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第二十一話 依頼

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 マジでびっくりした。
 首を刎ねられるなんて初めての体験だった(当たり前か)。
 ちょっと油断し過ぎていたようだ。
 まさかあんな目眩ましを使ってくるとは思わなかった。

 にしても、ほとんど人間の姿をしてるから大丈夫かと思ってたんだが、予想以上に警戒されていたようだ。
 今も蒼ざめた顔をして、三人の冒険者たちは俺の方を見つめてきている。

 ああ、これは首を刎ねたはずなのに俺が生き返ったからか。
 そりゃ普通の人間からしたら怖いよな。

「こっちは本体じゃないから何度でも生成できるんだよね」

 そう。俺の本体はダンジョンの方だ。
 この身体は〈迷宮主生成+3〉のスキルを使って生成したものなので、死んでも(?)、また新たに造り直すことができるのである。

 だが俺の言葉に、冒険者たちはだらだらと汗を掻きながら目を白黒させるだけだ。

 うーん、今のだけじゃ意味が分かんないか。
 けど、あんまり詳しいことは教えたくはないしな~。

「とりあえず安心してくれ。別に取って食おうってわけじゃないから」

「しかしマスター、この者たちはあろうことかマスターに危害を加えました。二度と同じようなマネをしないよう、徹底的な教育を施すべきでは?」

「リンコ、処刑してみたーい!」

「ひぃっ……」

 おいこらお前ら、俺がせっかく安心させようとしてんのに、脅してどうすんだよ。

「お、俺はどうなってもいい! だが、二人だけは助けてやってくれ!」

 リーダー格と思われる大柄な青年――俺の首を斬ったやつだ――が叫ぶ。
 おお、こいつすげぇ。普通なかなかそういうこと言えないぞ。

「だから何もしないって。おい、ミオ、リンコ、二人を放してやれ」

「……畏まりました」

「え~」

 俺が命じると、彼女たちはしぶしぶながら拘束していた二人を解放した。

 ちなみにこの三人組、以前このダンジョンにやってきた冒険者たちである。

 あのときはその強さに驚愕したものだが、今となっては大した脅威ではない。
 俺は〈鑑定+4〉により、彼らの強さを把握していた。


ステータス
 名前:エルドス
 種族:ヒューマン
 レベル:15
 腕力:68 体力:67 器用:56 敏捷:58 魔力:21 運:43
 スキル:〈剣技+4〉〈闘気+3〉


 リーダーの青年はエルドスと言うらしい。
 当時いたゴブリンたちでは逆立ちしても敵わない強さではあるが、せいぜいオーガと同じくらいだ。
 最近のオーガたちは「食糧」のお陰でレベルアップしてきているし、オーガよりも弱いかもしれない。

 さっき俺の首を斬ったときは〈闘気+3〉のスキルを使って剣に闘気を纏わせたのだろう。
 だからあんなに切れ味がよかったのか。


ステータス
 名前:リーナ
 種族:ヒューマン
 レベル:13
 腕力:38 体力:42 器用:46 敏捷:47 魔力:69 運:52
 スキル:〈氷魔法+3〉〈水魔法+2〉〈土魔法〉


 これが女の子のステータス。
 やはり魔法使いのようだ。


ステータス
 名前:ユーベント
 種族:ヒューマン
 レベル:14
 腕力:49 体力:52 器用:58 敏捷:68 魔力:52 運:47
 スキル:〈忍び足+2〉〈探知+3〉〈剣技+1〉〈補助魔法+2〉〈回復魔法+2〉


 もう一人の男。随分とマルチなやつだな。

 彼らは未だ怯えの色を浮かべたままだったが、俺は早速本題に入ることにした。
 先に話を進めてしまった方が、彼らも俺が危害を加えるつもりではないことを理解してくれるだろう。

「ちょっと幾つか質問したいんだけど……まず、君たちって冒険者だよね?」

「あ、ああ、そうだ」

 エルドスが頷いてくれる。声が掠れてたけど。

「じゃあ、どれくらいの強さなんだ? 冒険者の中で」

「お、俺たちがか?」

「そう」

 俺の質問に、エルドスたちは訝しげに顔を見合わせてから、

「……一応、それなりに上の方だと自負しているわ……一応……」

 答えてくれたのはリーナだ。

「……冒険者は、その実績等に応じて、ランク分けされている」

 ぼそぼそっとした声で、ユーベントが続けた。

 彼らが言うには、冒険者のランクにはF級からS級まであるらしい。
 Fが一番下で、Sが一番上だ。

 平均的な冒険者はC級くらいで、B級以上は上位の十五パーセントほど。
 A級以上ともなれば、上位の五パーセントしかいない。
 そしてS級に認定された冒険者は、ほぼ例外なく歴史に名を遺すほどの英雄だという。

「俺は一応つい最近、A級になったばかりだ。と言っても単純な強さで言えば、A級の中でも最底辺だがな」

 エルドスは自嘲気味に笑う。
 一応って言葉使いすぎ。

 三人の中でA級なのはエルドスだけで、リーナとユーベントはB級らしい。
 つまり冒険者の中では、彼らがほぼトップクラスということになる。

「冒険者って大したことないんだねっ」

 リンコが邪気のない笑顔で言う。
 おま、もうちょっと空気を読めよ!

「……彼女の言う通りだ。正直、俺は最近A級に上がって調子に乗ってた」

 エルドスが肩を落としながら呟く。
 こいつ、見かけによらず真面目な奴だな。

「なるほど。よし、それなら大丈夫そうだな」

 俺が満足して頷くと、三人組は不思議そうな顔でこっちを見てきた。
 リンコも首を傾げている。
 ミオだけは俺の考えを察したのか、いつも通りのポーカーフェイスを保っていた。

 俺は三人組に向かって、この場を設けた理由を告げる。

「君らに頼みたいことがあるんだ」

 機は熟した。
 俺は前々から計画していた次のステップへと進むことを決意したのだ。

「――街で宣伝してくれ。ここにダンジョンがあるってことを」
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