3 / 13
私をこんな風にしたのは
しおりを挟む
ヴァンパイアは人間にとって天敵だ。
命ある人間はすべてヴァンパイアの食料であり、種の存続を脅かす存在だからである。そこに、例外はない。
故に、ヴァンパイアを殺すことはハンターの使命であり宿命だ。けれど、ヴァンパイアを滅ぼしたいと願う者はそう多くはないだろう。
ヴァンパイアは人間よりも遥かに優れた種族だ。人間より遙かに長命であり、魔力も桁違いである。人間には到底及ばない力を持ち、不死性さえ持ち合わせている。ヴァンパイアは生まれながらにして勝ち組なのだ。人間のように生まれたときから負け続けている生き物ではない。だからこそ、人間にとって彼らは恐ろしい存在であり、憧憬を抱く存在でもあった。
オリヴィエはヴァンパイアを憎んでいるわけではない。ただ、彼らに振り回される人間が可哀想だと思うのだ。
「……君だって、人間を滅ぼしたいとは思っていないだろう」
オリヴィエの言葉を聞いたルスタヴェリは、目を丸くする。それからくつくつと喉の奥で笑った。
「それはどうかな。私はいつだって世界を滅ぼしたいと思っているぞ」
ルスタヴェリは歌うように言葉を紡いだ。
「私をこんな風にしたのは、人間だ」
ルスタヴェリは自らの両手に視線を落とすと、それを見つめる。
「私はもう、人間を許せない。だから、いつかこの手で全てを終わらせようと思っている」
「……」
「お前は、私のこの感情を理解してくれると思ったのだがな」
「……残念だけど、私は君ほどに人間は嫌いじゃないよ。そもそも私自身が人間だ」
「お前は、本当に冷たい男だ」
「よく言われるよ」
「だが、そこが良いところだとも思う」
ルスタヴェリは口元を緩める。
「お前なら、私の望みを叶えてくれそうだ」
「……君は、何をするつもりなんだい?」
「その時が来たら教えてやるよ」
ルスタヴェリはそう言うと、立ち上がった。そして窓辺まで歩み寄ると、外を見下ろす。
白い綿菓子のようなものがしんしんと降っていた。
「……雪か」
「ああ、今年最初の雪だね」
「積もるか?」
「どうだろうね。ここらは山に囲まれているから、かなり降るとは思うよ」
「そうか」
ルスタヴェリは短く呟いた。
「また来る」
「……もう来なくていいよ」
「私はお前に会いに来るぞ」
ルスタヴェリは楽しげに笑うと、窓から外へ飛び出していった。その姿はあっという間に闇の中に溶け込んで見えなくなる。
オリヴィエはため息をつくと、布団の中へと潜り込んだ。
「寒い……」
まだ熱があるのか、全身が燃えるように熱かった。
命ある人間はすべてヴァンパイアの食料であり、種の存続を脅かす存在だからである。そこに、例外はない。
故に、ヴァンパイアを殺すことはハンターの使命であり宿命だ。けれど、ヴァンパイアを滅ぼしたいと願う者はそう多くはないだろう。
ヴァンパイアは人間よりも遥かに優れた種族だ。人間より遙かに長命であり、魔力も桁違いである。人間には到底及ばない力を持ち、不死性さえ持ち合わせている。ヴァンパイアは生まれながらにして勝ち組なのだ。人間のように生まれたときから負け続けている生き物ではない。だからこそ、人間にとって彼らは恐ろしい存在であり、憧憬を抱く存在でもあった。
オリヴィエはヴァンパイアを憎んでいるわけではない。ただ、彼らに振り回される人間が可哀想だと思うのだ。
「……君だって、人間を滅ぼしたいとは思っていないだろう」
オリヴィエの言葉を聞いたルスタヴェリは、目を丸くする。それからくつくつと喉の奥で笑った。
「それはどうかな。私はいつだって世界を滅ぼしたいと思っているぞ」
ルスタヴェリは歌うように言葉を紡いだ。
「私をこんな風にしたのは、人間だ」
ルスタヴェリは自らの両手に視線を落とすと、それを見つめる。
「私はもう、人間を許せない。だから、いつかこの手で全てを終わらせようと思っている」
「……」
「お前は、私のこの感情を理解してくれると思ったのだがな」
「……残念だけど、私は君ほどに人間は嫌いじゃないよ。そもそも私自身が人間だ」
「お前は、本当に冷たい男だ」
「よく言われるよ」
「だが、そこが良いところだとも思う」
ルスタヴェリは口元を緩める。
「お前なら、私の望みを叶えてくれそうだ」
「……君は、何をするつもりなんだい?」
「その時が来たら教えてやるよ」
ルスタヴェリはそう言うと、立ち上がった。そして窓辺まで歩み寄ると、外を見下ろす。
白い綿菓子のようなものがしんしんと降っていた。
「……雪か」
「ああ、今年最初の雪だね」
「積もるか?」
「どうだろうね。ここらは山に囲まれているから、かなり降るとは思うよ」
「そうか」
ルスタヴェリは短く呟いた。
「また来る」
「……もう来なくていいよ」
「私はお前に会いに来るぞ」
ルスタヴェリは楽しげに笑うと、窓から外へ飛び出していった。その姿はあっという間に闇の中に溶け込んで見えなくなる。
オリヴィエはため息をつくと、布団の中へと潜り込んだ。
「寒い……」
まだ熱があるのか、全身が燃えるように熱かった。
0
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
声なき王子は素性不明の猟師に恋をする
石月煤子
BL
第一王子である腹違いの兄から命を狙われた、妾の子である庶子のロスティア。
毒薬によって声を失った彼は城から逃げ延び、雪原に倒れていたところを、猟師と狼によって助けられた。
「王冠はあんたに相応しい。王子」
貴方のそばで生きられたら。
それ以上の幸福なんて、きっと、ない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる