65 / 113
第四章 オリヴァー(オリヴァー視点)
ブランドンさん、変わりましたね(オリヴァー視点)
しおりを挟む(一番隊隊長の名にかけて、この国を守ってみせる)
オリヴァーは改めて強く思った。
「警備の配置を再確認した方がいいな。俺がやっておくから、君はもう帰ってくれ。訓練と会議で疲れているだろう」
オリヴァーは立ち上がると、書棚から地図を取り出した。
「何言ってるんですか。それは貴方も同じでしょう、ブランドンさん。お供しますよ」
カートランドはひょいとオリヴァーから地図を奪う。
「しかし、夜通しになるぞ?」
「かまいません。今さらです。貴方だけに徹夜させる訳にはいきませんから」
「カートランド君……」
「国を守りたい気持ちは同じです。この土地に人々の血が流れるのはもう見たくない」
カートランドが言った。
「ああ。身命を賭して祖国を守る。それが騎士だ」
オリヴァーも答える。決意を宿すエメラルドの瞳が輝いた。
(必ず魔王ギリェルモを倒す)
――この国も、愛するシャーロットも、全て守ってみせる。
その静かに燃える表情を見て、カートランドはふっと優しく笑った。
「ブランドンさん。変わりましたね」
「……なに?」
「前は少し無鉄砲なところがあったでしょう? 守るもののない強さ、というか……。貴方は王立騎士団の歴史中で最強です。僕が断言します。そのせいか、ブランドンさんは戦いの中で、自分の命を省みない時があった。それが最近はありません。己のことも、国や民と同じように大切にするようになった」
「……」
オリヴァーは図星を突かれて、黙った。確かにカートランドの言う通りである。自分は死を恐れている。
「……それは弱くなったということだろうか」
「さあ、どうでしょう……。弱くなると言うことは、強さを手に入れたということなのかもしれません」
カートランドが静かに言った。
「……難しいな」
「あはは。ブランドンさんは戦いでは頭が切れるのに、自分のこととなるとてんで分かってないなあ。婚約者の方――シャーロットさんでしたっけ?――は苦労しそうだ」
「全く、うるさいやつだな……」
「ふふふ。そうやって余計なことをぐずぐず考えていないで、早く結婚して幸せになって下さいよ。そしてさっさと幸せぼけして、一番隊隊長の座を譲って下さい。僕は諦めていませんから」
ニヤリとカートランドが笑った。
「……ちっ、余計なお世話だ。君なんかに誰がやるか」
オリヴァーは気恥ずかしくなりつい憎まれ口を叩いたが、彼の暖かい気持ちが嬉しかった。
(俺は良いい友人を持ったな……)
「ふふん。僕はいつだって貴方の席を狙っていますからね。猟犬を飼い慣らすのが僕の夢なので。――さあ、始めましょう。時間は有限です。まずは王都の警備ですが――……」
「ああ。そこはこうして――……」
二人は大きな地図を広げたテーブルで、額を付き合わせた。その姿を夜空に浮かぶ月が頼もしそうに見守っている。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
350
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる