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ヒロインは男性とばかり仲良くして女の友達がいない
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対してレイアは他人事のように言う。猫のクロを撫でながら。
「少し前にもジュールさんたちには言葉による学園内での虐めを心配してもらったのですが、『本人への嫌味や当て擦り』をしかねない人たちとは、はなから生活圏が被らないようです。
アリスさんの影響を受けた女生徒が多そうなレース編みや刺繍の講座は危険だと言われても、もとから受講していませんし受講予定もありません。レースや刺繍には興味津々ですけれど、自分の手を動かしての針と糸での自作より三次元プリンターの調整に必死になりたいからです。
頭に本を乗せて歩く、両肘が開かないよう脇の下に紙を挟んで食事するなどのレッスンをする講座は、そういうことが最初からできる人には向かないと言われたので受講を見送りました。
フラワーアレンジメント含めたテーブルコーディネートや、製菓その他は来年になってからと思っていました。ダンスは……学園の講座を受ける暇があるなら配信用のバロックダンスの収録に参加しろとゲーム界隈から圧力がかかっています」
ジュールが言い添える。
「聞けばレイアさんの受講しているのは、ラテン語、キリスト教概論、写本という名のカリグラフィー講座、『針の上で天使は何人踊れるか』を副題にした神学、国内美術史その他とのことで、女生徒、特にローズマリーのようなタイプは受けたがらないものばかり、意図せず講座の選択に成功していたという結論に」
「なるほど、しかし周囲に女生徒が少ないのは〈逆ハー〉疑惑に対抗するにあたって問題ではありませんか? 男とばかり付き合っていると陰口をたたく奴は実際いるんです」とフェルゼンが言う。
「少ないとはいっても同じ講座には女性は三割くらいはいますし、わたしが話しかけるのは女性のことが多いです。友好的にやり取りできてはいます」とレイア。
「そういう事はあいつらには伝わらない。もっと人目につく動きをしないと無かった事として無視されます。女生徒の、言い方は悪いですが『取り巻き』を作って学園内を練り歩くくらいでないと。何でしたら私の友人を何人かご紹介しますよ」
フェルゼンは提案するが、ジュールとイザークの反応は芳しくない。
「女生徒の友人を、というのは非常に良い話のはずなのに、なぜだろう嫌な予感しかしない。フェルゼンの『取り巻き』とローズマリーの『取り巻き』との全面抗争に発展したら手がつけられない」
とジュールが言えば、
「俺はそこまでいく前にフェルゼンの『取り巻き』が拗ねて計画が頓挫すると思うわ。『面倒を見ろって貴方とそのお嬢さんはどういう関係?』『わたくしがその娘に構っている隙に貴方は別の娘とデートかしら?』」
とイザークが言う。
「失礼な。彼女たちとはそんな関係じゃないし、好んで人と争うような人たちではないよ」
「なあフェルゼン」
「『フラグを立てる』って表現、知ってるか」
なお、フラグは半分は折れて半分は残った模様。
「『貴方とそのお嬢さんはどういう関係?』『貴方は別の娘とデートかしら?』ってないわー」
「わたくしと貴方に関しては『ないわー』の笑い話だけど、ロザリーやソフィーあたりは言い出しかねないわよ。その護衛さん、鋭いとこ突いてるわ」
「ローズマリーの取り巻きとの全面抗争とかいう第二王子殿下のご懸念の方は……ごめん、あり得ないとは言い切れないかもー」
「レイアさんのお取り巻きになって、刺繍やレースの展示室をご案内したり、テーブルセッティングについてのサロンにご招待したり、単純に楽しいと思うんだけど、ローズマリーのお取り巻きは喧嘩を売ってくるのかしら」
「お菓子づくりとかしたら飛んでくるわね。『殿下に何を食べさせようというの?』って」
「目に見えるようだわ。殿下に差し入れなんかしないと言っても聞いてもらえないあたりまで」
「フェルゼンの言うように私たち『好んで人と争うような人たちではない』けどー、もしも、もしもよ、あんまりひどい難癖をつけられたら?」
