った事が現実であった事を実感させた。
すると、ヘイリーが杖を付きながら、やって来た。
「カレン様、お目覚めになられて本当に良かった……」
ヘイリーはカレンのベッド脇に崩れるように座ると安堵したように涙を流した。
「ヘイリー、あなたも無事で良かった。それであとの二人は?」
カレンが聞くと、コンコンと扉がノックされ、ニコラー伯爵一家と一緒にデヴォンが兄のシダンに支えられながら、顔を出した。
「カレン様……、良かった……」
デヴォンもカレンの顔を見ると安堵して涙ぐんだ。
「良かった。デヴォンも無事だったのね……」
カレンもデヴォンの無事を確認して、安心するが、ここにエリック王子がいない事が気になった。するとデヴォンが苦しそうな顔付きで言った。
「エリックは……、まだ目覚めていません……」
「そんな……」
カレンはスタナとソーニャとに支えられ隣の部屋に移動すると、小さく呼吸をしてベッドに眠るエリックがいた。見るからに状態が悪そうなエリックを前にカレンは焦った。
早く……加護を授けなきゃ!
エリックの身体に触れて加護を授けようとするカレンの手をヘイリーが優しく握り、止めた。
「カレン様、加護を授けるのは暫しお待ち下さい。まだ、あなたの身体も目覚めたばかりで、万全ではないのです。そんな状態では、あなたがどうなるかわかりません」
「で、でもエリックを治せるのは私しか……」
と涙ながらに訴えると、ヘイリーは分かっていると頷いた。
「まずは、カレン様がお身体を治して下さい。お願い致します」
ヘイリーも涙ながらにそう言って、カレンも少し冷静さを取り戻す。
それから、どうやって魔界の谷間からニコラー伯爵家に辿り着いたのかを聞いた。
なんとか、意識のない私とエリックを連れて森を出たデヴォンとヘイリーだったが、そこでデヴォンも力尽き、ヘイリーは意識のない私を抱えてニコラー伯爵家に急いだそうだ。
すると、外の様子がおかしいと感じたニコラー伯爵とシダンもこちらに向かってくる途中だったようで、ヘイリーから話を聞いて、森の前で倒れているエリックとデヴォンを救出してくれたのだときいた。
そして、カレンは起きてからずっと気になっていた事を聞いた。
「……魔王は、どうなったの?」
その質問に皆の顔が暗く歪み、デヴォンが答えた。
「魔王はまだ、生きています。それどころか、エリックが与えた攻撃がかなり効いたのか、魔王は錯乱状態で国は今、魔王の放つ闇に取り込まれつつあり、それに伴い、力を増した魔獣が国中を暴れまわっている状態です」
そして、続いてニコラー伯爵が言いにくそうに話し出した。
「それから……、国王とジョアンナ王妃、それからヴァーン王子が、エリックとカレン様を見舞う為に、こちらに向かっていると知らせが来ました。数日中には到着するでしょう……」
その話にカレンは青い顔になる。
だって、ジョアンナ王妃はエリックが魔王討伐に失敗すればいいと思っているような人……。嫌な予感しかしない――
エリックと王宮の舞踏会でダンスを踊っている夢。
それは、楽しくて、嬉しくて、幸せで……目が合うとエリック王子が微笑んで……、しかし、それは突然、真っ暗な恐ろしいモノに覆われてしまった――
カレンは怯え、さっきまで一緒に踊っていたはずのエリックは、倒れて動かない。
早く、加護を授けなきゃ!
そう思うのに、カレン自身も身体を動かす事が出来ない。
どうして、動かないの!?エリック王子を助けなきゃいけないのに!どうして!?
絶望したカレンはエリックの名を叫ぶ。
「エリック王子!エリック王子!!エリック!!――――」
◇◆◇
カレンはハッとしてゆっくりと目を覚ました――
ここどこ……?
魔界の谷間にいたはずなのに……
ベッドに寝かされていて、温かい部屋の中である事にカレンは今までの事が全て夢だったのではないかと思った。
「カレン様!」
すると、ポーラが目を覚ました事に気が付き、驚きと共に泣き出しそうに言った。
ポーラがいるという事はここは、ニコラー伯爵家……。
カレンはゆっくりと起き上がるが、全身に鈍い痛みが走り、それが魔王と戦った事が現実であった事を実感させた。
すると、ヘイリーが杖を付きながら、やって来た。
「カレン様、お目覚めになられて本当に良かった……」
ヘイリーはカレンのベッド脇に崩れるように座ると安堵したように涙を流した。
「ヘイリー、あなたも無事で良かった。それであとの二人は?」
カレンが聞くと、コンコンと扉がノックされ、ニコラー伯爵一家と一緒にデヴォンが兄のシダンに支えられながら、顔を出した。
「カレン様……、良かった……」
デヴォンもカレンの顔を見ると安堵して涙ぐんだ。
「良かった。デヴォンも無事だったのね……」
カレンもデヴォンの無事を確認して、安心するが、ここにエリック王子がいない事が気になった。するとデヴォンが苦しそうな顔付きで言った。
「エリックは……、まだ目覚めていません……」
「そんな……」
カレンはスタナとソーニャとに支えられ隣の部屋に移動すると、小さく呼吸をしてベッドに眠るエリックがいた。見るからに状態が悪そうなエリックを前にカレンは焦った。
早く……加護を授けなきゃ!
エリックの身体に触れて加護を授けようとするカレンの手をヘイリーが優しく握り、止めた。
「カレン様、加護を授けるのは暫しお待ち下さい。まだ、あなたの身体も目覚めたばかりで、万全ではないのです。そんな状態では、あなたがどうなるかわかりません」
「で、でもエリックを治せるのは私しか……」
と涙ながらに訴えると、ヘイリーは分かっていると頷いた。
「まずは、カレン様がお身体を治して下さい。お願い致します」
ヘイリーも涙ながらにそう言って、カレンも少し冷静さを取り戻す。
それから、どうやって魔界の谷間からニコラー伯爵家に辿り着いたのかを聞いた。
なんとか、意識のない私とエリックを連れて森を出たデヴォンとヘイリーだったが、そこでデヴォンも力尽き、ヘイリーは意識のない私を抱えてニコラー伯爵家に急いだそうだ。
すると、外の様子がおかしいと感じたニコラー伯爵とシダンもこちらに向かってくる途中だったようで、ヘイリーから話を聞いて、森の前で倒れているエリックとデヴォンを救出してくれたのだときいた。
そして、カレンは起きてからずっと気になっていた事を聞いた。
「……魔王は、どうなったの?」
その質問に皆の顔が暗く歪み、デヴォンが答えた。
「魔王はまだ、生きています。それどころか、エリックが与えた攻撃がかなり効いたのか、魔王は錯乱状態で国は今、魔王の放つ闇に取り込まれつつあり、それに伴い、力を増した魔獣が国中を暴れまわっている状態です」
そして、続いてニコラー伯爵が言いにくそうに話し出した。
「それから……、国王とジョアンナ王妃、それからヴァーン王子が、エリックとカレン様を見舞う為に、こちらに向かっていると知らせが来ました。数日中には到着するでしょう……」
その話にカレンは青い顔になる。
だって、ジョアンナ王妃はエリックが魔王討伐に失敗すればいいと思っているような人……。嫌な予感しかしない――
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