8 / 11
第8話 ペンダント
しおりを挟む
「大丈夫だミカエル。俺を信じろ」
そう言って剣を構えるレイモンドさんにボアが突進する。
「レイモンドさん!!」
ボアが立ち止まる。俺はやっと動くようになってきた手足に力を入れ、立ち上がりボアの様子を見る。
ボアの首元に槍が刺さっていた。槍の飛んできたであろう方向に目をやる。そこにはグラオウルフを全て倒し、自身の血なのか返り血なのか区別がつかない程血色に染まったエレナ隊長がいた。
「ミカエル、大丈夫か?」
剣を納めたレイモンドさんが俺に歩み寄る。腕から流れる血が手から指を伝い滴り落ちる。
俺のせいだ。
「レイモンド!」
茂みに隠れていたはずのシャノンさんがレイモンドさんの怪我に飛びつく。同時にエレナ隊長は俺達の前にいるボアと少女と再び対峙する。その間にシャノンさんは応急処置を施す。
「嫌! 嫌!! 嫌!! 嫌!!」
少女が急に声を張り上げ、泣き出す。彼女が泣き出したのに反応してボアがまた動こうとする。
ボアに刺さっていた槍から血が地面に落ちる。血のついた草花がみるみる枯れていく。枯れた場所から霧のような空気が出始める。
「逃げろ!!」
エレナ隊長が初めて声を荒げる。走る彼女の後ろには刺さっていた槍が光を帯びて消え、そこから大量の血と霧が出てくるのが見えた。普通の霧ではないというのは色を見ただけでわかる。今すぐ走って逃げなければいけないのも分かっている。でも、背中を強打した影響か恐怖からか思ったように足が動かない。
「ミカエルさん、掴まってください」
シャノンさんが肩を貸してくれるが霧はすぐ後ろまで迫っている。エレナ隊長も急いで肩を貸してくれる。だが、俺達は全員霧に包まれた。
包まれる瞬間、息を止めた。長くはもたないだろう。皆も苦しそうだ。
もう駄目だ….。
諦めかけた時、左から眩しいぐらいの光が現れる。それはエレナ隊長の胸元からだった。全員を包むように広がる。光の中では霧が消え去り、空気が吸える。周りにはまだ霧が漂っているのにこの光のおかげか何ともない。
エレナ隊長は制服の首元を緩め、中に手を入れる。何かを取り出したが眩しくて見えない。
次第に霧がなくなると、光も徐々に消えていく。光を放っていたのはエレナ隊長の髪と同じ色をした石のぺンダントだった。
それは何ですか? やさっきの光は何ですか? とか聞きたい事はあるのに、いつも無表情のエレナ隊長が苦しそうな顔をしているから俺は何も言えなかった。
周囲を見渡す。少女と魔獣の姿はどこにも見当たらない。霧に乗じて逃げたのだろう。一面に生い茂っていた木々や草花は枯れ果て、大地すらも水分を失い、地割れを起こしている。グラオウルフの死骸も残っているのは骨のみだ。あれが自分の身にもと考えるだけで背筋が寒くなる。
「ぐ….」
「レイモンド….! 今….治療..します」
その場に座り込んだレイモンドさんの傍でシャノンさんは自分の鞄を開け、中身を出し始める。包帯やら乾燥させた草や花、見たこともない物まで沢山の物が出てくる。
「ミカエルさんも….背中….打っているので….座ってて..下さい。後で….診てみます」
「はい。….あの! 俺のせいで….こんな事になってしまって….すいませんでした!」
背中の痛みに耐えながら精一杯頭を下げた。今回の事でまた異動になるだろう。最悪、討伐隊から外されるかもしれない。今更どうしようもない後悔が押し寄せる。
「全員生きてるんだ。それで良いじゃないか。エレナもそう思うだろ?」
「うん。ミカエルの考え方、動きはいい。問題は実力のなさ。次は自分に合った戦い方をしたらいいと思う」
叱責を覚悟していたが、まさか助言されるなんて。ゆっくり頭を上げる。怪我の治療をされながらも俺に笑いかけるレイモンドさんを見て、喉の奥が痛くなる。
「俺….次、あるんですか….?」
声が震える。
「あるでしょ。今回失敗したなら、それを踏まえて次に活かせばいい。ミカエルは他の隊に行きたいかもしれないけど、私達はイーサみたいに自分のとこの隊員を手放す事はしない」
その言葉に堪えていた涙が溢れ出す。
「あざば! なまい“ぎいっです”い“まぜんでじだ! ごれがらば、ごごろい”れがえでがんばりまず!」
