現代の奴隷は我が家の天使で神様は全力で幸せにする

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

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EX04_奴隷とあいつ

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後で知ったが、俺が飲んだ酒はアルコール度数40%以上だった。
思いのほかおいしくて、グラスで何杯か飲んでしまった。

目が覚めた時、頭痛がしたのだが、これは二日酔いだろうか。
まだ酒を飲んだのは『今日』なのだが・・・。

バカなことを考えているのも、どこか現実から目をそらしていたからだろう。

夜中に目を覚ましたときに、窓辺で外を見ていた少女・・・
見間違えるはずもないきれいな銀髪。
大きな目、長いまつげ、スレンダーなシルエット。

俺の知る『シロ』からシロ以外の名前が名乗られた。

「挨拶するのは初めてですね。お酒なんか飲ませるから・・・」

窓辺の少女は楽しそうに笑った。

「シロ・・・じゃないのか!?」

「そう、私の名前は『一ノ清(いちのせ)まひろ』。この家の一人娘よ」

「シロ・・・は?」

「シロは今、目を回しているわ。お酒が効いたみたい。だから隙が出来た」

「隙・・・とは?」

「シロは、よほどあなたが好きなのね。いつも私が全く表に出られない程に独占しているの」

シロの冗談なのか・・・と思いたいけれど、口調も声の雰囲気もいつものシロと違う。
俺の中のセンサーが『これはシロじゃない』と言っている。

「それで・・・」

「シロは私だけど、私じゃないわ。あくまでオリジナルは私、一ノ清まひろ。どうやったら表に出られるのかやっとわかったわ」

「ちょっと待て!シロは!?」

「あの子は眠っているわ。今日は私の誕生日・・・誕生日プレゼントだったのかしらね」

これはあれか!?
本や映画では見たことがある『多重人格』というやつ・・・

確かに虐待などで過度のストレス状態が続くと、自分の精神を守るために別人格を作り出すという。
シロの場合、条件は揃い過ぎていた。


「シロは無事なのか?」

「まだ私が全部をコントロールできるほどじゃないみたいね・・・それでも、私は私を取り戻すわ」

シロの顔でまひろが不敵に笑みを浮かべる。

「そして、私はあなたが嫌いよ。神谷 衛(かみや まもる)さん」

そこまで言うと、糸が切れたように急に気を失って倒れそうになる。
慌てて受け止めたが、意識はないようだ。

シロをソファに寝かせて髪をなでる・・・
特に反応がなく、静かに眠っているようだった。

俺はシロを抱きかかえて、自室に戻る。
そして、ベッドに寝かせると俺もベッドにもぐりこみ眠りに落ちた。

目が覚めた時は全てが夢だったと思えるように・・・


***


翌朝、気分は最悪だった。
完全なる二日酔いだ。
具合が悪い・・・
強い酒はぐいぐい行くもんじゃないと理解した・・・

「うう・・・」

シロも目が覚めたみたいだ。

「がびざば・・・ぎぼぢばどぅび・・・」

『かみさま・・・きもちわるい・・・』かな。

「大丈夫か?シロ」

「シロ・・・寝てる・・・」

シロはベッドの上でぐったりしていた。

「・・・少し横になっていたらだいぶ良くなるから」

二日酔いの薬でも買いに行くか・・・
コンビニまでの道のりは遠いが、まさか家政婦の辻さんに『二日酔いだから薬を買ってきて』とは言いにくい。
居候の身だし。

頑張って近所のコンビニに行った。
いつもよりも時間がかかったな。

ついでに、元気になったときのためにスイーツでも買って行ってやるか・・・
そんなことを考えながら、コンビニ商品を物色する。
気分も悪いし、とにかく時間がかかった。

そして、帰ってきたときに信じられない光景に出くわした。

(ガシャーン!)

一ノ清家の敷地に入ったところで、シロの部屋の窓が内側から割られるのが見えた。

具合の悪さが一瞬無くなるほど驚いて、とにかくシロの部屋に急いだ。

(ガチャ!)「シロ!大丈夫か!?」

そこにはベッドの上に立ち上がり、壁に正拳突きをするシロがいた。
しかし、様子はちょっと違う。
目つきが明らかにシロと違う。

その目つきの悪いシロがこちらに気づくや否や襲い掛かってきた。

「があああー!!」

反射的に抱き留めたが、投げ飛ばされてしまった。
普通の力じゃない。

見ればさっき殴っていた壁には大穴が開いている。
そして、シロのこぶしからは血が出ている。

これはいかん!
このままではシロが大けがしてしまう!!

そう思うと、とっさに布団を持ってシロに被せる。
じたばた暴れるシロ。
布団で絡め捕るように押さえつける。

「シロ!シロ!目を覚ましてくれ!」

シロが暴れないように押さえつけつつ、呼び続けた。

そのうち、力が抜けて動かなくなった。
一瞬ヤバいと思ったが、気を失っただけみたいだ。

改めてベッドに寝かせる。
部屋はめちゃくちゃだ。

プレゼントで渡したクマのぬいぐるみも腕が取れかかっている。

冷静になって気づいた。
脇腹が痛い。

廊下には、一ノ清夫妻が青い顔をして立っていた。

「あの・・・」

俺は、娘さんを手荒に扱ってしまったことに罪悪感を持っていた。
でも、一ノ清夫妻は違うところが気になっていたようだ。

「あいつだ・・・」

「あいつ?」

「またあいつが出た・・・」

普段温和な永一郎さんが狼狽えている。

「しっかりしてください!何があったんですか!?」

俺は何が何だか分からないでいた。
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