「正直に答えたらレイアさんのお友達にはなれないわよ。殿下に却下されてお終いだわ」
「少し前にもジュールさんたちには言葉による学園内での虐めを心配してもらったのですが、『本人への嫌味や当て擦り』をしかねない人たちとは、はなから生活圏が被らないようです。
アリスさんの影響を受けた女生徒が多そうなレース編みや刺繍の講座は危険だと言われても、もとから受講していませんし受講予定もありません。レースや刺繍には興味津々ですけれど、自分の手を動かしての針と糸での自作より三次元プリンターの調整に必死になりたいからです。
頭に本を乗せて歩く、両肘が開かないよう脇の下に紙を挟んで食事するなどのレッスンをする講座は、そういうことが最初からできる人には向かないと言われたので受講を見送りました。
フラワーアレンジメント含めたテーブルコーディネートや、製菓その他は来年になってからと思っていました。ダンスは……学園の講座を受ける暇があるなら配信用のバロックダンスの収録に参加しろとゲーム界隈から圧力がかかっています」
ジュールが言い添える。
「聞けばレイアさんの受講しているのは、ラテン語、キリスト教概論、写本という名のカリグラフィー講座、『針の上で天使は何人踊れるか』を副題にした神学、国内美術史その他とのことで、女生徒、特にローズマリーのようなタイプは受けたがらないものばかり、意図せず講座の選択に成功していたという結論に」
「なるほど、しかし周囲に女生徒が少ないのは〈逆ハー〉疑惑に対抗するにあたって問題ではありませんか? 男とばかり付き合っていると陰口をたたく奴は実際いるんです」とフェルゼンが言う。
「少ないとはいっても同じ講座には女性は三割くらいはいますし、わたしが話しかけるのは女性のことが多いです。友好的にやり取りできてはいます」とレイア。
「そういう事はあいつらには伝わらない。もっと人目につく動きをしないと無かった事として無視されます。女生徒の、言い方は悪いですが『取り巻き』を作って学園内を練り歩くくらいでないと。何でしたら私の友人を何人かご紹介しますよ」
フェルゼンは提案するが、ジュールとイザークの反応は芳しくない。
「女生徒の友人を、というのは非常に良い話のはずなのに、なぜだろう嫌な予感しかしない。フェルゼンの『取り巻き』とローズマリーの『取り巻き』との全面抗争に発展したら手がつけられない」
とジュールが言えば、
「俺はそこまでいく前にフェルゼンの『取り巻き』が拗ねて計画が頓挫すると思うわ。『面倒を見ろって貴方とそのお嬢さんはどういう関係?』『わたくしがその娘に構っている隙に貴方は別の娘とデートかしら?』」
とイザークが言う。
「失礼な。彼女たちとはそんな関係じゃないし、好んで人と争うような人たちではないよ」
「なあフェルゼン」
「『フラグを立てる』って表現、知ってるか」
なお、フラグは半分は折れて半分は残った模様。
「『貴方とそのお嬢さんはどういう関係?』『貴方は別の娘とデートかしら?』ってないわー」
「わたくしと貴方に関しては『ないわー』の笑い話だけど、ロザリーやソフィーあたりは言い出しかねないわよ。その護衛さん、鋭いとこ突いてるわ」
「ローズマリーの取り巻きとの全面抗争とかいう第二王子殿下のご懸念の方は……ごめん、あり得ないとは言い切れないかもー」
「レイアさんのお取り巻きになって、刺繍やレースの展示室をご案内したり、テーブルセッティングについてのサロンにご招待したり、単純に楽しいと思うんだけど、ローズマリーのお取り巻きは喧嘩を売ってくるのかしら」
「お菓子づくりとかしたら飛んでくるわね。『殿下に何を食べさせようというの?』って」
「目に見えるようだわ。殿下に差し入れなんかしないと言っても聞いてもらえないあたりまで」
「フェルゼンの言うように私たち『好んで人と争うような人たちではない』けどー、もしも、もしもよ、あんまりひどい難癖をつけられたら?」
「正直に答えたらレイアさんのお友達にはなれないわよ。殿下に却下されてお終いだわ」
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