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彼女の片想い******
絶対、ムリ。2
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振り返れない。涙でぐちゃぐちゃだから。坂本くんを、また困らせてしまう。
兄が、痛ましそうに私を見ていて、ため息を軽く漏らして思案している。兄は昔から聡明で、頼りになった。いつも冷静に解決に導いてくれる存在だった。
ただ、今は……見透かされてるような眼鏡の奥の瞳に、全てが露見しているのではないかと思った。
お付き合いしてない人と、体だけ繋げてるってこと。
それを許してくれるかなんてわからない。本当は、兄の視線から逃れて、坂本くんの姿を視線で追いかけたい。
でも、それでも、振り返れない。
坂本くんが胸を痛める方がもっとイヤだったから。
坂本くんを車中から見送っていた時、その背中を見ていたら、急に怖くなった。
両親や兄が、一人暮らしを諌めるかもしれない。元々賛成ではなかったのだし。坂本くんとの関係が、どこまで知るところになるのか、そうなった後反対されるのではないか、と怖かった。
なにより……面倒なことに巻き込んでしまって、怪我まで負った坂本くんが『もう会わない』って言うのが怖かった。
「っ、お兄ちゃん!ちょっとだけ待ってて!」
ドアを開け、坂本くんを追いかけた。休日の朝にしては早い時間で、耳障りな音が乱暴に響く。その音に振り向く坂本くんの元へ駆け寄った。
いざ、彼を前にすると言葉が出てこない。『もう会わないなんて言わないで』と、そればかり願うのに……それは、大それた、過ぎた想いのように感じた。
「あの……迷惑かけて……本当にごめんなさい。あの……」
かろうじて紡いだ言葉の合間に、どう言えばまた会ってくれるかを考えて、時間だけが過ぎる。謝った私を、坂本くんが顔を歪めて見つめたから、余計に焦った。
「……また……また、ゆっくり話そう?」
坂本くんの声が、私の願望を見透かしたみたいにそう告げた。『また』って言った。『ゆっくり』って。
自分の口でも繰り返して、安堵して、あわてて『おやすみなさい』を言って別れた。坂本くんの気が変わらない内に、なんて、我ながら必死過ぎるけど。
車まで戻りながら『また』と『ゆっくり』を繰り返し呟いていたら、ドアを開ける頃には涙が止まらなくなっていた。
「……お、にぃちゃん。さか、もと……くん。また、会って……くれるっ、て」
だから、だから、会わないようになんて言わないでって、祈りながら報告した。
私の願いは、いつも神様に届かない。……だけど。家族には聞き入れて欲しかった。
本当は坂本くんの姿をまた見たかったけど、もう振り返れない。困らせたくない。不快にさせたくない。煩わせたくない。
だけど本当は。泣き腫らしていつもより不細工になった顔を、見られたくないのが1番だったかもしれない。
坂本くんの事になると、私は世界一愚かな女の子に成り下がる。……恋って、だいぶ厄介らしい。
「……美夜。坂本くんにちゃんとお礼、言ったのか?」
見慣れた景色が横目に過ぎ去っていく。流れるまま目に止めないせいか、カラフルな地層のように横縞を作っては過ぎ去っていく。
坂本くんに、お礼?
そういえば、謝ったけど、お礼は言ってない気がする。
首を横に振ると、兄が軽く息を吐いた。
「せっかく名誉の負傷をしてまで助けた……女の子に、謝まられてばかりじゃ立つ瀬がないだろ」
運転中だから、前しか見ていないけど、声音が優しいので責められているというより、呆れられているらしい。
「女の『ありがとう』だけで、いくらでも頑張るし、相当嬉しいんだよ。男は」
兄の口元に軽く笑み浮かび、すごくホッとした。とりあえず、坂本くんに友好的なのが嬉しい。『単純だからな』なんて続けて、ちらりと視線を寄越してきた。
そういえば、謝罪のたびに、坂本くんは苦しそうに顔を歪めた。あそこで『ありがとう』が言えたら、坂本くんも笑ってくれたかもしれない。
「後で……家に着いたら、お礼を言う」
泣き疲れて、思ったより脆弱な掠れ声が出た。
「ちなみに、兄というより、男としてのアドバイスだけどな。わがままなおねだりを1つ、これを機に言ってみな。喜ぶから。絶対」
……『絶対』?