「え? 何で泣く….?」
エレナ隊長の困惑した声とレイモンドさんの笑い声が聞こえる。俺は涙が止まらなかった。
悔しかったんだ。勝てなかった上にレイモンドさんに怪我までさせて。
嬉しかったんだ。討伐隊に入隊してからギフトがないという理由で自分の考えも行動も先輩隊員に否定され続け、ただ言われた通りに動く日々。そんな俺がここで少し認められて。
エレナ隊長は自分から手放す事はしないと言った。それなら俺も手放さないようにしよう。役に立つような人間になろう。俺はこの瞬間にそう心に誓った。こんなにいい人達を離してはいけない気がする。
レイモンドさんの治療と俺の治療が終わっても俺は泣き続けた。日も暮れ、夜になり王都に着いた頃、やっと涙を流しきった。
本部に着くなりすぐに医務室で連れて行かれた。各々怪我の様子を診てもらう。怪我の具合を聞いたエレナ隊長は
「報告してくる」
とだけ言い残し、シャノンさんと一緒に部屋を出て行った。レイモンドさんは相当酷い怪我らしく、今後の経過を見るために医務室のベットで少しの間過ごすらしい。医務室の人は怪我を見るなり、
「何て素晴らしい応急処置なんだ!!」
と、こちらにも聞こえるくらい大興奮していた。一方俺は大した事がなく、なんだか少しつまらなそうに薬を塗られるだけだった。
治療を終え、ベットで眠っているレイモンドさんの傍へ行く。腕には包帯が巻かれてとても痛々しい。
「そんなに見つめられると照れるんだが」
少しだけ照れたように笑うレイモンドさん。その姿にまた涙が出そうになったのをなんとか堪えた。
「座ったらどうだ?」
ベットの横に置いてある椅子に座るよう勧められて座る。
「背中、大丈夫だったか?」
「俺は大した事なかったです」
「そうか。よかった」
どう見てもレイモンドさんのほうが酷い怪我しているのに。
「あの….本当にすいませんでした」
シャノンさんが処置していなければ大盾も剣すら握れないかもしれないと言われていた。大事には至らなかっらが、俺の責任だ。
「ミカエル、謝罪なら沢山もらった。もう謝らなくていい」
「でも….俺は….自分を許せません」
「うーん….。あ、それならミカエルに頼みがあるんだ」
少し考えたのち、頼みがあると言われ飛びつく。
「何ですか!? 何でもします!」
「今回で俺の大盾とミカエルの剣、どっちも壊れただろ? ミカエルは次の任務までに代わりの剣が渡されると思うけど、俺の大盾は特注でな」
「はい」
「騎士団専用の鍛冶場がここから離れた所にあるんだが、道中魔獣も出るからな。ミカエルにもついてきてもらいたいんだ」
「はい! 俺でよければご一緒させてください」
そんな場所があるなんて知らなかった。精一杯役に立てるように頑張ろう。
「そこでミカエルも自分に合う剣を作ってもらおう」
「….へ?」
間抜けのような声が出た。いつもは支給された剣を使っていたから、自分に合う剣なんて考えた事もなかった。俺にも作ってもらえるだろうか。
「エレナには後で俺から言っとくからな」
「はい! 楽しみです!」
「楽しそうだね」
振り返ると報告を終えたエレナ隊長とシャノンさんが立っていた。椅子から立ちあがろうとしたのを彼女に制される。
「報告してきた。とりあえず明日は休み。そしてレイモンドは治るまで安静に。治り次第、訓練を行うように。今日は以上。皆お疲れ様」
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「はい!」
各々思い思いに返事をする。
「レイモンドと話がしたい。シャノンとミカエルは外してくれる?」
返事を口にするよりも先にシャノンさんの腹の音が鳴る。
「….ミカエルさん。….食堂..行きませんか….?」
恥ずかしさからかお腹をおさえ、声を震わせながらご飯へ誘われた。もちろん断る理由もない。俺は承諾した。
「ありがとう….ございます….!」
俯いてる彼の顔は見えない。でも声が嬉しそうだ。
「私も後で行く」
「わかりました….!」
俺達は他愛のない話をしながら食堂へ向かった。
◇
シャノンとミカエルが席を外した後….
