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しおりを挟む会場へと入った私達は、パーティーが始まるまでたくさんの貴族達から挨拶をされた。しかし誰も私のことには気がつかない。それも当然のことで、私は結婚前も後も社交の場に一度も出たことがないのだ。学園で同級生だった人も私の髪の色が違うからか気づかないようだ。
そして挨拶もそこそこのところで王族の方々が入場し、国王様が言葉を述べられてからパーティーが始まった。
私達はすぐに王族の方々へ挨拶をしに王族席へと向かった。
「本日はお招き頂きありがとうございます」
「おお、アレス国のシェイン殿。遠路はるばる我が国の建国記念パーティーへの参加誠に感謝する。どうかゆっくりしていってくれ」
「ありがとうございます。それとこの場で紹介させてください。こちらは私の婚約者のセレーナ・スターリン侯爵令嬢です」
「お初にお目にかかります。セレーナ・スターリンと申します。本日は誠におめでとうございます」
「ほぉ、そなたが…。いや、ありがとう。スターリン侯爵令嬢もぜひ楽しんでいってくれ」
「ありがとうございます」
どうやら国王様の反応から事前に私のことを調べていたようだが、最後までスターリン侯爵令嬢として対応してもらえたのでよかった。
次は王太子ご夫妻への挨拶だ。王太子ご夫妻の前でシェインが挨拶を述べる。
「本日はお招き頂きありがとうございます」
「こちらこそ遠いところを来てくださり感謝します。…そちらがシェイン殿の婚約者殿ですか?」
「…ええ、ご紹介します。セレーナ・スターリン侯爵令嬢です」
「お初にお目にかかります。セレーナ・スターリンと申します」
「君がサイラスの…」
「っ!」
王太子殿下も私のことを知っていたようだ。けれど国王様と違って王太子殿下の私を見る目はどこか冷たく感じる。
「サイラスは苦しんでいるというのに君はのうのうと…。君が妻としての義務を放り出して出ていったせ「王太子殿」っ!」
「それ以上の発言は控えられた方がよろしいかと。このままでは王太子殿自らがこの国の法を蔑ろにすることになりますよ」
「シェイン…」
声でシェインが怒っているのが分かる。たしかに出ていったのは私だが先に義務を放り出したのはあちらだ。だから私はこの国の法に則って権利を行使しただけで、責められるようなことは何もない。
カリスト侯爵は王太子殿下の側近であり学園の同級生で友人であるから肩を持ちたくなるのだろう。しかし法を蔑ろにするような発言は次期国王としてふさわしくないし、公私混同はよろしくない。
さすがに王太子殿下もシェインの言葉で自分の発言がまずかったことに気がついたようだ。
「…大変失礼した」
「いえ、こちらこそ失礼しました」
「いや、助言感謝する。…後で時間をもらえないか?スターリン侯爵令嬢に会わせたい人がいるんだ」
「それは…。かしこまりました」
「王太子殿、セレーナ一人だけだなんて言いませんよね?当然私も同席させてもらいますよ」
「…ああ分かった。後で声をかけるからそれまではゆっくりしていってくれ」
「ありがとうございます」
王太子殿下の言う会わせたい人というのは十中八九あの人だろう。もう二度と会うことはないと思っていたが、王太子殿下からの頼みでは断ることができない。会っても何とも思わない自信はあるが、シェインが同席してくれるのは心強い。
挨拶が終わった後、私とシェインはお互いに先ほどの話には触れずパーティーを楽しんでいた。さすが王家主催のパーティーだけあって料理がおいしい。デザートも何種類もあり迷ってしまう。
一通り料理を皿に取り、席に座り食べ始めるとなにやら遠くの方から騒がしい声が聞こえてくる。その騒がしい声が徐々にこちらに近づいてきた。
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