パンドラの箱

但馬憂姫

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※パンドラの箱

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「失礼しまーす」

ノックと同時に教授室の扉を勢いよく開けた生徒に、教授は苦笑いしながら声をかけた。

「おいおい。開けるの早すぎるだろう」
「あ、すみませーん」

悪びれる様子もない生徒に苦笑の色がさらに濃くなる。

「せっかく来てもらって申し訳ないんだが、これから教授会議なんだ。出直してくれないか?」
「えー。今日中に見てもらいたいんだよー。ここで待っててもいい?」
「ったく。しょうがないやつだな。あ、そこの箱、新種の生物が入ってるんだが、危険生物なので絶対開けないように。いいね?」
「はーい」

くれぐれも、と何度も念を押し、教授は部屋を後にした。

「だめって言われると見たくなっちゃうよなあ」

ほんのちょっとだけ、ちょっと開けてすぐ閉じれば問題ないよな、と好奇心に負けて箱に手をかけた。

次の瞬間。

ほんの少し、開かれた隙間から、何かが飛び出した。

※※※※※※※※※※※※

「ぁ…や、らめぇ……っ」

箱の中から無数に飛び出してきた粘着性のある生物は、まばたきする間もなく手足を拘束し身体の自由を奪う。
そうこうしている間にも、体中を無数に這われ、敏感な箇所を刺激していく。
恐怖の叫び声が艶を含んだ喘ぎ声に変わるのにそう時間はかからなかった。


※※※※※※※※※※※※

「あーあ。だから言ったのに」

一時間後。

部屋に戻ってきた教授は困ったような面白がっているような表情で生徒のあらぬ姿を見つめていた。

「せんっ、せっ……たす、け...…っ」
「約束を破ったお前が悪いんだろ? そうだなあ。悪い子にはお仕置きしないとな」
「……!!?」
「ふふ。まあ、なんにせよいいデータが取れそうだ。君には今日から私の助手として研究に携わってもらうからそのつもりで。ああ、安心したまえ。今後授業を受けることは叶わなくなるが、単位は取れるし卒業認定も渡そう。給料も出るぞ。卒業もできて就職先まで見つかってよかったな」

目を見開いて泣きながら懇願する生徒をおもしろそうに眺める。

もうここから逃げる事はできない。

教授は、泣き叫ぶ生徒に背を向け、色々と手続きやら準備をする為に教授室をあとにした。
厳重に鍵をかけ、クローズの札をかける。


教授が教授室へ戻ってきたのは、それから5時間後の事だった。


fin.


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