「どうした? 改まって。もしや、恋愛話か?」
冗談のつもりで言う。エレナは幼い頃から討伐隊に身を置き、常に前線で戦ってきた。周りより幼いこともあり、他の隊員の結婚や恋愛には全く興味を示さない彼女がついにという期待も少しはある。
「いや、ミカエルの事なんだけど..どう思う?」
まさか期待が現実になった! 嬉しいような寂しいような気持ちになる。子を持つ親はこんな気持ちになるのか。
「ミカエルは良い男だと思うぞ。素直だし、感情豊かだし。エレナとも合うと思うぞ! ただシャノンも良い男だと思うが」
「何でシャノンが出てくる? ミカエルと合うって何の話?」
「え? エレナの恋愛話じゃないのか?」
「何を言ってる。私はミカエルの剣の腕の話をしている」
あ、そっち….。エレナに恋愛はまだ早かったか….。
「剣の腕か….。まだ何とも言えないが、何か気になる事が?」
多分、あの折れた時の事を言いたいのだろう。俺は見る余裕がなかったからな。
「ミカエルの剣は騎士団で支給されてる普通のやつだけど、あの大振りは大剣を扱う時の動きだった」
「うーん。俺にはわからないな」
「そっか。じゃあ少し調べてみる」
そうだ。あの事を言おう。
「エレナ、別件だけど治ったらミカエルと鍛冶場に行かせてほしい」
「いいよ。行ってきな」
あっさり承諾された。彼女はこういう時、絶対に希望を通してくれる。幼いのにしっかりしてると感心する。
「行くなら、魔獣の相手を全てミカエルにさせて」
とんでもない事言い出したな。
「何で?」
「あの剣の実力では今後必ず彼は死ぬ。大剣を扱えるような筋力もない。それなら普通の剣を扱えるようにレイモンドが教えてあげて。レイモンドは元々剣の腕いいから期待できる。….じゃ、ご飯行ってくる」
返事も待たずエレナは出て行ってしまった。
「了解。うちのお嬢さま」
誰もいない部屋で呟くように返事をした。
そう言って剣を構えるレイモンドさんにボアが突進する。
「レイモンドさん!!」
ボアが立ち止まる。俺はやっと動くようになってきた手足に力を入れ、立ち上がりボアの様子を見る。
ボアの首元に槍が刺さっていた。槍の飛んできたであろう方向に目をやる。そこにはグラオウルフを全て倒し、自身の血なのか返り血なのか区別がつかない程血色に染まったエレナ隊長がいた。
「ミカエル、大丈夫か?」
剣を納めたレイモンドさんが俺に歩み寄る。腕から流れる血が手から指を伝い滴り落ちる。
俺のせいだ。
「レイモンド!」
茂みに隠れていたはずのシャノンさんがレイモンドさんの怪我に飛びつく。同時にエレナ隊長は俺達の前にいるボアと少女と再び対峙する。その間にシャノンさんは応急処置を施す。
「嫌! 嫌!! 嫌!! 嫌!!」
少女が急に声を張り上げ、泣き出す。彼女が泣き出したのに反応してボアがまた動こうとする。
ボアに刺さっていた槍から血が地面に落ちる。血のついた草花がみるみる枯れていく。枯れた場所から霧のような空気が出始める。
「逃げろ!!」
エレナ隊長が初めて声を荒げる。走る彼女の後ろには刺さっていた槍が光を帯びて消え、そこから大量の血と霧が出てくるのが見えた。普通の霧ではないというのは色を見ただけでわかる。今すぐ走って逃げなければいけないのも分かっている。でも、背中を強打した影響か恐怖からか思ったように足が動かない。
「ミカエルさん、掴まってください」
シャノンさんが肩を貸してくれるが霧はすぐ後ろまで迫っている。エレナ隊長も急いで肩を貸してくれる。だが、俺達は全員霧に包まれた。
包まれる瞬間、息を止めた。長くはもたないだろう。皆も苦しそうだ。
もう駄目だ….。
諦めかけた時、左から眩しいぐらいの光が現れる。それはエレナ隊長の胸元からだった。全員を包むように広がる。光の中では霧が消え去り、空気が吸える。周りにはまだ霧が漂っているのにこの光のおかげか何ともない。
エレナ隊長は制服の首元を緩め、中に手を入れる。何かを取り出したが眩しくて見えない。
次第に霧がなくなると、光も徐々に消えていく。光を放っていたのはエレナ隊長の髪と同じ色をした石のぺンダントだった。
