裏切られ死に復活した魔王は、勇者へ復讐する

さめ

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002.復活と憎悪

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「ここは・・・何故?」

 今一度光の世界へと舞い戻る。

 ここは玉座。我が死んだあの玉座の間であった。

「魔王様・・・。復活は成功された・・・か」

 この声は・・・ゆっくりと声のする方へ顔を上げる。
 そこにいたのは、蛇の体躯に胴体に顔をつけ、頭部には牙の生えた口しかない、四天王であり第2軍団の指揮官を務めていたアガリアレプトがいた。

「これは・・・どういうことだ?」

 玉座の間を見渡しても、他の配下は見当たらぬ。

 そもそもとして、こやつも我の今際の時に裏切っていた筈なのだが。

「っ魔王様・・・わたくしめの話を・・・」

 王座の叩く音が木霊する。

「我を裏切った者の言葉を、我が聞くとでも思ったか」

「お許しを・・・」

 アガリアレプトは全身を震わしている。

 拳を握り締めるが、ここで初めて体に違和感がした。

 自分の体をよく見て見ると、人間の男の体になっていたのだ。

「なんだこれは? なんなのだ!?」

「お許し頂けるのであれば、わたくしめがご説明を・・・」

 今がするアガリアレプトの体は、まるで奴隷のようにボロボロになっている。

 まずは状況把握か。

「・・・今しばらく貴様の発言を許そう」

「ありがたき幸せ・・・魔王様」

  アガリアレプトが語った話は、魔族に起きた事とはとても思えない、何とも情けない話であった。

 勇者は四天王とそれぞれ秘密裏に接触、そこでそれぞれの四天王個別に、魔王を倒し新たな魔王になって人間と平和的な統治を進める事を持ちかけていた。

 4枚舌の話に乗せられた四天王とその配下は、魔具を集めてシャムシールの剣を完成させ、それを勇者に渡したと。

 しかし我が倒されてから、四天王同士で同じ取引が行われていたことが発覚し、勇者を亡きものにしようとしたが、返討にあって力を奪われた揚句、配下の者と一緒に奴隷となって人間に使える事になったという。

「初めから勇者は・・・わたくし達を新たな魔王にする気はなく、奴隷として使役する事までも計画していたのです」

 アガリアレプトがまるで奴隷のようになっていたのは、そういう訳であったか。

「我を復活させた理由を言え」

「魔王様・・・どうか・・・魔族を・・・お救い下さい」

「我が配下として、四天王まで上り詰めながら、なんと情けないことか」

 顔を手で覆う時に見える、人間の手。まだ聞かねばならぬ事があった。

「どうやって、我を復活させた? 何故人間の体躯なのだ」

「ルキフグスが命を魔力に変換し、死産した赤子を媒介に復活の儀を行いました。人間の赤子を媒介にした為、人の体躯となってしまい申し訳ございません」

 四天王であり宰相についていたルキフグス。確かに奴には最も多くの知識と魔術を与えたが。自らも新しい魔術を作りだしていたか。

「そうか・・・それは大義であったな」

「ありがたき幸せ」

 玉座から立ち上がり、慣れない人の体で歩き出す。

 その姿を、アガリアレプトは不安げに見ている。

「魔王様・・・魔族を・・・お救い下さるのですか?」

「”フラム・デ・オンフェアー”」

 呪文を唱えると、アガリアレプトが業火に包まれる。

「あああああ! 何故!? 魔王様! わたくしは再度忠誠を!」

 最上級の炎の魔術。力を失っているとはいえ、四天王であるアガリアレプトを灰にするのに、数秒の時間しかかからなかった。

「何故だと? 甘言に惑わされるような魔族などいらぬ。・・・いや、もはや魔族などに興味など無い。だが、我が配下を騙し、我に屈辱を味あわせた勇者、貴様だけは絶対に許さぬ」
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