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第二十二話 餌
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「宣伝……? 俺たちが、このダンジョンのことを……?」
「そ。で、どんどん冒険者たちに来てほしいんだよ」
俺の提案に、エルドスたち冒険者は呆気にとられたような顔をしていた。
「なるほど! それで来た冒険者を片っ端から惨殺していくんだねっ、ご主人さまっ! 楽しそうっ!」
「しないからな! なんで怖がらせることばっか言うんだよ、お前は」
無邪気に怖ろしいことを言うリンコを怒鳴り付けてから、俺はまた顔を蒼くしてしまったエルドスたちに向き直り、
「君らを使って冒険者たちを誘き寄せて餌にするとか、そんなつもりはまったくないから安心してくれ」
「じゃあ、何のために……?」
「俺はダンジョンだし、やっぱ冒険者たちに攻略されてなんぼだと思うんだよ。けど現状、入り口が分かりにくいところにあるせいか、君ら以外に誰も来てくれたことがないんだ」
エルドスたちは顔を見合わせた。
まぁ自分でも変なことを言っているのは自覚している。
俺は自分で自分の身を危険に晒そうとしているわけだから。
「あ、もちろん、難度は調整するつもりだから。最初はゴブリンとか、コボルドとか、そのあたりのモンスターから配置して、奥に行くほど難しくなるようにする。正直、あんまり死人は出てほしくないしな」
それは本心だが、同時に俺には打算的な考えもあった。
さっきは餌にするつもりはないと言いはしたが、ぶっちゃけそれは建前だ。
俺を攻略しに来た人間がダンジョンの中で死ねば、俺は経験値を得て成長することができる。
だがあんまり人が簡単に死に過ぎてしまうと、今度は冒険者が来なくなってしまうだろう。
つまり、適度なバランスで死なせていくのが、長期的に考えると、俺にとってもっとも利益になるのである。
……どうやらダンジョンに生まれ変わったせいか、どうやら前世とは少し価値観が変わりつつあるらしいな。
「なるほど……」
と、思案するように頷くエルドスだが、正直、この場で断ったりはしないだろう。
そのためにワザと脅すようなマネをしたんだからな。
ちょっとやり過ぎた気もするが……。
あんまり怖ろしいダンジョンだという認識を持たれ過ぎると、冒険者が集まってこなくなってしまうから気を付けないといけない。
「それからダンジョン内には、貴重な武器なんかが入っている宝箱を設置しておくつもりだ」
「宝箱……?」
エルドスが不思議そうな顔をする。
どうやらこの世界のダンジョンでは、宝箱は一般的なものではないらしい。
まぁそりゃそうか。
俺は〈宝箱作成+5〉で宝箱を作ってみせた。
さらに、〈武器生成+7〉で武器を生成。
鋼の名剣ができた。
「な、何だこの剣……っ!? 大金はたいて買った俺の剣より、明らかに性能がいいぞ……っ?」
お、さすがはA級冒険者。
どうやら一目で価値を見抜いたようだ。
「たまに魔剣が入ってることがある」
俺はこれまでに生成した魔剣をいくつか見せた。
「ま、魔剣だとっ!? こ、こんなものが宝箱に……?」
「あと、防具とか回復薬とかも入れておく予定だ。あ、ちなみにその鋼の名剣はサンプルとして持って帰ってくれていいよ」
「マジかよ……」
「こ、こんな武器を手に入れられるのなら、冒険者たちが殺到するわね」
「……欲しい」
かなり喰い付いてくれた。
どうやら貴重な武器は、冒険者たちを引き付けるための効果的な「餌」になるようだ。
「わ、分かった。その依頼、引き受けよう。どのみち頷かなけりゃ、帰れそうにねぇしな」
エルドスが首を縦に振った。
他の二人も異論はないようだ。
「じゃあぜひとも頼むよ」
俺はダンジョンをホッとした様子で出ていく三人組を見送った。
これで数日後には、このダンジョンにも大勢の冒険者が訪れることだろう。
