裏切られ死に復活した魔王は、勇者へ復讐する

さめ

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001.裏切りと死

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「これは・・・どういうことだ」

 ここは難攻不落の魔王城のはず。

 だが眼前には無傷の勇者パーティーがいる。

 勇者は魔王討伐という、世界最高のトロフィーを目の前にし、その名ふさわしくない下卑た顔をしていた。

「あんたが魔王か。初めましてだな」

 軽口に、女しかいないパーティー。言わずとも分かるその人間性…。
 こんな男に人間は自分達の未来を託したというのか。

「全てのトラップ、我が最強の配下である四天王を突破し、無傷で来るとは少々驚いたぞ」

「お褒めに預かり恐縮だな」

 その言葉と同時に踏みこんでくる勇者。

 王座の間に響く剣と剣がぶつかり合う音。流石の身体能力と言うべきか…軽い男だが、その実力は本物のようだ。しかし、小奴の動きは人間の域をでていない。

「・・・ふむ」 

 魔王と呼ばれた我の実力は伊達ではない。この身は配下の作りあげた呪詛によって守られている。人間には毒だが、魔族の王にとっては薬となるのだ。

 配下が世界各地に隠した、魔具を組み合わせた剣でなければ死ねない呪詛、それが我の守りとなっている。

 勇者の一太刀が届くが、それは我の身を傷つける事は叶わなかった。

「大した腕ではある・・・が、それだけだ。もはや我には敵わないと悟ったであろう」

 小奴を倒せば、人間の士気は下がり魔族による支配も進むであろう。そうすれば、いよいよ我らの時代だ。

「・・・その女共も戦いに参加させてはどうかな? さすれば少しは戦いというものになるかもしれんぞ」

「あいつ等は後で俺のハーレムになる女達だ。俺以外では魔王との戦いにすらならないからな。傷つけさせるわけにはいかね~んだよ」

「ほぅ…先程からの戯れが、戦いだと思っていたのか?」

 見て分かるほど機嫌を損ねた勇者。事実、勇者は傷を増やしているが、未だこの身は傷一つない。

 実力差は明白である。

「そうだな・・・戯れは終わりにするか」

 そう言った勇者が取り出した剣を見て、この戦いが始まってから初めてだろう、自身に動揺が走るのを感じた。

「・・・何故貴様がそれを持っている? そのシャムシールの剣を・・・」

 その動揺が油断となり、命取りになった。

 あっという間に距離を詰められ、我が身を貫かれた。

「あばよ、魔王」

 人間の前で、この身を地面に横たわらせる屈辱。だが今はこれよりも大事な事がある。

「答えろ…その剣を一体何処で…」

 朽ち果て始めた我が身が最後に選んだのは、完全に消え去る前に、この疑問を解決したいという欲求だった。

「・・・これか? そこにいる奴等に貰ったんだが?」

 ケラケラと笑い、勇者が指さすその先、そこには無傷の四天王の姿があった。

 全員が薄く笑みを浮かべている。

 その時我は全てを悟った。

「そうか・・・我は配下に裏切られたのか」

 人に見つからぬように隠しても、隠した者が場所を明かせばそれも意味をなさない。トラップをいくら配置しようと、それを知る者が教えれば役には立たない。強者を待機させようとも、戦わなければただの送り人にしかならない。

「・・・お・・まえ・・・らは、・・・な・・・ぜ」

 その答えを聞けぬまま、我は一度死を迎えたのだった。
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