それは何ですか? やさっきの光は何ですか? とか聞きたい事はあるのに、いつも無表情のエレナ隊長が苦しそうな顔をしているから俺は何も言えなかった。
周囲を見渡す。少女と魔獣の姿はどこにも見当たらない。霧に乗じて逃げたのだろう。一面に生い茂っていた木々や草花は枯れ果て、大地すらも水分を失い、地割れを起こしている。グラオウルフの死骸も残っているのは骨のみだ。あれが自分の身にもと考えるだけで背筋が寒くなる。
「ぐ….」
「レイモンド….! 今….治療..します」
その場に座り込んだレイモンドさんの傍でシャノンさんは自分の鞄を開け、中身を出し始める。包帯やら乾燥させた草や花、見たこともない物まで沢山の物が出てくる。
「ミカエルさんも….背中….打っているので….座ってて..下さい。後で….診てみます」
「はい。….あの! 俺のせいで….こんな事になってしまって….すいませんでした!」
背中の痛みに耐えながら精一杯頭を下げた。今回の事でまた異動になるだろう。最悪、討伐隊から外されるかもしれない。今更どうしようもない後悔が押し寄せる。
「全員生きてるんだ。それで良いじゃないか。エレナもそう思うだろ?」
「うん。ミカエルの考え方、動きはいい。問題は実力のなさ。次は自分に合った戦い方をしたらいいと思う」
叱責を覚悟していたが、まさか助言されるなんて。ゆっくり頭を上げる。怪我の治療をされながらも俺に笑いかけるレイモンドさんを見て、喉の奥が痛くなる。
「俺….次、あるんですか….?」
声が震える。
「あるでしょ。今回失敗したなら、それを踏まえて次に活かせばいい。ミカエルは他の隊に行きたいかもしれないけど、私達はイーサみたいに自分のとこの隊員を手放す事はしない」
その言葉に堪えていた涙が溢れ出す。
「あざば! なまい“ぎいっです”い“まぜんでじだ! ごれがらば、ごごろい”れがえでがんばりまず!」
「え? 何で泣く….?」
エレナ隊長の困惑した声とレイモンドさんの笑い声が聞こえる。俺は涙が止まらなかった。
悔しかったんだ。勝てなかった上にレイモンドさんに怪我までさせて。
嬉しかったんだ。討伐隊に入隊してからギフトがないという理由で自分の考えも行動も先輩隊員に否定され続け、ただ言われた通りに動く日々。そんな俺がここで少し認められて。
エレナ隊長は自分から手放す事はしないと言った。それなら俺も手放さないようにしよう。役に立つような人間になろう。俺はこの瞬間にそう心に誓った。こんなにいい人達を離してはいけない気がする。
レイモンドさんの治療と俺の治療が終わっても俺は泣き続けた。日も暮れ、夜になり王都に着いた頃、やっと涙を流しきった。
本部に着くなりすぐに医務室で連れて行かれた。各々怪我の様子を診てもらう。怪我の具合を聞いたエレナ隊長は
「報告してくる」
とだけ言い残し、シャノンさんと一緒に部屋を出て行った。レイモンドさんは相当酷い怪我らしく、今後の経過を見るために医務室のベットで少しの間過ごすらしい。医務室の人は怪我を見るなり、
「何て素晴らしい応急処置なんだ!!」
と、こちらにも聞こえるくらい大興奮していた。一方俺は大した事がなく、なんだか少しつまらなそうに薬を塗られるだけだった。
治療を終え、ベットで眠っているレイモンドさんの傍へ行く。腕には包帯が巻かれてとても痛々しい。
「そんなに見つめられると照れるんだが」
少しだけ照れたように笑うレイモンドさん。その姿にまた涙が出そうになったのをなんとか堪えた。
「座ったらどうだ?」
ベットの横に置いてある椅子に座るよう勧められて座る。
「背中、大丈夫だったか?」
「俺は大した事なかったです」
「そうか。よかった」
どう見てもレイモンドさんのほうが酷い怪我しているのに。
「あの….本当にすいませんでした」
シャノンさんが処置していなければ大盾も剣すら握れないかもしれないと言われていた。大事には至らなかっらが、俺の責任だ。
「ミカエル、謝罪なら沢山もらった。もう謝らなくていい」
