天国への階段

高嗣水清太

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私はお前が好きだ

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「……」

 夜空に浮かぶ月を見つめながら、オリヴィエは物思いにふけっていた。

『お前の命が尽きるとき、また現れる』

 そう言って去っていったあの男――ルスタヴェリは、一体どういうつもりなのだろう。
(あれから、本当に一度も姿を見せないじゃないか)
 病のせいで、さすがにもう出歩くのは難しいオリヴィエには、こちらから出向くことは出来ない。

 待っているしか出来ないことが、こんなに歯痒いとは思わなかった。
 しかし幸い、というのも微妙だが、ルスタヴェリの姿が見えなくても、常に視線を感じどこかで見ているような気がしてならなかったことが、オリヴィエを落ち着かせていた。
 ルスタヴェリは律儀にもあの言葉を守っているのだろう――。そう思ったからだ。

 だから、オリヴィエは今日もルスタヴェリの姿を見ることはなく、一日が終わるのだろうと思っていた。けれど、予想外のことはままあるものだ。
 突然、まるで瞬間移動したかのように目の前にルスタヴェリが現れ、オリヴィエは息を止めて驚いた。それだけ、唐突にルスタヴェリは現れたのだ。

 ルスタヴェリはいつものように冷静な態度だったが、纏う雰囲気がどこかいつもと違い、オリヴィエはそっと眉を寄せる。
 無表情が常だったルスタヴェリにしてはどこか不安げで、何かに耐えるようにも見えた。

「……ルスタヴェリ」
「なんだ?」

 声をかけると、以外にもすぐに返事があった。

「本当に来てくれたんだね」
「あぁ。約束通り会いに来たぞ」
「ありがとう……」

 お礼を言うと、ルスタヴェリが目を細めた。そして、ゆっくりと近づいてくる。

「また顔色が悪くなったな」

 頬に手を当てられて、思わずビクリとオリヴィエの身体が跳ねる。ルスタヴェリの手は冷たかった。

「そんなに怯えなくていい。取って食ったりしない」

 苦笑するルスタヴェリに、オリヴィエは首を振った。

「違うよ。君に触られるとドキドキしてしまうだけだ」

 正直に言うと、ルスタヴェリは驚いた顔をした後、困惑したように視線を落とした。

「……それは、困るな」
「どうして?」
「私もお前に触れると緊張する。触れた部分が熱くなるのを感じると、妙に落ち着かない気分になるのだ」
「え……君、それは……」 

 ルスタヴェリの答えを聞いて、オリヴィエは戸惑ってしまった。それではまるで……。

「私はお前に触れたい。お前も、私に触れられたいと思っているか?」
「……!」

 ルスタヴェリの言葉に、オリヴィエの鼓動が激しくなる。まさか、ルスタヴェリも同じことを考えていたなんて思わなかったのだ。
 オリヴィエの胸の中に、喜びが広がっていく。

「私はお前が好きだ。だからお前が欲しかったのだ」





 次で完結
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