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しおりを挟む「ふぅ…」
シェインからカリスト侯爵家とアルレイ伯爵家の現状を聞き終えた私は小さく息を吐いた。私の生家であるアルレイ伯爵家のことは大体想像した通りだったが、カリスト侯爵家のことは正直驚いた。
「大丈夫か?」
「…ええ。アルレイ伯爵家は大体思っていた通りだったわ。伯爵には領地経営の才能はないし、お金がないなら借金すればいいだけだと本気で思っている人だったからね。私がいた頃は私がなんとかやっていたのよ。まぁそれすらも気づいていなかったかもしれないけどね」
「カリスト侯爵家からの援助も使い果たしていたようだ。普通あの額なら使い果たす方が難しいのにな」
「普通ならね。アルレイ伯爵は普通じゃないのよ。あの人は魔力が全てだと思っている人なの。それなのによほど私が気に入らなかったんでしょうね。私は嫌いな母親に似ているらしいから。それに私が伯爵よりも魔力が多かったこともプライドが許さなかったのでしょうね」
現在のアルレイ伯爵家はかろうじて貴族の体裁を保っているが、それももう時間の問題だそうだ。援助が止まっても今までの生活をやめられなかった当然の結果だろう。それにそんな家の婿になりたいなんて奇特な人はいないので、妹は今でも独り身である。
「おそらくパーティーに参加するはずだ。顔を合わせたら何か言ってくるかもしれないな」
「ふふ、もしかしたら私の顔なんて忘れているかもしれないわね。髪の色も今の色ではなく染めた色で過ごしていたから」
「セレーナの産みの親ではあるが関わりたくないな」
「ええ、私もよ」
アルレイ伯爵家の人達は私に気づけば文句を言ってくるだろうが気にしない。今の私はアレス国第三王子の婚約者なのだ。私に文句を言う方がさらに肩身の狭い思いをする羽目になることなんて、あの人達は絶対に思い至らないだろう。
「それよりもカリスト侯爵家のことは予想外だわ。まさか使用人を大量に解雇したなんて…。それに魔法薬事業の違約金やらの支払いで家が傾いていたなんて驚いたわ。でも一番驚いたのはカリスト前侯爵と夫人が離縁したってことね」
カリスト侯爵家はこの三年でずいぶんと資産を減らしたようだ。スターリン侯爵が言っていたように、魔法薬の取引をしていた相手に違約金を払わねばならなかったのだろう。
いくら資産家であるカリスト家でもかなりのダメージを受けたようだ。だから使用人の大量解雇は資金難のせいかと思ったがどうやら違うらしい。
(元旦那様に宛てた手紙には悪いのは使用人ではなくてあなただと書いたから腹でも立てて解雇しちゃったのかしら)
元旦那様の真意は分からないがこれも今さらなので気にしない。ただどうしても気になるのは前侯爵夫人のことだが、まさか離縁していたとは思いもしなかった。
シェインが調べたところによると私がカリスト家を出てから三ヶ月程で離縁している。お二人の仲は悪くないと思っていたのに一体何が原因だったのだろうか。
「夫人は今実家に戻っているようだがさすがにパーティーには来ないだろうな」
「私もそう思うわ。残念だけど会える可能性は低そうね。でもお元気そうでよかったわ。シェインありがとう」
「いや、勝手に調べてすまなかった」
「ふふっ、本当にシェインは心配性ね」
「む、これはセレーナ限定だからな?」
「そうなの?」
「当たり前だろう?でもその内セレーナに嫌がられないかが不安だよ」
「嫌がるわけないじゃない。むしろ嬉しいわよ。でも心配ばかりかけたくはないから、これからはもっとお互いに思ったこと考えていることたくさん話しましょう?」
「ああそうだな」
(こうしてこれから少しずつシェインとの仲を深めていけたらいいな)
そうして数日後、私達は無事にパーティー会場へとたどり着いたのだった。
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