絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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彼の片想い**

キスしたい。2

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美夜ちゃんはみんなの前ではことさらつれない。
よくよく見ておかないとすぐに僕から離れてしまう。
色んな男に牽制をしたいこちらとしては、近くに置いて髪を触り、腰に手を添え、肩を抱きたいのだけど。
実際は、ちょっと話しかけるだけで一歩下がり、目を合わせず、言葉もほぼ発さない。
他の男と親しげに話すわけではないので、なんとか平静を保てているといった感じだ。

美夜ちゃんは、サークルの飲み会はよく参加していているけれど、お酒はあまり飲まないので隙もない。
それでも、前はたまに二次会まで顔を出していたので、潤んだ目と赤らんだ頬で僕の理性をためすことが多々あった。
美夜ちゃんは、飲みすぎると普段の凜とした様子が解ける。
ふにゃっと目尻を下げる様子や、少し舌ったらずになる様子に、他の男どももニヤけて隣の席を狙っていた。
彼女の周りを女子に守らせ、あからさまに釘をさすうちに先輩や同級生で美夜ちゃんにちょっかいを出す男はいなくなった。

「坂本、お前まだ言わねーの?」
横山先輩がかすかにあごで女の子数名を指して言う。
一人で立つのは美夜ちゃん。向かいにりこちゃんとその背中に張り付く山田先輩が見えた。
余計なお世話と視線を投げつけたけど、次の言葉に表情が固まった。
「好きな男がいるらしいぞ。高校の時から」
面白そうな様子を隠さず言い放つ。
「俺の見立てじゃ、すぐまとまるはずだったんだけどな。ウソ言ってる雰囲気でもなさげだったし……」
後半は少し真面目な顔つきなのが余計に焦燥を煽る。
「………っ、それ……」
本人に聞いたのか確かめたかったけど、声がうまく出ない。
「綾が息巻いてたから、そのうちもうちょい情報集まるかも…」
横山先輩がまだしゃべっていたけど、捨て置いて美夜ちゃんの元へ急ぐ。

「……美夜ちゃんの想い人って……」
ちょうどその話題だったようで、そのまま美夜ちゃんの後ろで聞いてしまおうかと思った。
だけど、その刹那。ヘタレな自分が顔を出して、口を開いてしまった。
「山田先輩、二次会はどこにします?」
りこちゃんと山田先輩が美夜ちゃんから視線を外してこちらを見たけど、本人はかすかに肩を震わせただけだった。
ギリギリまで近づいて、真後ろに立つ。
部屋ならすぐに抱きすくめる距離。
うっかり両手が美夜ちゃんを捕まえないように気をつけた。

山田先輩とやりとりする間も、美夜ちゃんは頑なに動かない。
りこちゃんは勘がいいから不思議そうに僕と美夜ちゃんをみくらべている。
「坂本、ちょっと待って。今りこから美夜ちゃんのトップシークレット聞き出してるとこだから!」
「山田先輩!」
先輩の言葉を被せ気味に発言するのは、礼儀正しい美夜ちゃんっぽくない。
それくらい切羽詰まってるのか、焦った様子で続けた。
「同じ高校だけど、りこちゃんとは大学に入ってから初めてしゃべったんです」
暗に『だからりこちゃんも知りません』と伝えて『じゃあ私はこれで!』とばかりに去ろうとする。
二次会に行かない選択を知って、今日も湧き上がる喜びと欲を平気なそぶりで抑えた。

とりあえず今日も、この後の美夜ちゃんの時間と体は僕のものらしい。
たとえ美夜ちゃんに、他の想い人がいようとも。
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