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第四章 オリヴァー(オリヴァー視点)

ブランドンさん、変わりましたね(オリヴァー視点)

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(一番隊隊長の名にかけて、この国を守ってみせる)

 オリヴァーは改めて強く思った。

「警備の配置を再確認した方がいいな。俺がやっておくから、君はもう帰ってくれ。訓練と会議で疲れているだろう」

 オリヴァーは立ち上がると、書棚から地図を取り出した。

「何言ってるんですか。それは貴方も同じでしょう、ブランドンさん。お供しますよ」

 カートランドはひょいとオリヴァーから地図を奪う。

「しかし、夜通しになるぞ?」
「かまいません。今さらです。貴方だけに徹夜させる訳にはいきませんから」
「カートランド君……」
「国を守りたい気持ちは同じです。この土地に人々の血が流れるのはもう見たくない」

 カートランドが言った。

「ああ。身命を賭して祖国を守る。それが騎士だ」

 オリヴァーも答える。決意を宿すエメラルドの瞳が輝いた。

(必ず魔王ギリェルモを倒す)

 ――この国も、愛するシャーロットも、全て守ってみせる。

 その静かに燃える表情を見て、カートランドはふっと優しく笑った。

「ブランドンさん。変わりましたね」
「……なに?」
「前は少し無鉄砲なところがあったでしょう? 守るもののない強さ、というか……。貴方は王立騎士団の歴史中で最強です。僕が断言します。そのせいか、ブランドンさんは戦いの中で、自分の命を省みない時があった。それが最近はありません。己のことも、国や民と同じように大切にするようになった」
「……」

 オリヴァーは図星を突かれて、黙った。確かにカートランドの言う通りである。自分は死を恐れている。

「……それは弱くなったということだろうか」
「さあ、どうでしょう……。弱くなると言うことは、強さを手に入れたということなのかもしれません」

 カートランドが静かに言った。

「……難しいな」
「あはは。ブランドンさんは戦いでは頭が切れるのに、自分のこととなるとてんで分かってないなあ。婚約者の方――シャーロットさんでしたっけ?――は苦労しそうだ」
「全く、うるさいやつだな……」
「ふふふ。そうやって余計なことをぐずぐず考えていないで、早く結婚して幸せになって下さいよ。そしてさっさと幸せぼけして、一番隊隊長の座を譲って下さい。僕は諦めていませんから」

 ニヤリとカートランドが笑った。

「……ちっ、余計なお世話だ。君なんかに誰がやるか」

 オリヴァーは気恥ずかしくなりつい憎まれ口を叩いたが、彼の暖かい気持ちが嬉しかった。

(俺は良いい友人を持ったな……)

「ふふん。僕はいつだって貴方の席を狙っていますからね。猟犬を飼い慣らすのが僕の夢なので。――さあ、始めましょう。時間は有限です。まずは王都の警備ですが――……」
「ああ。そこはこうして――……」

 二人は大きな地図を広げたテーブルで、額を付き合わせた。その姿を夜空に浮かぶ月が頼もしそうに見守っている。
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