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第24話 お前が拗ねてどうする?
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エライザ様との懇談を終えて部屋へと戻る途中、懐かしい御方に呼び止められた。
「デルフィーヌ」
「宰相閣下! ご無沙汰しております」
カーテシーをしようとすると、「いいから、いいから」と制された。
宰相閣下は現グラース侯爵でもあるのだけれど、義父の仕事仲間でもある閣下は、昔から私のことを気に掛けてくれている。実母のお葬式にも顔を出してくれ、気落ちする私を美味しいと評判のケーキ屋さんに連れて行ってくれたり、母が開いていた薬師院を代理経営してくれる人を紹介してくれたりと、一番辛かった時に何かと支えてくれた。
「――時が経つのは早いな。あんなに小さかった少女が、こんなにもしっかりした女性に成長して、妃候補にまでなるんだから。今は離宮に住んでいるんだって?」
「はい。最終選考を兼ねているのだそうで」
「そうか。何か困ったことがあれば、すぐ相談に来るんだよ?」
「はい。あ、そういえば……」
「ん?」
「外国派遣の文官試験は、貴族学院を卒業していなくても卒業認定を得ていれば受験できますか?」
「理論的にはそのはずだ。前例はないけれどね。どうしたんだい?」
「いえ。ちょっと、お伺いしたかっただけです」
「そうか。今のデルフィーヌなら余裕で合格するだろうね。妃教育の評判、僕の耳にも入ってきているよ」
「良い評判だといいのですが」
「ははは。噂を気にしているのかい? 君の本質を見抜けないような人物の戯言に耳を傾ける必要などないさ。いいね?」
「はい。ありがとうございます」
「うん」
閣下は満足気に頷くと、「じゃあまた」と言って去って行った。
よしっ!! 言質は取れた。
卒業認定試験に合格していたら、外国へ派遣される文官試験を受験しよう。
外国へ滞在しながら俸給を貰えるのだ。殿下や聖女から距離を置きつつ自活できる最善の道。目の前に道が開けた! そんなふうに感じていたときだった。
「――デルフィーヌ嬢」
「殿下?」
「ミス・エライザの件では、いろいろと助けられた。礼を言わせてほしい」
「わたくしは何も」
「今回の王国訪問は、彼女が成人して初めて行う公務だったんだ。君のおかげで、温かい時間を過ごせたようだ」
「わたくしどもも、エライザ様のおかげで素晴らしい体験ができました。御礼を申し上げるのはこちらです」
「そうか。――今日の午後は少し時間があるんだ。一緒に茶でもどうだろう?」
「有難いお言葉ですが、殿下の貴重なお時間は、聖女様や他の候補者様のためにお使いください」
「っ……」
「それでは、失礼いたします」
――その日の夜のこと。
ご機嫌斜めなガブリエル隊長が私の部屋を訪ねてきた。
「フィーヌ。今朝の殿下に対するお前の態度、あれは何だ?」
「殿下とは、没交渉でいこうって決めたんです」
「ちゃんと分かるように説明しろ」
「妃候補から降りることにしたんです。先月、卒業認定試験を受けました。合格したら貴族学院を退学して、外国派遣の文官試験を受けるつもりです」
「殿下のこと、慕ってたんじゃなかったのか?」
「もういいんです」
「いいって顔はしてないぞ?」
「不毛な執着は気力を消耗するだけだと気づいたんです。それに私、殿下に嫌われていますから」
「へー、そうなのか?」
「知ってるくせに。今日の隊長は、意地悪です」
「だとしたら、合点がいかないな」
「え?」
「あの時の殿下、咄嗟にお前を庇ったんじゃないのか?」
「庇う? 殿下が、私を?」
「あのパーティーの時だよ。割れた皿が飛び散ったとき」
「?」
「知ってるだろ? 殿下は左利きだ。右側に立っていたリリー嬢が落とした皿の破片からお前を守るなら、背中を向けて右の身体を盾にすれば済む。なのに、心臓が前に出るというのに咄嗟に左手でお前を押して庇っただろう?
結果、殿下は左手を負傷したがお前は無傷で済んだ。アタマより先にカラダが動いたんだな。いや、違うか。ココロが先に動いたんだ。どうでもいい奴に対してそんな行動は取らないさ」
「私、突き飛ばされたんじゃなかったの……?」
「軽く押されたくらいで尻もちはつかんだろ、ふつう」
「それって、私が運動オンチなだけだったってこと!?」
「退学までして妃候補から降りて。挙句の果てに外国にまで行っちまって。本当に後悔しないのか?」
「分かりません。でも――私が殿下のために出来ること、何もなさそうですから」
「そうか?」
「2年も一緒にいたのに、見向きもされなかったし」
残念ながら、殿下の目に私は魅力的な女性として映らなかったんだもの。これ以上殿下や聖女の側にいると、厄介な未来しか待っていない。
“距離を置く”の一択以外、ないじゃない。他にどうしろっていうのよ?
「そんなのお前に限った話じゃないだろう? 戦争終結と同時にお妃探しをしろと言われても、簡単に心が切り替えられないことくらい、あの凄惨な戦場にいたお前なら分かるだろう? 一番の理解者であるはずのお前が拗ねてどうする?」
「……別に拗ねてたわけじゃ」
「フィーヌが努力してきたことは知っている。だがな、今日のあの態度は感心できないぞ?」
「……」
「ちゃんと殿下に謝っとけ。分かったな?」
「……はい」
「ふっ。相変わらず素直だな。可愛いやつめ!」
ガブリエル隊長はくしゃくしゃっと私の髪を撫でると、「ふぅ――っ」とため息をついた。
「俺らには想像もつかないけどさ、王族って存外に孤独なんだろうな」
「……たぶん」
「殿下が望んでるのってさ、案外、気の置けない茶飲み仲間だったりするかもよ? だったらお前しかいないだろ? 殿下が一緒にいて自然体でいられる相手。他の妃候補にも、聖女にも、絶対に無理だ」
「そんなの、今さらですよ」
「やっぱり拗ねてんじゃないか。子どもかよ?」
「子どもですよ。未成年だもん。まだ学生だし」
「退学する気でいるくせに、よく言うよ。可愛げがないやつめ!」
「ちょっと! 髪の毛わしゃわしゃするの、やめてくださいよ! 頬へのキスもダメーっ!」
「かかか。色気づくなよ、未成年! 昔はフィーヌから頬にチューしてくれてただろ?」
「もうっ! それ、いつの話ですか!」
隊長はいつもこんな感じだ。ふざけてばかりいるようで、時々、鋭いことを言ってくる。私を叱ってくれる数少ない人でもあり、叱った後は必ず甘やかしてもくれるのだ。
あぁ――ぁ。ほんとに隊長の言うとおりだな。
私ってば、殿下にディーだって気づいてもらえなかったくらいで子どもみたいに拗ねちゃって。
お見舞いだって何度も来てくれたのに、全て追い返しちゃって。
今朝だって、お茶のお誘いに塩対応で返しちゃった。
私ってば、何やってんのよ。
その夜は、久しぶりに深い後悔の海に沈んだのだった。
「デルフィーヌ」
「宰相閣下! ご無沙汰しております」
カーテシーをしようとすると、「いいから、いいから」と制された。
宰相閣下は現グラース侯爵でもあるのだけれど、義父の仕事仲間でもある閣下は、昔から私のことを気に掛けてくれている。実母のお葬式にも顔を出してくれ、気落ちする私を美味しいと評判のケーキ屋さんに連れて行ってくれたり、母が開いていた薬師院を代理経営してくれる人を紹介してくれたりと、一番辛かった時に何かと支えてくれた。
「――時が経つのは早いな。あんなに小さかった少女が、こんなにもしっかりした女性に成長して、妃候補にまでなるんだから。今は離宮に住んでいるんだって?」
「はい。最終選考を兼ねているのだそうで」
「そうか。何か困ったことがあれば、すぐ相談に来るんだよ?」
「はい。あ、そういえば……」
「ん?」
「外国派遣の文官試験は、貴族学院を卒業していなくても卒業認定を得ていれば受験できますか?」
「理論的にはそのはずだ。前例はないけれどね。どうしたんだい?」
「いえ。ちょっと、お伺いしたかっただけです」
「そうか。今のデルフィーヌなら余裕で合格するだろうね。妃教育の評判、僕の耳にも入ってきているよ」
「良い評判だといいのですが」
「ははは。噂を気にしているのかい? 君の本質を見抜けないような人物の戯言に耳を傾ける必要などないさ。いいね?」
「はい。ありがとうございます」
「うん」
閣下は満足気に頷くと、「じゃあまた」と言って去って行った。
よしっ!! 言質は取れた。
卒業認定試験に合格していたら、外国へ派遣される文官試験を受験しよう。
外国へ滞在しながら俸給を貰えるのだ。殿下や聖女から距離を置きつつ自活できる最善の道。目の前に道が開けた! そんなふうに感じていたときだった。
「――デルフィーヌ嬢」
「殿下?」
「ミス・エライザの件では、いろいろと助けられた。礼を言わせてほしい」
「わたくしは何も」
「今回の王国訪問は、彼女が成人して初めて行う公務だったんだ。君のおかげで、温かい時間を過ごせたようだ」
「わたくしどもも、エライザ様のおかげで素晴らしい体験ができました。御礼を申し上げるのはこちらです」
「そうか。――今日の午後は少し時間があるんだ。一緒に茶でもどうだろう?」
「有難いお言葉ですが、殿下の貴重なお時間は、聖女様や他の候補者様のためにお使いください」
「っ……」
「それでは、失礼いたします」
――その日の夜のこと。
ご機嫌斜めなガブリエル隊長が私の部屋を訪ねてきた。
「フィーヌ。今朝の殿下に対するお前の態度、あれは何だ?」
「殿下とは、没交渉でいこうって決めたんです」
「ちゃんと分かるように説明しろ」
「妃候補から降りることにしたんです。先月、卒業認定試験を受けました。合格したら貴族学院を退学して、外国派遣の文官試験を受けるつもりです」
「殿下のこと、慕ってたんじゃなかったのか?」
「もういいんです」
「いいって顔はしてないぞ?」
「不毛な執着は気力を消耗するだけだと気づいたんです。それに私、殿下に嫌われていますから」
「へー、そうなのか?」
「知ってるくせに。今日の隊長は、意地悪です」
「だとしたら、合点がいかないな」
「え?」
「あの時の殿下、咄嗟にお前を庇ったんじゃないのか?」
「庇う? 殿下が、私を?」
「あのパーティーの時だよ。割れた皿が飛び散ったとき」
「?」
「知ってるだろ? 殿下は左利きだ。右側に立っていたリリー嬢が落とした皿の破片からお前を守るなら、背中を向けて右の身体を盾にすれば済む。なのに、心臓が前に出るというのに咄嗟に左手でお前を押して庇っただろう?
結果、殿下は左手を負傷したがお前は無傷で済んだ。アタマより先にカラダが動いたんだな。いや、違うか。ココロが先に動いたんだ。どうでもいい奴に対してそんな行動は取らないさ」
「私、突き飛ばされたんじゃなかったの……?」
「軽く押されたくらいで尻もちはつかんだろ、ふつう」
「それって、私が運動オンチなだけだったってこと!?」
「退学までして妃候補から降りて。挙句の果てに外国にまで行っちまって。本当に後悔しないのか?」
「分かりません。でも――私が殿下のために出来ること、何もなさそうですから」
「そうか?」
「2年も一緒にいたのに、見向きもされなかったし」
残念ながら、殿下の目に私は魅力的な女性として映らなかったんだもの。これ以上殿下や聖女の側にいると、厄介な未来しか待っていない。
“距離を置く”の一択以外、ないじゃない。他にどうしろっていうのよ?
「そんなのお前に限った話じゃないだろう? 戦争終結と同時にお妃探しをしろと言われても、簡単に心が切り替えられないことくらい、あの凄惨な戦場にいたお前なら分かるだろう? 一番の理解者であるはずのお前が拗ねてどうする?」
「……別に拗ねてたわけじゃ」
「フィーヌが努力してきたことは知っている。だがな、今日のあの態度は感心できないぞ?」
「……」
「ちゃんと殿下に謝っとけ。分かったな?」
「……はい」
「ふっ。相変わらず素直だな。可愛いやつめ!」
ガブリエル隊長はくしゃくしゃっと私の髪を撫でると、「ふぅ――っ」とため息をついた。
「俺らには想像もつかないけどさ、王族って存外に孤独なんだろうな」
「……たぶん」
「殿下が望んでるのってさ、案外、気の置けない茶飲み仲間だったりするかもよ? だったらお前しかいないだろ? 殿下が一緒にいて自然体でいられる相手。他の妃候補にも、聖女にも、絶対に無理だ」
「そんなの、今さらですよ」
「やっぱり拗ねてんじゃないか。子どもかよ?」
「子どもですよ。未成年だもん。まだ学生だし」
「退学する気でいるくせに、よく言うよ。可愛げがないやつめ!」
「ちょっと! 髪の毛わしゃわしゃするの、やめてくださいよ! 頬へのキスもダメーっ!」
「かかか。色気づくなよ、未成年! 昔はフィーヌから頬にチューしてくれてただろ?」
「もうっ! それ、いつの話ですか!」
隊長はいつもこんな感じだ。ふざけてばかりいるようで、時々、鋭いことを言ってくる。私を叱ってくれる数少ない人でもあり、叱った後は必ず甘やかしてもくれるのだ。
あぁ――ぁ。ほんとに隊長の言うとおりだな。
私ってば、殿下にディーだって気づいてもらえなかったくらいで子どもみたいに拗ねちゃって。
お見舞いだって何度も来てくれたのに、全て追い返しちゃって。
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