「でも….俺は….自分を許せません」
「うーん….。あ、それならミカエルに頼みがあるんだ」
少し考えたのち、頼みがあると言われ飛びつく。
「何ですか!? 何でもします!」
「今回で俺の大盾とミカエルの剣、どっちも壊れただろ? ミカエルは次の任務までに代わりの剣が渡されると思うけど、俺の大盾は特注でな」
「はい」
「騎士団専用の鍛冶場がここから離れた所にあるんだが、道中魔獣も出るからな。ミカエルにもついてきてもらいたいんだ」
「はい! 俺でよければご一緒させてください」
そんな場所があるなんて知らなかった。精一杯役に立てるように頑張ろう。
「そこでミカエルも自分に合う剣を作ってもらおう」
「….へ?」
間抜けのような声が出た。いつもは支給された剣を使っていたから、自分に合う剣なんて考えた事もなかった。俺にも作ってもらえるだろうか。
「エレナには後で俺から言っとくからな」
「はい! 楽しみです!」
「楽しそうだね」
振り返ると報告を終えたエレナ隊長とシャノンさんが立っていた。椅子から立ちあがろうとしたのを彼女に制される。
「報告してきた。とりあえず明日は休み。そしてレイモンドは治るまで安静に。治り次第、訓練を行うように。今日は以上。皆お疲れ様」
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「はい!」
各々思い思いに返事をする。
「レイモンドと話がしたい。シャノンとミカエルは外してくれる?」
返事を口にするよりも先にシャノンさんの腹の音が鳴る。
「….ミカエルさん。….食堂..行きませんか….?」
恥ずかしさからかお腹をおさえ、声を震わせながらご飯へ誘われた。もちろん断る理由もない。俺は承諾した。
「ありがとう….ございます….!」
俯いてる彼の顔は見えない。でも声が嬉しそうだ。
「私も後で行く」
「わかりました….!」
俺達は他愛のない話をしながら食堂へ向かった。
◇
シャノンとミカエルが席を外した後….
「どうした? 改まって。もしや、恋愛話か?」
冗談のつもりで言う。エレナは幼い頃から討伐隊に身を置き、常に前線で戦ってきた。周りより幼いこともあり、他の隊員の結婚や恋愛には全く興味を示さない彼女がついにという期待も少しはある。
「いや、ミカエルの事なんだけど..どう思う?」
まさか期待が現実になった! 嬉しいような寂しいような気持ちになる。子を持つ親はこんな気持ちになるのか。
「ミカエルは良い男だと思うぞ。素直だし、感情豊かだし。エレナとも合うと思うぞ! ただシャノンも良い男だと思うが」
「何でシャノンが出てくる? ミカエルと合うって何の話?」
「え? エレナの恋愛話じゃないのか?」
「何を言ってる。私はミカエルの剣の腕の話をしている」
あ、そっち….。エレナに恋愛はまだ早かったか….。
「剣の腕か….。まだ何とも言えないが、何か気になる事が?」
多分、あの折れた時の事を言いたいのだろう。俺は見る余裕がなかったからな。
「ミカエルの剣は騎士団で支給されてる普通のやつだけど、あの大振りは大剣を扱う時の動きだった」
「うーん。俺にはわからないな」
「そっか。じゃあ少し調べてみる」
そうだ。あの事を言おう。
「エレナ、別件だけど治ったらミカエルと鍛冶場に行かせてほしい」
「いいよ。行ってきな」
あっさり承諾された。彼女はこういう時、絶対に希望を通してくれる。幼いのにしっかりしてると感心する。
「行くなら、魔獣の相手を全てミカエルにさせて」
とんでもない事言い出したな。
「何で?」
「あの剣の実力では今後必ず彼は死ぬ。大剣を扱えるような筋力もない。それなら普通の剣を扱えるようにレイモンドが教えてあげて。レイモンドは元々剣の腕いいから期待できる。….じゃ、ご飯行ってくる」
返事も待たずエレナは出て行ってしまった。
「了解。うちのお嬢さま」
誰もいない部屋で呟くように返事をした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる