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☆馬鹿なやつらを殲滅しちゃおう大作戦☆
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そう話している間に他のやつらは何をしていたのかというと机や椅子を教室の隅に退けていた。そうして俺たちは教室の空けた中央に向かい合って立つ。これは…結構いけそうだな。体幹もしっかりとしてるし隙もあまり見当たらない。
それは合図なしに始まった。
目の前のこいつ…名前なんだっけ、まあいいや。仮定リーダーが一歩踏み出て蹴りを放つ。俺はそれを避けてお返しにと鳩尾に向かって殴る。それをこいつが避けて殴って、俺も避けて今度は蹴って…と、双方当たらないのにもかかわらずやり合い続ける。
ああ、楽しい。こいつが今までどんな鍛錬をしてきたのか、癖、傾向、速さに特異な技…それらをこの時に知り得る。これだから強いやつと戦うのは楽しい。今までどんな風に生きてきたのか、これからどんな風に咲き誇ってくれるのか
楽しい愉しいたのしい。でも、終わりが来る。どのくらい時間をかけていたのか、少しずつ疲労が溜まり、こいつの動きが鈍くなってきた。それが今とてつもなく悲しい。こんな風に思えるのは何時ぶりだろうか。ああ、思い出した。
――俺が自由になりたいと思うきっかけになったあの時だ
俺が放った蹴りがこいつの腹にきまる。吹っ飛ばされはしなかったが、よろめいて膝をついた。
「ははっ、俺の負けだ。これ以上は無理だな。残念だ」
その言葉に教室中が沸き上がった。勝敗に関わらずエンターテイメントみたいな感じで楽しんでくれたみたいだ。
「…それでも、楽しかったよ」
「俺もだな、ここまで体を自由に動かせて、とてもよかった。ずっとやり合っていたいぐらいに」
「…………まあ、気がむいたらまたやり合おうぜ」
「…そうだな、それもまた一興。その言葉、忘れるなよ」
「わかってるわかってる、で、お前の名前は何て言うんだ」
「そういえば言ってなかったな。俺は道山 正司だ。お前は?」
「ああ、俺も言ってなかったな。海城 矢生だ。偽名だけど」
「偽名かよ」
「別にいいじゃん、本名出したらここでそこらの破落戸とかから恨みとか買っちゃったんだから。いちいち付き纏われてもウザいし。ほら」
俺は手を差し出してこいつを立ち上がらせる。と、道山は立ち上がり、握った手を引っ張った。
「「「――――っ!?」」」
「んぁ!?――っふ、ん」
あ、あ、あ、あ、あ…………あ?
何故か道山の顔が真近で見える。息がしづらい、どうなって――と呼吸をするために口を開けたら中になにか柔らかくて熱いのが入り込んできた。
なに、これ…………え、あ……
驚いて、思考が停止している間に息が思うように吸えなくて酸欠になる。足がカクンッ、と崩れそうになって腰に腕が回されて支えられた。
俺はそこではっと意識を取り戻し、力の入らない腕で精一杯押した。全然押せてはいなかったけど。
道山はそれを察して俺の口から唇を離した。
二人の口に銀の橋がかかり、重力に負けて切れる。
こい、つ、は――
静かな教室の中を俺の荒くなった息の音が響く。
「はな、せ…」
「ははは、そんなふらっふらな状態で支えも無しに立てるの?」
「光藤ッ!」
「はいよーっと、俺としてはそのままベッドインしてくれてもよかったんだけどね。あーはいはい、睨まないでそんな色気のある顔を向けられたら俺も下にきちゃうから。ほら、肩に腕回して、支えるからさ」
憎らしい道山の顔を睨みながらずっと気配を消して阿佐の隣にいた光藤を呼ぶ。
というか、色気のあるっていうな、後ベッドインはしない。してもお前を引きずり込んでやるっ!
「おまっ!?いつの間にここにいたんだ!?」
「え?最初から」
ずっと気づいていなかったのか俺を支えようとする光藤をみて驚く。こいつは、ずっと着いてきてたぞ。族潰しの件を話している時はなんかニヤニヤしてたけど。
それは合図なしに始まった。
目の前のこいつ…名前なんだっけ、まあいいや。仮定リーダーが一歩踏み出て蹴りを放つ。俺はそれを避けてお返しにと鳩尾に向かって殴る。それをこいつが避けて殴って、俺も避けて今度は蹴って…と、双方当たらないのにもかかわらずやり合い続ける。
ああ、楽しい。こいつが今までどんな鍛錬をしてきたのか、癖、傾向、速さに特異な技…それらをこの時に知り得る。これだから強いやつと戦うのは楽しい。今までどんな風に生きてきたのか、これからどんな風に咲き誇ってくれるのか
楽しい愉しいたのしい。でも、終わりが来る。どのくらい時間をかけていたのか、少しずつ疲労が溜まり、こいつの動きが鈍くなってきた。それが今とてつもなく悲しい。こんな風に思えるのは何時ぶりだろうか。ああ、思い出した。
――俺が自由になりたいと思うきっかけになったあの時だ
俺が放った蹴りがこいつの腹にきまる。吹っ飛ばされはしなかったが、よろめいて膝をついた。
「ははっ、俺の負けだ。これ以上は無理だな。残念だ」
その言葉に教室中が沸き上がった。勝敗に関わらずエンターテイメントみたいな感じで楽しんでくれたみたいだ。
「…それでも、楽しかったよ」
「俺もだな、ここまで体を自由に動かせて、とてもよかった。ずっとやり合っていたいぐらいに」
「…………まあ、気がむいたらまたやり合おうぜ」
「…そうだな、それもまた一興。その言葉、忘れるなよ」
「わかってるわかってる、で、お前の名前は何て言うんだ」
「そういえば言ってなかったな。俺は道山 正司だ。お前は?」
「ああ、俺も言ってなかったな。海城 矢生だ。偽名だけど」
「偽名かよ」
「別にいいじゃん、本名出したらここでそこらの破落戸とかから恨みとか買っちゃったんだから。いちいち付き纏われてもウザいし。ほら」
俺は手を差し出してこいつを立ち上がらせる。と、道山は立ち上がり、握った手を引っ張った。
「「「――――っ!?」」」
「んぁ!?――っふ、ん」
あ、あ、あ、あ、あ…………あ?
何故か道山の顔が真近で見える。息がしづらい、どうなって――と呼吸をするために口を開けたら中になにか柔らかくて熱いのが入り込んできた。
なに、これ…………え、あ……
驚いて、思考が停止している間に息が思うように吸えなくて酸欠になる。足がカクンッ、と崩れそうになって腰に腕が回されて支えられた。
俺はそこではっと意識を取り戻し、力の入らない腕で精一杯押した。全然押せてはいなかったけど。
道山はそれを察して俺の口から唇を離した。
二人の口に銀の橋がかかり、重力に負けて切れる。
こい、つ、は――
静かな教室の中を俺の荒くなった息の音が響く。
「はな、せ…」
「ははは、そんなふらっふらな状態で支えも無しに立てるの?」
「光藤ッ!」
「はいよーっと、俺としてはそのままベッドインしてくれてもよかったんだけどね。あーはいはい、睨まないでそんな色気のある顔を向けられたら俺も下にきちゃうから。ほら、肩に腕回して、支えるからさ」
憎らしい道山の顔を睨みながらずっと気配を消して阿佐の隣にいた光藤を呼ぶ。
というか、色気のあるっていうな、後ベッドインはしない。してもお前を引きずり込んでやるっ!
「おまっ!?いつの間にここにいたんだ!?」
「え?最初から」
ずっと気づいていなかったのか俺を支えようとする光藤をみて驚く。こいつは、ずっと着いてきてたぞ。族潰しの件を話している時はなんかニヤニヤしてたけど。
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