卵が先か鶏が先か

但馬憂姫

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一章

虎穴に入らずんば虎子を得ず

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「ごめんね、大丈夫?」
あれから何回ヤったんだろうか?記憶が飛ぶくらいやって最後は意識が飛んで…目が覚めたら朝だった。いや、だいぶ日が高そうだからもう昼近いのかもしれない。最後の方は本当に記憶がない。
しかし、不思議な事に気怠さと下半身に若干の違和感はあるものの、痛みとか辛いとか全然なくて。俺が意識失ってる間に綺麗に後始末とケアをしてくれていたらしい。いつのまにかベッドに移動してるし。
「あ…大丈夫です」
「よかった。一応身体拭いたけど、気持ち悪かったらシャワー使って?そこ出て右だから」
扉を指差すと、枕元にバスタオルと新しい下着を置いて、部屋から出て行こうとした。
「先輩は…どこ行くんですか?」
「どこにも行かないよ?朝ごはん作ってくるだけ。無理させちゃたからゆっくり休んでて」
先輩はそう言うと部屋から出て行った。

身体をゆっくりと起こした俺は、シャワーを借りて着替え、先輩の待つ居間へと向かった。

「おはようございます」
「おはよう。もう大丈夫なのか?」
心配そうに聞いてくる先輩に俺は笑顔で大丈夫です、と答えた。
そうか、と安心したように笑い食卓へと促され、俺は椅子に座った。空腹を擽るいい匂いが漂っている。
思えば昨日の晩からろくに食べていなかったとぼんやり考えていると、うまそうな味噌汁に焼き魚、玉子焼き、おひたし、納豆に海苔、と旅館の朝食のような食事が出てきた。
「え、これ先輩が作ったんですか!?」
「うん、そう。味の保証はしないけどな。それから、諒?先輩じゃなくて」
「あ、すみませんっ!拓海…さん?」
「んー、さんもいらない。んでも急に無理ならゆっくり、な?」
優しく微笑むと、せんぱ…じゃない、拓海さんは俺の前の席に腰を下ろした。行儀よく手を合わせ、いただきますをすると味噌汁を一口啜った。俺も拓海さんを習って味噌汁に手を付けた。
それからしばらく黙々と食べていたが、沈黙を破ったのは拓海さんだった。
「諒…ごめんな?こんな真似しちゃってさ」
「あ、いや、えっと....」
返答に困る俺に苦笑しながら拓海さんは口火を切った。
「お前さ、一年前の地区予選、見に来てただろ?俺のプレー真剣に見てくれてさ。敵チームなのに応援してくれたりさ」
「え、知って…?」
「そりゃ相手チーム側の観客席に座ってんのに、俺がシュート決めたら立ち上がって喜んで周りから顰蹙買ってたら目立つだろ?」
くすくす笑いながら言われ、恥ずかしさにいたたまれなくなる。そりゃ確かに目立つよな。
「なんかすっごい惹かれてさ。でもどこの誰かわかんないし、もう会うこともかなわないんだろうなあ…って思ってたら、まさか同じ高校にやってきて、しかも同じバスケ部で、更にあの時の俺に憧れてうちの学校に来た、なんて言われたら、もう運命としか感じられなくてさ。なのに彼女いますとか言われたもんだから嫉妬しちゃって」
「先輩…」
「拓海、だろ?…なあ、諒。身体から始まる関係があってもいいんじゃないかなって俺は思うんだけど。俺とさ、付き合ってもらえないかな?」
「え、あ…でも、あの…」
そんなふうに言われたら断りにくいじゃないか!
「嫌?」
「あ、いや、あの…俺男だし…今まで普通に女の子が好きで彼女もいて....いきなり男を好きになれって言われても無理というか難しいというか…」
しゅんっと項垂れる先輩に俺は慌てて言葉を付け加えた。
「あ、でもっ!その…先輩の事は嫌いじゃないで、す…恋愛感情かどうかはわかんないけど…その…昨日のことも嫌では、なかったし…」
自分で言っててだんだん恥ずかしくなってきて、後半すっげー小声になったけど。先輩の顔を見るとすっごい嬉しそうで。
「ありがとう。これからも先輩後輩として、あとちょっとだけ親密な友達として、よろしくな?」
「あ、はいっ!」
いくら親密でも友達同士でキスしたりしれ以上ってちょっとおかしいかもしれないが。先輩が気を使ってくれてるのがわかり、ちょっと嬉しくなった。ので、こそっとつぶやいてみる。
「拓海」
「え?今なんて言った!?」
「いや、何にもっ!」
「嘘だ!拓海、って呼んでくれただろ?ね、もっかい言って?」
「嫌ですよ、恥ずかしい」
「えーいいじゃん、減るもんじゃないし!んじゃ、俺の玉子焼きあげるから!」
「え…じゃあ…拓海…?」
「うわーもうなんだこれー超嬉しい!!幸せすぎて死にそう!!もっかい!!!」
「えー先輩死んじゃったら困るから嫌です」
「えっ!!?じゃあ死なないからもう一回!!おひたしも付けちゃう!」
「んー‥じゃあ、拓海」

なんて不毛な会話を繰り返しながら楽しく美味しく朝ごはんを頂いた。

先輩…じゃなくて拓海って可愛いな、って思ってしまった俺は末期だろうか?
先のことなんてわかんないけど。
今楽しいからま、いっか。

「あ、拓海。片付け俺も手伝います」
「諒…もういっその事敬語も取っちゃおうか」
「えーそれは流石にまずくないですか?」
「いいからいいから!二人んときだけでもいいからさ!!」
「あーはいはい、わかりました!拓海、一緒に片づけよ?」
「諒ーーっ!!!」
「あーもー!ふざけてないでさっさとやろう」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はーい」

やっぱり不毛な会話を繰り返しながら、俺達は空のお皿を持ってキッチンへと足を向けた。
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