唇だけで象って、掠れて音にならなかった言葉は、いつもの坂本くんを思い出したら、なんだか正しいことのように感じた。
だけど、その『おねだりを1つ』思いつく前に、自分の一人暮らしの部屋についてしまった。
たくさんありすぎて、1つになんか絞れない。
私は、自分が思っていたよりだいぶわがままだったらしい。
兄が、痛ましそうに私を見ていて、ため息を軽く漏らして思案している。兄は昔から聡明で、頼りになった。いつも冷静に解決に導いてくれる存在だった。
ただ、今は……見透かされてるような眼鏡の奥の瞳に、全てが露見しているのではないかと思った。
お付き合いしてない人と、体だけ繋げてるってこと。
それを許してくれるかなんてわからない。本当は、兄の視線から逃れて、坂本くんの姿を視線で追いかけたい。
でも、それでも、振り返れない。
坂本くんが胸を痛める方がもっとイヤだったから。
坂本くんを車中から見送っていた時、その背中を見ていたら、急に怖くなった。
両親や兄が、一人暮らしを諌めるかもしれない。元々賛成ではなかったのだし。坂本くんとの関係が、どこまで知るところになるのか、そうなった後反対されるのではないか、と怖かった。
なにより……面倒なことに巻き込んでしまって、怪我まで負った坂本くんが『もう会わない』って言うのが怖かった。
「っ、お兄ちゃん!ちょっとだけ待ってて!」
ドアを開け、坂本くんを追いかけた。休日の朝にしては早い時間で、耳障りな音が乱暴に響く。その音に振り向く坂本くんの元へ駆け寄った。
いざ、彼を前にすると言葉が出てこない。『もう会わないなんて言わないで』と、そればかり願うのに……それは、大それた、過ぎた想いのように感じた。
「あの……迷惑かけて……本当にごめんなさい。あの……」
かろうじて紡いだ言葉の合間に、どう言えばまた会ってくれるかを考えて、時間だけが過ぎる。謝った私を、坂本くんが顔を歪めて見つめたから、余計に焦った。
「……また……また、ゆっくり話そう?」
坂本くんの声が、私の願望を見透かしたみたいにそう告げた。『また』って言った。『ゆっくり』って。
自分の口でも繰り返して、安堵して、あわてて『おやすみなさい』を言って別れた。坂本くんの気が変わらない内に、なんて、我ながら必死過ぎるけど。
車まで戻りながら『また』と『ゆっくり』を繰り返し呟いていたら、ドアを開ける頃には涙が止まらなくなっていた。
「……お、にぃちゃん。さか、もと……くん。また、会って……くれるっ、て」
だから、だから、会わないようになんて言わないでって、祈りながら報告した。
私の願いは、いつも神様に届かない。……だけど。家族には聞き入れて欲しかった。
本当は坂本くんの姿をまた見たかったけど、もう振り返れない。困らせたくない。不快にさせたくない。煩わせたくない。
だけど本当は。泣き腫らしていつもより不細工になった顔を、見られたくないのが1番だったかもしれない。
坂本くんの事になると、私は世界一愚かな女の子に成り下がる。……恋って、だいぶ厄介らしい。
「……美夜。坂本くんにちゃんとお礼、言ったのか?」
見慣れた景色が横目に過ぎ去っていく。流れるまま目に止めないせいか、カラフルな地層のように横縞を作っては過ぎ去っていく。
坂本くんに、お礼?
そういえば、謝ったけど、お礼は言ってない気がする。
首を横に振ると、兄が軽く息を吐いた。
「せっかく名誉の負傷をしてまで助けた……女の子に、謝まられてばかりじゃ立つ瀬がないだろ」
運転中だから、前しか見ていないけど、声音が優しいので責められているというより、呆れられているらしい。
「女の『ありがとう』だけで、いくらでも頑張るし、相当嬉しいんだよ。男は」
兄の口元に軽く笑み浮かび、すごくホッとした。とりあえず、坂本くんに友好的なのが嬉しい。『単純だからな』なんて続けて、ちらりと視線を寄越してきた。
そういえば、謝罪のたびに、坂本くんは苦しそうに顔を歪めた。あそこで『ありがとう』が言えたら、坂本くんも笑ってくれたかもしれない。
「後で……家に着いたら、お礼を言う」
泣き疲れて、思ったより脆弱な掠れ声が出た。
「ちなみに、兄というより、男としてのアドバイスだけどな。わがままなおねだりを1つ、これを機に言ってみな。喜ぶから。絶対」
……『絶対』?
唇だけで象って、掠れて音にならなかった言葉は、いつもの坂本くんを思い出したら、なんだか正しいことのように感じた。
だけど、その『おねだりを1つ』思いつく前に、自分の一人暮らしの部屋についてしまった。
たくさんありすぎて、1つになんか絞れない。
私は、自分が思っていたよりだいぶわがままだったらしい。
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