天国への階段

高嗣水清太

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力づくで

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「っ!」

 ルスタヴェリの手が伸びてくる。

「お前をこのまま死なせるのは惜しい……」

 そう言って、白い指先がこちらの頬に触れようとした瞬間、オリヴィエはその手を払い除けていた。
 パシッという乾いた音が響き、ルスタヴェリの顔が不快げに歪む。

「私は君のものにはならないよ」
「なぜだ? 脆弱な人間でいては死ぬだけだ」

 ――確かにヴァンパイアになれば、この病も立ち所に癒えるのだろう。
 だが、だからといってオリヴィエは彼のものになるつもりなど毛頭なかった。
たとえ死が迫っていようとも、自分以外の誰かに命を委ねるのは嫌だったのだ。

「……私が欲しいと言うなら、力づくで奪ってみせろよ」

 挑発的に微笑んでみせると、ルスタヴェリは赤い唇を吊り上げて笑う。

「強気なのは嫌いじゃないぞ、オリヴィエ・ロゼヴェルト。お前のそういうところが昔から好きだ」
「私は嫌いだね」
「相変わらずつれない男だな」

 ルスタヴェリは再び手を伸ばすと、今度はその手でオリヴィエの腕を掴んだ。そのままぐっと引き上げられて、抱き締められる形になる。

「……何の真似かな?」

 オリヴィエは眉根を寄せて、ルスタヴェリを見上げた。

「人間の愛情表現はこうするのだろう?」
「……」

 ルスタヴェリの表情からは何を考えているのか読み取れない。オリヴィエは困惑した。

「君の愛し方は、間違っていると思うけど」
「そうなのか?」
「少なくとも、私に抱擁を返すような趣味はない」
「ほう……。なら、どうしたらお前は私を受け入れてくれるのだ?」

 ルスタヴェリは腕の中のオリヴィエの顔を覗き込むと、彼の顎に手をかけて上向かせた。
 ルビーのような瞳が間近に迫る。

「……キスでもしてみるか?」

 ルスタヴェリの吐息が顔にかかる距離だった。

「いや、それこそ愛し方が違う」

 それは恋人にするものだ。
 オリヴィエは苦笑いを浮かべると、ルスタヴェリの胸を押し返した。

「いい加減離してくれないか。君に触られたら、もっと病が進行して腐りそうだ」
「酷いことを言うな」

 ルスタヴェリはくすりと笑って、オリヴィエを解放した。そしてベッドの縁に腰掛ける。

「お前は本当に面白い奴だな、オリヴィエ」
「それはこっちの台詞だよ」
「もっと早くに出会いたかったものだ」
「…………」
「お前はどうしてハンターになったんだ?」

 ルスタヴェリは唐突にそんなことを尋ねてきた。

「いきなり何の話だい」
「ずっと聞きたいと思っていた」
「……別に大したことじゃないさ。成り行きでそうなっただけだよ」

 金も学もない孤児だったオリヴィエがつける職は、ヴァンパイアハンターだけだった。それだけの話だ。

「では、お前はヴァンパイアを滅ぼす為にハンターをしているわけではないのだな」
「まぁ、そういうことになるのかな」
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