「よし、じゃあそれまでにダンジョン構築の最後の仕上げといきますか」
「そ。で、どんどん冒険者たちに来てほしいんだよ」
俺の提案に、エルドスたち冒険者は呆気にとられたような顔をしていた。
「なるほど! それで来た冒険者を片っ端から惨殺していくんだねっ、ご主人さまっ! 楽しそうっ!」
「しないからな! なんで怖がらせることばっか言うんだよ、お前は」
無邪気に怖ろしいことを言うリンコを怒鳴り付けてから、俺はまた顔を蒼くしてしまったエルドスたちに向き直り、
「君らを使って冒険者たちを誘き寄せて餌にするとか、そんなつもりはまったくないから安心してくれ」
「じゃあ、何のために……?」
「俺はダンジョンだし、やっぱ冒険者たちに攻略されてなんぼだと思うんだよ。けど現状、入り口が分かりにくいところにあるせいか、君ら以外に誰も来てくれたことがないんだ」
エルドスたちは顔を見合わせた。
まぁ自分でも変なことを言っているのは自覚している。
俺は自分で自分の身を危険に晒そうとしているわけだから。
「あ、もちろん、難度は調整するつもりだから。最初はゴブリンとか、コボルドとか、そのあたりのモンスターから配置して、奥に行くほど難しくなるようにする。正直、あんまり死人は出てほしくないしな」
それは本心だが、同時に俺には打算的な考えもあった。
さっきは餌にするつもりはないと言いはしたが、ぶっちゃけそれは建前だ。
俺を攻略しに来た人間がダンジョンの中で死ねば、俺は経験値を得て成長することができる。
だがあんまり人が簡単に死に過ぎてしまうと、今度は冒険者が来なくなってしまうだろう。
つまり、適度なバランスで死なせていくのが、長期的に考えると、俺にとってもっとも利益になるのである。
……どうやらダンジョンに生まれ変わったせいか、どうやら前世とは少し価値観が変わりつつあるらしいな。
「なるほど……」
と、思案するように頷くエルドスだが、正直、この場で断ったりはしないだろう。
そのためにワザと脅すようなマネをしたんだからな。
ちょっとやり過ぎた気もするが……。
あんまり怖ろしいダンジョンだという認識を持たれ過ぎると、冒険者が集まってこなくなってしまうから気を付けないといけない。
「それからダンジョン内には、貴重な武器なんかが入っている宝箱を設置しておくつもりだ」
「宝箱……?」
エルドスが不思議そうな顔をする。
どうやらこの世界のダンジョンでは、宝箱は一般的なものではないらしい。
まぁそりゃそうか。
俺は〈宝箱作成+5〉で宝箱を作ってみせた。
さらに、〈武器生成+7〉で武器を生成。
鋼の名剣ができた。
「な、何だこの剣……っ!? 大金はたいて買った俺の剣より、明らかに性能がいいぞ……っ?」
お、さすがはA級冒険者。
どうやら一目で価値を見抜いたようだ。
「たまに魔剣が入ってることがある」
俺はこれまでに生成した魔剣をいくつか見せた。
「ま、魔剣だとっ!? こ、こんなものが宝箱に……?」
「あと、防具とか回復薬とかも入れておく予定だ。あ、ちなみにその鋼の名剣はサンプルとして持って帰ってくれていいよ」
「マジかよ……」
「こ、こんな武器を手に入れられるのなら、冒険者たちが殺到するわね」
「……欲しい」
かなり喰い付いてくれた。
どうやら貴重な武器は、冒険者たちを引き付けるための効果的な「餌」になるようだ。
「わ、分かった。その依頼、引き受けよう。どのみち頷かなけりゃ、帰れそうにねぇしな」
エルドスが首を縦に振った。
他の二人も異論はないようだ。
「じゃあぜひとも頼むよ」
俺はダンジョンをホッとした様子で出ていく三人組を見送った。
これで数日後には、このダンジョンにも大勢の冒険者が訪れることだろう。
「よし、じゃあそれまでにダンジョン構築の最後の仕上げといきますか」
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